平成24年司法予備試験論文式試験 刑法答案練習(修正版2回目)

第一 甲の乙に対する傷害罪(刑法204条)
乙に捻挫を、負わせた点、本罪が成立しないか。同意による違法性阻却の有無が問題となる。
1.客観的構成要件
傷害とは人体の生理的機能を害する事である。今回乙に捻挫をさせて、生理的機能を害してるから該当する。
2.主観的要件
②において怪我を負わせる旨認識しており。認容してるから故意(38条1項)が認められる。
3.違法性阻却事由
もっとも、乙は同意しているがどうか。違法性は社会的に不相当な行為を指すから、社会的に相当であれば違法性は阻却される。そうすると原則的に同意があれば阻却されるとも思われる。しかし、動機目的法益侵害の程度から、社会的に不相当な場合は例外的に阻却されない。
以下検討する
(1)動機目的・・・保険金詐欺が目的で不相当である
(2)法益侵害・・・頸椎捻挫であり、程度としては軽くない
以上より、違法性は阻却されない。
4.まとめ
傷害罪が成立する。

第二 Aへの傷害罪(204条)
Aに骨折を負わせた点、本罪が成立しないか。主観的にはAへの傷害目的がなく問題となる。
1.客観的構成要件
乙の場合と同様、骨折により生理的機能を害しているから、要件を充足する。
2.主観的要件
もっともAに対する故意は無かったがどうか。この点、故意責任の本質は、規範に直面し、反対動機が形成可能にも関わらず、あえてそれを乗り越えたことに対する強い同義的非難であるところ、法定要件は法益主体を問わず抽象的に記載されている。そのため、傷害を与える目的が有れば規範に直面していると考えられる(法定的符合説)
以上より、乙は対象を問わず規範に直面してたと言え、故意が認められる
3.まとめ
特段阻却事由もないから、Aへの傷害罪が認められる。

第三 甲の保険会社への詐欺未遂罪(250条)
保険金の支払請求行為に本罪が成立するか、実行の着手の有無が問題となる。
1.客観的構成要件
(1)「人を欺」く行為とは、財産上の利益の交付の判断の基礎となる重要な事実を偽ることをいう。保険会社へにとって事故の存在は請求に応じるかの重要事項である。しかし、甲はでっち上げた事故であることを申告せずに請求をし、重要な事実を偽った。またそれにより保険金分の経済的損失発生の可能性もあった。より該当する。
(2)任意に交付とは、欺罔行為に基づいた交付で、また処分の外観面を被欺罔者が認識してることを要す(窃盗との区別)。もっとも、今回保険金は支払をしなかったから、既遂には達してない。
2.実行の着手の有無
では如何なる時に実行の着手といえるか。構成要件的結果発生の危険性の有無と構成要件該当行為への密接性で判断する。
(1)今回、甲は実際に保険会社に請求行為を行っており時間的場所的に近接してる。
(2)また、仮に調査により怪しまなければ申請行為から支払いまでは一貫した作業であり、危険性も高い。
以上より、未遂となる
3.まとめ
詐欺未遂罪が成立する。
追記・・・④において積極的に詐欺行為を想起し共有てるから、構成要件該当事実の認識のみならず結果発生の認容までしている。より故意が認められる。

第四 丙の乙、Aへの傷害罪及び保険会社への詐欺未遂罪の成否
丙に上記罪責が認められないか。甲乙丙間の共犯の成否、及ぶ範囲、及び共犯からの離脱の有無が問題となる
1.共同正犯(60条)の成否
共同正犯は意思連絡、それに基づく行為、及び正犯性から判断する。
(1)意思連絡に関して、①から⑤の計画を三人で打ち合わせている。
(2)更に、それに基づく傷害行為も見られる。
(3)正犯性に関して、得られる利益やグループ内での立場、反抗の積極性から判断する。もっとも、三人は等分に利益を分配する予定であった。また、当初計画では三人とも重要な役割をもらっている。さらに少なくとも甲乙は積極性が見られる。
以上より共同正犯が成立する。
2.共犯からの離脱
もっとも丙は結局現場に現れなかったがどうか。共犯の非難の対象は相互利用補充関係に基づく犯罪行為の達成である。そうすると、離脱の認定は因果性の除去で決する。特に着手前においては離脱の意思表示と了承が、着手後は積極的な行為により断ち切る必要がある
今回、丙が離脱したのは実行の着手前である。そして丙は電話で抜ける旨連絡し、更に甲乙は、了承はしてないものの黙示的に丙の意思をくみ取り二人で犯行に及んでいる。
以上より、共犯からの離脱は認めらる。

まとめ
丙には本罪が成立しない。

第五 乙のAに対する詐欺未遂罪(250条)
乙自身は詐欺行為を行っていないが本罪はどうか、共犯の成否が問題となる。
1.共犯の成否
丙と同様に認められる。
2.主観的要件
甲からの提案もあり認識認容してると考えレれる。より、本罪が成立する。
3.乙の乙に対する傷害罪
共犯は成立するものの、自傷侵害が刑法上不可罰であることから、乙自らに対する傷害罪は成立しないと考えるべきである。
4.その他
乙のAに対する自動車運転過失致死傷罪も成立する。

第六 結論
甲には傷害罪(乙A)及び詐欺未遂罪の共犯が成立する。傷害罪の法益は生命人体であるから乙Aは個々に考えるべきであり、また社会的見解上1つの行為でないから併合罪(45条)になる。詐欺未遂とも併合罪である。
丙は罪責を負わない。
乙には傷害罪(A)及び詐欺未遂罪が成立し、併合罪となる。
以上

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