令和二年 司法試験論文式試験刑法 設問1 答案練習

詐欺未遂書けなかった
定義論証がダメダメで、特に恐喝おける違法性阻却事由の論証覚えてなかった。

設問1
第一 甲に対する恐喝罪(249条1項)の成否Bから600万円を送金させた行為に恐喝罪が成立しないか。特に財産的損失の有無や違法性阻却事由の有無が問題となる。
第二 財産的損害
1.100万円とする考え
元々甲は500万円分の債権を有していたところ、600万円のうち500万円は本債務の弁済にあたり、Bとしては財産的損害が実質的には発生していない。そのため他の要件を満たせば100万円の範囲で恐喝罪が成立する(実質的個別財産説)
2. 600万円とする考え
他方、債務という背景は別にし、600万円分の損失が現に発生しているから、全額に対して恐喝罪が成立する考えもある(形式的個別財産説)
3.両説の妥当性
実質的個別財産説では脅迫行為等のさまざまな背景事情を加味して損害の有無を判断することとなり、客観性に欠ける。また、仮に実質的個別財産に則っても、手元に有する500万円の喪失と弁済行為はその価値が全く異なるものであるから実質的にも財産的損害が発生している。更に、脅迫行為によらずして債務弁済を行う権利をBは有している。
以上より、600万円全額に対して恐喝罪が成立しうると考える。
第三 その他の客観性要件
1.脅迫とは生命等への加害告知により相手を畏怖させることで、一般人を基準とする。この点、甲はBはに「うちの組の若い者をあんたの家に行かせることになる」と一般的には家族等へ危害の可能性を推察されるような文言を発している。また、実際にそれによりBは家族への危険を感じ畏怖している。より脅迫に該当する。
2.交付行為は、詐欺や窃盗との区別から脅迫行為に基づいた任意の交付を要する。この点、Bは畏怖されて送金しているから、脅迫行為との関連性が存在する。
以上より、前述の財産的損害と併せて客観的要件は充足する
第四 主観的要件
故意(38条1項)とは客観的構成要件の認識と結果発生の認容である。今回、弁済を目的に脅迫を行わせる旨Aから指示されているから、認識と認容があったと考えられ、故意も認められる。
以上より、600万円分の恐喝罪が成立しそうである。
第五 違法性阻却事由の存在
1. もっとも、500万円は債務の弁済であるから、違法性が阻却されないか問題となる。仮にあくまでも弁済目的として解釈すれば、100万円分の恐喝罪のみが成立する。
2. この点、違法性が阻却されるのは社会的に相当性を有する時である。そして債務弁済に関しては①権利の範囲内②弁済期間徒過の有無③脅迫の程度から、相当性を有するか決する
3. 要件検討
①に関して、500万円分は権利の範囲内であり、相当性を裏付ける事情である
②に関して、本件債権に係る弁済期限は到来していたのにBがAからの返済の督促に応じなかった事情があり、これは相当性を裏付ける事情である。
③に関して、もっとも組の者を強調して家に行かせる事を告知する必要性はない。こと暴力団は一般的に何をするかわからないものであり、脅迫の手段としては強力なものである。更に、他にも合法的な代替手段は存在する。よって、相当を大きく欠けさせる事情である。
以上より、違法性は阻却されない
第六 結論
形式的個別財産説に則り、また違法性も阻却されないから、600万円全額に対する恐喝罪が成立する。

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