好きな本のはなし

推し本紹介のタグへのご反応ありがとうございました。
今手元にある本は実物の写真を(暗めですみません)、ないものは紹介だけを書いてみます~。

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1.虚空の旅人(守り人シリーズ)/上橋菜穂子
学生の頃、図書館でなんとなく惹かれて闇の守り人を手に取って読み、当時からファンタジーな世界観やゲームが大好きだった私は児童文学でここまで重厚なファンタジーを書く人が居るのか、と驚いたものでした。twitterでも何度か話しましたが、主人公バルサの故郷でもあるカンバルのあの冷たく荒涼とした空気はどこかファーガスに通じるものがあると思っています。
作り込まれた世界観の中で紡がれる物語とそれを所々彩る挿絵が本当に素敵なので、初読の方にはぜひハードカバーか軽装版でお読みいただきたい気持ちが強いです…!

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2.白昼堂々/長野まゆみ
長野まゆみさんの少し不思議な世界観で描かれる耽美な物語はどれも好きなのですが、やっぱり一番好きなのは白昼堂々シリーズです。舞台が1970年代ということもあり、同性愛が「真っ当じゃない」という扱いを受けている描写は今この時代に読むとどうにも重苦しい気持ちになります。
主人公の凛一が線の細い美少年ながらかなりの強かさも持っているところが好きでした。白昼堂々での氷川との舟上でのキスシーンがめちゃくちゃ印象的で……ただそこからの氷川との関係がとにかくもどかしく、読み進めるほどにこのふたりこのままで大丈夫なのかな……とはらはらしていた記憶があります。長野まゆみさんの作品は最近のものはかなり文体も現代的になっていて読みやすいと思います。私は「レモンタルト」が好きでした。

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3.ケイトウの赤、やなぎの緑(ぬるい眠り収録)/江國香織
夫は同性愛者で、結婚後も夫と恋人の関係は続いている。そんなあらすじで有名な「きらきらひかる」の続編でもある「ケイトウの赤、やなぎの緑」が収録されているのがこの「ぬるい眠り」という短編集になります。
きらきらひかるが好きだったこともあり最初にこの「ケイトウの赤、やなぎの緑」を読んだときは内容が衝撃的すぎてどうしても受け入れられなかったのですが、数年後ふっと思い立って読み直したときに「彼ららしいな」と思えてそこから好きになった作品です。こういう形で彼らの続きを描いた江國香織さんは本当にすごいと今となっては思います。江國香織さんの作品だと他には「落下する夕方」や「ウエハースの椅子」が好きです。

4.月に吠えらんねえ/清家 雪子
https://afternoon.kodansha.co.jp/c/tsukihoe.html (第一話試し読み)
萩原朔太郎作品をイメージして生まれた「朔」がを中心として進む漫画作品ですが、とにかく膨大な量の参考資料から描かれる世界がすさまじい。前半はどこか歪ながらも平和な□(シカク:詩歌句)街(近代日本っぽい幻想の詩人たちのイメージが住まう架空の街)の日々が続きますが、中盤からは一転、「戦争詩」の在り方についてのぞわぞわとするような空気が作者の独自の解釈によって繰り広げられていきます。
最近完結した作品ですが自分が近代詩を学んでいたこともあったため、この作品に出会うことで近代詩への新たな視点を持つことが出来て本当によかったと思いました。

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5.愛の縫い目はここ/最果タヒ
最果タヒさんの詩集三部作のひとつです。本屋でこの作品のタイトルを見たときに胸を撃ち抜かれるような衝撃をうけてレジへ向かいました。どの詩集もタイトルが本当に良いんですよね。あの日からずっと今一番好きな現代の詩人は最果タヒさんです。彼女のことばの羅列が生み出す「わからないけどわかる」世界がもう大好きで。twitterでもたびたび詩を上げていらっしゃるので、気になった方は是非そちらをご覧いただければと思います。

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6.玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ/木下 龍也,岡野 大嗣
『邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない』
『おまえとはできないことをしたくなる おまえの部屋でだらけていると』
男子高校生がふたりで過ごした夏の7日間を描いた歌集。上に引用した短歌が一時期twitterで話題になっており、そのときちょうど男子高校生が出てくる作品にはまっていたので即日購入した歌集です。
載っている短歌の絶妙な生々しさや現実味はもちろん、装丁もとにかく素敵で、現代を舞台としたものを書くときにはその雰囲気を捉えたくて必ず読み返しています。

