LIVE:ALIVE #3

 なんだかんだ1ヶ月とあった準備期間も過ぎ、文化祭当日となった。
 あれだけ失敗を恐れていた自分たちの演目も、特筆するような失敗も無く終わり、安堵しながら衣装から制服へと着替える。
 「おや、あのままで良かったのでは?」
 などと古泉は言うが、中世風ドレスで歩ってたら悪目立ちするだろうが。ただでさえ浮いた存在であるのに……などと考えながらも、幕下から次の演目を眺める。
 はぁ、疲れたから休みたいな。
 「僕に寄りかかっても良いんですよ?」
 古泉が気を利かせてくれたようだが、丁重にお断りさせていただいた。
 「教室に戻って休憩することにするよ。みんなと違って若くないんでね……」
 身体を最大限に伸ばしてから、古泉に手を振り教室へと向かう。
 古泉は古泉でキョンくんを見つけて、そちらと合流するようだ。
 そういえば朝比奈さんのクラスではメイド喫茶をやっているそうなので、そちらで腹ごなしをして昼寝するのも良い。
 もう少し文化祭というイベントを楽しめばいいのに、老けた高校生である。

 「苗字さん、来てくださったんですね」
 朝比奈さんの笑顔で全てが浄化されていく気がする。
 「朝比奈さんも、大盛況ですね」
 「とっても素敵なことで、既に収支が目標を超えたようで」
 朗らかな笑みを浮かべる朝比奈さんの後ろから鶴屋さんがやってきた。
 「おいっす〜苗字くん!来てくれてどうもありがとうだよん」
 衣装こそ着てはいるが、通常業務の鶴屋さんだった。
 「お疲れ様です。自分の演目が終わったので、もう自由行動なんです」
 そうかいそうかい!と快活な鶴屋さんに「それではご注文は焼きそばとお茶でいいかな?」と言われ頷いた。
 と、いうか、メニューそれしかないでしょ。

 腹ごなしを終え、お二人に挨拶をする。
 そういえば長門さんのクラスは占いをやっているそうだったが、長門さんは離席しているようだった。
 「5組の涼宮さんに連れられて走ってどこかへ行ったみたい」
 覗いていたら占い館のスタッフの女子生徒が教えてくれた。私も顔を覚えられている…?あの5人組と行動を共にしていたら、私もセットとして数えられるようになった。
 涼宮さんと一緒に、ということは、チラシ配りしていた彼女も仕事を終えて自由行動だったのだろうか。
 そういえば演目が始まる前に外で深呼吸をしていたら、彼女が慌ててどこかへ走って行く姿を見たような。
 なんだかんだお人好しの彼女は、何かに巻き込まれたのかもしれないな。こういう時は情報通の谷口くんが何か知っているかもしれないと思い、5組へ足を運ぶ。
 「苗字さん!なんにもないのに5組へようこそ!」
 休憩室となった教室で谷口くんがいた。丁度いい奴だな。挨拶はそこそこに同じテーブルの席に腰を掛けさせてもらう。
 「涼宮さんはどうしたの?」
 聞くと谷口くんは苦い顔をしたが、答えてくれた。どうやら軽音楽部と一緒にどこかへ行ったらしい。仮入部を繰り返していた彼女のことだから、文化祭に向け軽音楽部からもお声がかかったのかもしれないが、急過ぎるような気もする。そんな話は聞いてなかったからなぁ。
 「なんか、怪我?しちゃった奴がいたらしくて」
 なるほどな。そういえば午後の演目で軽音楽部の発表もあった気がした。ある程度休んだしまた体育館へ向かうとするか。
「ありがとう谷口くん。出店も回って休憩も済んだことだし、私は体育館で演目でも観てこようかなと思うよ」
 席を立とうとすると谷口くんも「じゃあ俺も行くよ!」なんて言ってきた。若いっていいな。断る必要もないので、同行を許すと谷口くんはあからさまに嬉しそうな顔をしたが、まあ、いいさ。若さ故の行動ってことで。


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