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第四話 人はなぜ本屋を欲しがるのか

こんにちは、ジョージです。
今回は本とまちの関係性についてのおはなしをしてみたいと思います。
もし前回までのお話をまだ読んでいない方はこちらから。

売れないのに魅力的なもの

学生の頃、僕は昔銭湯のリサーチをしていた。
これはまぁ、建築学生あるあるなのだが。兎にも角にも、地域のコミュニティのありそうなところに興味があった。
みんな「銭湯のある町っていいよねー」と、口を揃えて言う。
でも実際問題、銭湯の数は日に日に減っている

いや、そもそもロジックがおかしい。
いいよね、と思っている人が沢山いて、使っていたら減らないのだ。
また、家を設計するときに風呂の図面を書いているのもこれまた建築家だったりする。この矛盾が今までずっともやもやしていた。

「銭湯に行って欲しいから内湯はやめましょう」なんて言いながら、人からお願いされた住まいを、風呂なしの家として設計する建築家もいなければ、そんな不便だった頃に戻りたいと思う人なんてそう多くはない。

ではなぜ、「銭湯っていいよね。」なのか。

僕のイメージだと、おそらく目的が「お風呂に入ること」ではなくて、「大きなお風呂に入ること」に変わってしまったり、その空間や雰囲気に魅力を感じる人が多い。というだけなんだと思った。
衛生的に公衆浴場が必要だった時代に比べ、ニーズが変わっているのに、商売の仕方が変わっていない。というケースだと思う。

今、本屋もたくさん閉店を余儀なくされる時代になったと思う。
流通の中でまちに必要とされていた時代から、全く異なる価値観を求められているのだと思う。
例えば、
・ものすごい居心地の良い空間の本屋。
・選りすぐりの本のみを扱う小さな書店。
・飲食と一緒に本を読めるブックカフェ。
・希少な本に巡り会える古書店。
・小さな書店がたくさん集まったシェア本屋。
本屋も様々なあり方を考える時期にあるなんだな。と。

まちあかりとしての本屋

本屋を始めたての頃、この本を頼りにしていました。
先述の、本屋のあり方を知る上でとても重要な本でした。
それぞれの店主さんが、いろいろなきっかけがあって始められて、その続け方やいろいろな思いに至るまで。
こちらの本には双子のライオン堂の竹田さんら、様々な本屋さんが登場しています。

本屋を始めてから、実際の商売をする上で気になる売上や在庫、流通のことなどのQ&Aもとても充実しています。
ブクアパにも置いてあるのでよろしければぜひ。
もし本屋を始めたい方がいらしたら、おすすめしてみたい本。

双子のライオン堂 ー赤坂ー
https://liondo.jp/
街あかりとしての本屋 / 田中佳祐、 竹田信弥

まちに本があふれる日

僕は谷根千界隈で活動しているHAGI STUDIOというチームの建築設計メンバーの一員で。ずっと設計をしていたわけでした。(この辺ことは第二話に。)
そして、喜ぶべきことは、このまちには「不忍ブックストリート」というものが存在しているということ。
この不忍ブックストリートとは、往来堂さんやひるねこBOOKSさんなどの谷根千(谷中・根津・千駄木)を通る不忍通り界隈の新刊書店、古書店を中心とした地域の有志が集まり、地域の文脈づくりになっている。
このMAPがいつも改訂版として更新されている。
よく在庫切れますが、BOOK APARTMENTでも配布しています。

不忍ブックストリート http://shinobazu-bookstreet.com/

あなたも一箱から書店主

一箱古本市というものをご存じの方も多いかと思います。
2005年に東京・谷根千でスタートした企画で通りを活用した一箱ブックマーケットです。

この期間はまちが本当に盛り上がります。
「どれどれ。」とまちのひとが覗き見れば、それを買うのかどうかを「どきどき」しながら見る店主
BOOK APARTMENTを始めるときにも、一箱古本市発起人の「南陀楼綾繁」さんにイベントにご登壇いただきました。なつかしい。
(今でもご近所なので時々ご来店いただきます。)

一箱古本市の歩き方 / 南陀楼綾繁www.amazon.co.jp/dp/4334035361

小さな本屋の群れ

西日暮里BOOK APARTMENTを始めて間もないころに
これって、常設の一箱古本市なんだね。」ってまちの人がおっしゃって。まぁ、実際そうなんですけど、その理解の速さに「このまちにはすでに文脈が出来ているんだ。」と実感しました。
これはお店をやっていていつも思うのですが、「いつか本屋さんやってみたかったんだよね。」なんて言っている人たちと一緒に本屋を始められることはとても嬉しく、心強いことでした。
あまり興味のなかった本でも、その人を通して見て見るととてもおもしろい本のように見えたり。とても不思議な時間が流れています。

そんなこんなで、本より人に興味が出てきて、最近は棚主の人たちとトークイベントをやるようになりました。
ジョージ×ゲスト棚主のトーク。Youtube Liveで配信しています。
アーカイブもあるのでぜひ。

このイベントでは、本屋を始めたきっかけや、好きな本や本屋、色々なお話を聞くことが出来ます。語りきれないエピソードはそちらで。笑

ブクアパラウンジhttps://youtube.com/playlist?list=PLuqDFr068czvXcDkkdpk798KdZl0RzNwY

まちの提供者になる

シェア本屋を始めてみて、とても良くわかったのは、
まちに対してのスタンスが大きく変わる人が多いこと。
BOOK APARTMENTでひと棚借りると
「なんかいいお店ないなー」「あのお店はココがイマイチなんだよね。」
なんて言っている場合じゃありません。もはや自分もそれを言われる側なんです。
まちの消費者であり、ある種の有権者的な存在であった自分が、急に矢面に立たされます。
そういう意味で見渡すと、お店の前の道路は自分の商売の門前であり、自分はまち本屋として提供者になるわけです。

こう考えてみると、いかに自分がまちのことを観察できていなかったかが、よくわかります。
今の日本は消費者や利用者の目線で、とても利便性が高いと思いますが、
それによって自分がなんだか少しだけ優越感に浸っていたようなことに気付かされます。

さて、またとても長くなってしまいましたが、今回はこのへんで。

次回は、人のつながり、偶然性について。
お話してみたいと思います。

では。

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