7.キッチン/吉本ばなな
『でも人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことが何かわかんないうちに大っきくなっちゃうと思うの』
祖母を亡くして天涯孤独になったみかげが、祖母の行きつけの花屋で働いていた雄一に声をかけられて彼の一風変わった母親であるえり子さんと共に暮らし始めるのだった。あらすじはこんな感じでしょうか。吉本ばななさんの作品もいろいろ読みましたが、やっぱりこれが一番好きだなぁと読み返す度に思っています。かなり古い作品ですが、現代にも通じるものがありいつ読んでも古さを感じない不思議な雰囲気があります。冒頭で引用したのはえり子さんのもので作中でも一番印象的に感じた言葉です。

8.花々と星々と/犬養道子
私の敬愛する近代の政治家が西園寺公望、原敬、犬養毅の三人なのですが、この作品はその中の犬養毅の孫である犬養道子さんが書いた自伝的エッセイです。エッセイの中には様々な著名な人物が出てくるんですが、中でも犬養毅の晩年の姿や、その盟友古島一雄と過ごしていた穏やかな姿が書かれているシーンが本当に大好きで。古島の自伝に出てくる犬養の姿とはまた違った雰囲気があって、これが孫の見た彼なのか~と読みながら嬉しくなっていました。
昭和初期の戦争に向かっていくまでの不穏な雰囲気やその中で翻弄される犬養家の日々の暮らしが書かれているのですが、あくまでも子どもであった当時の視点で書かれているので文体はやわらかく、だからこそ不思議なもの寂しさも残る作品です。

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9.斜陽/太宰治
女生徒か斜陽か、どちらにするか悩んだけれどこちらを。一番最初に呼んだ太宰作品がこの斜陽でした。なんとなく太宰作品については暗い印象が強かったんですが、斜陽を読んだときの印象は暗いというよりは物寂しいけれどほの明るい、といった感じで。没落貴族のかず子の身に作中で起こってゆく出来事は重い出来事ばかりなんですが、最後まで読むと愛する人の子を手に入れてこれから戦っていくと決めたかず子の姿には不思議な明るさがあるんですよね。作中では、三通の手紙のシーンが一番好きです。

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10.エストニア紀行/梨木香歩
以前勧めていただいたものの読めていなかった作品で、風花雪月をプレイした折にふっと気が向いて読み始めたらとてもおもしろかった旅行記になります。とにかく文体の読みやすさと、エストニア各地の鮮やかな情景描写がすごい!こんな文章が書けたらなあ、と憧れます。
エストニアの風景にはファーガスの片鱗を感じられる場所が多く、読みながら色々と想像を膨らませることができ楽しかったです。カラーで写真が入っているところもおすすめポイント。

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11.世界の路地(PIE BOOKS)
コンパクトな写真集を買うのが好きなんですが、その中でも一番買って良かったと思っているのがこちら。タイトル通り、世界中の路地の写真が載っています。綺麗な場所だけでなく、ありのままの路地裏を映っている写真も多いので見るのが本当に楽しいです。最近はぱらぱら捲りながら、フォドラのあちこちの路地裏を想像したりしています。

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12.てにをは時点/三省堂
2019年買ってよかったもののひとつ、てにをは辞典。この言葉の後ろについてくる表現ってどんなのがあるかな~なんてときに使えます。たとえば「空」という言葉を調べると「~が明るむ」「~がかげる」「~が赤くおぼろげに燃える」「~が陽をはらむ」などなど繋がる用例がいくつも出てくる感じですね。小説を書いていてつなぎに迷ったときにあ~~~~と呻きながら辞書をぱらぱら捲ったりしています。一太郎2019に入っていた日本語シソーラス類語辞典と合わせるとなお便利で、辞書ってすごいなぁとしみじみしました。

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13.デザイン入門教室/坂本伸二
自分で何かをデザインするのがとにかく苦手で、しかも時間をかけて作ってみてもなんだかいまいちなものしか出来上がらない。それをどうにかしようと本屋をうろうろし、たまたま目に付いたのがこの本でした。さまざまなNG例とともに、デザインの基礎やレイアウト、配色、フォントの使い方などが書かれています。最後に物を言うのはセンスだろうけれども、デザインってとても論理的なんだなぁということを学ぶことができました。フルカラーで添えられている作例もどれもおしゃれな感じのものが多く、イメージを膨らませる参考になっています。
最近でも本の表紙などを作る前には、必ず一度読み返している一冊です。

以上13本、好きな本の紹介でした。実はまだ歴史小説系に手を着けられていないので(多すぎて……)、ふぁぼいただいていた数に届くまではまた折りを見て追加できればな~と思っております!

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