マガジンのカバー画像

散文詩景

113
一日 一詩景 収める場所
運営しているクリエイター

#一日一篇

【詩】灯飛行(トウヒコウ)

「僕ら、逃げてしまおうか」 予定通りの待ち合わせは帰り道のない一方通行 誰にも別れを告げず…

Chiharu
1年前
8

【詩】エーテル

濃霧を裂きゆく黎明を浴び 神の領域へと足を踏み入れた 戻れない道を振り向かず 私はわたしを…

Chiharu
1年前
7

【詩】Virtual voice

肉体のない機械的な歌声に宿る熱が僕の鼓膜をノックして プログラムされていないはずの感情す…

Chiharu
1年前
4

【詩】シュガーレスな時間

ささくれだった心を宥めてくれるチョコレートがどんどんしょっぱくなる。 ただの慰め行為に絶…

Chiharu
1年前
6

【詩】指先から愛を

この手で護った光が誰かの影になるかもしれない それでも僕らは懸命に 立ち向かっていく 理不…

Chiharu
1年前
5

【詩】旅人よ

色鮮やかな過去に別れを告げて モノクロの未来に飛び込む旅人よ その瞳が映す朝焼けを  君は…

Chiharu
1年前
6

【詩】あたらしくない朝が来ても

  仄暗い水槽のような部屋にも欠かさず光は注がれる 午前5時、白んでいくガラスの向こうに小鳥の囀り のっぺらぼうな月を寝ぼけ眼で見上げてあくびをひとつ これからの時間を退屈にしないように ぼんやりと霞んだ意識をゆっくりかき分けたら ダイニングテーブルに積み上げられた本たちの下から三番目 きらめく詞(ことば)が詰まったあの詩集を持って 洗ったばかりの水色のスニーカーでバスに乗ろう いつもどおりに廻る街を いつもどおりに踏み締めて この狭い水槽に還ってこよう そして、眠ろう

【散文|詩】融解

曇天が立ちはだかる明朝に太陽は昇らず、街は翳り、沈む。 ゆっくりと確実におわりへと近づく…

Chiharu
1年前
4

【詩】神風

ひめごとを孕んだ神の口笛 そっと耳朶を食む まるでこどもの戯れのよう うつくしい無色の音…

Chiharu
1年前
2

【詩】ユメカケル

追いつく前に醒めてしまう夢 掴めない背中、届かない手 それでもわたしは走っていくの この宇…

Chiharu
1年前
5

【詩】泡にとけない声量で

ぼくと同じように汗をかいたグラスで踊る氷たちよ、 もう少し控えめに笑ってくれないか。 一世…

Chiharu
1年前
3

【詩】種を蒔く

まっさらな土地に種を蒔く ひとつでも芽が出ることを祈って 丁寧に水をやり たくさん語りかけ…

Chiharu
1年前
6

【詩】明らめの夜

星々が巡る幾千年もの時の連なりの中に ぽつねんと一粒 取り残される わたし 皆はそれぞれの…

Chiharu
1年前
3

【詩】egoito

理由をつけないと明日を生きることができないなんて、 エゴイストにもほどがある。 この身のすべては仮初めで、借り物で、容れ物に過ぎないというのに。