パストリーゼ発送顛末記 中編

重量60%以上のアルコールは危険物 消防法

結論から言うと−−もちろん僕の調査の範囲ですけど−−、①僕たち個人が、②宅配便で、③適法に、パストリーゼ77を、送ることはできません。

理由は、パストリーゼ77はアルコール濃度が、重量パーセント(w/w%)で60%以上あるからです。

なぜ60w/w%あるとだめなのか?

60w/w%以上あると、消防法上の「危険物」に該当するからです(画像は松山市HP「危険物に該当する消毒用アルコールとは」より)。

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体積%じゃなくて、重量%ってどこに書いてあるの ? と言う方は以下の画像をどうぞ(「消防危第14号消防特第34号 危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について」の4丁)。

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なお、このあたりの法体系をしっかり学びたい方は以下もどうぞ。

消防法
同法別表第一
危険物の規制に関する規則
消防危第14号消防特第34号 危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令等の施行について(通知)

危険物の運搬には制約 宅配便 採算あわず?

危険物となると運搬や貯蔵に制限を受けます。

消防法第十六条 危険物の運搬は、その容器、積載方法及び運搬方法について政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。

記載は超ザックリ。関係政令を読まねば正確な内容は把握できません。しかし、こう推測できます。

混載が基本の宅配便で関係政令の条件を満たすのは無理。つまり、政令を遵守して、安全に運搬するには、あの宅配料金で荷受けしたら採算が合わないんだろうな、と。

それで、60w/w%以上のアルコールを含む「危険物」の荷受けNGになっているのでしょう(関連政令を読了できたらまたご報告します)。

パストリーゼは70.13w/w% 消防法上の危険物

パストリーゼのアルコール濃度は70.13w/w%です。理由は殺菌(殺ウィルス)効果を考えると、このあたりの濃度がもっとも効果があるからです。


画像6


実際、例えば、厚生労働省はアルコール消毒液について70%から95%を推奨しています(体積%か重量%か不明)。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html

ドーバー酒造さんは、多分ですが、運搬のしやすさよりも、殺菌力や殺ウィルス力を選択したと言うことなのでしょう。あっぱれです。

以上より、残念ですが、①ぼくたち個人が、②ヤマトさん、佐川さんなどから、③適法にパストリーゼを発送することはできません。

一方、60w/w%未満のアルコール消毒液なら発送OKです。

例えば、JM(ジェームズ マーティン )は、陸送ならOKです。w/w%で57.22%ですから。

ヤマトさんのQ&A

以上が正しいかを確かめてみました。まず、ヤマト さんのQ&Aです。

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消毒用アルコールは航空便はNG。しかし、アルコール濃度60パーセント以上が送れない理由は飛行機に載せられないから。そうであれば、陸送なら、1日以上遅れるが、アルコール濃度60パーセント以上でも送れる、とも読めます。ぼくの願望がそうさせるのでしょうか?  

それで問い合わせることにしました。佐川さんにも聞くことにしました。回答の到着順からご紹介します。

佐川さんから回答 荷受けNG

質問内容はこんな感じです。

「ドーバー酒造にパストリーゼ77というアルコール製剤があります。アルコール度数は 77パーセントです。

ドーバー酒造の公式販売サイトをみると配送会社は佐川さんともう一社となっていますので、佐川さんに配送をお願いできると思うのですが、 アルコール度70パーセント以上のものは混載となる宅配便では扱えないや配送は可能だが配送料金が宅配便より割高になるという情報もあり、実情が把握できていません。

高濃度アルコールの荷受けはどうなっていますでしょうか?
可能なのでしたら、輸送料金の料金表は、どこをみればよいでしょうか?」

翌日か翌々日、佐川さんから電話がありました。

「重量パーセントで60%未満でないと荷受けできません」

ヤマトさんからも荷受けNGの回答

ヤマトさんからのお返事はメールできました。概要は以下です。



「アルコール飲料はアルコール度数70度以下のものしか荷受けできない」
「航空搭載は容量5リットルを超えるものはアルコール度数24度以下のものに限られる」



メールにはアルコール度数70度とありました。うん? これは重量パーセントでってこと? もしそうなら送れるかも? あ、でも、パストリーゼは70.13w/wパーセントかあ、おしい、もうちょっと薄ければ....

というわけで、やはり、ヤマトさんでもパストリーゼの荷受けはNGです。実際、先日、ヤマト さんで、パストリーゼの荷受けを断られていますし。

(この頃のやりとりは、重量パーセントと体積パーセントをしっかり使い分けてなかったので、混乱が発生しています、ご容赦ください。)

60w/w%以上と申告せず発送は 最悪 損害賠償請求

念のため書いておきます。こう考えた方はいませんよね。

(そんなこと言ったって、どうしても送りたいんだよ。黙って、梱包して、宅急便で送っちゃえ)

そればダメです。運送約款と2019 年 4 月 1 日に施行された改正商法に反します。もし損害、例えば、引火して火災や事故発生の場合は、発送時の危険物の通知義務違反で、損害賠償請求の対象になり得ます。くれぐれもご注意ください。


商法第五百七十二条 荷送人は、運送品が引火性、爆発性その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨及び当該運送品の品名、性質その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知しなければならない。

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食品として送ったらどうか?

「パストリーゼは宅急便では送れないのでは?」というやりとり過程で以下の情報をゲットしました。

「60w/w%以上のアルコール消毒液はたしかにダメ。でも食品としてなら送れる。パストリーゼは食品、アルコール製剤だから大丈夫。実際、食品として送ったことがある。」

うーむ。しかし、消防法の目的に照らし合わせると、品目が違えばOKという解釈には無理があるのではないでしょうか ? 

消防法第1条 この法律は、火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。

しかし、実際に送ったと言う事実は、仮にそれが危険物の事前の通知義務発生前としても、スルーできません。もう一度、 問い合わせてみました。

ざっくり書くと「食品としてならパストリーゼの陸送の荷受けしてもらえますか?」という内容です。

回答はやはりNOでした。具体的には「アルコール濃度77%は陸送も荷受け不可能な禁制品目」ということでした。

確かに消防法に照らし合わせても、問題は危険性、つまりアルコール濃度であって、アルコール消毒液か食品かという品目の問題ではないというのは合理的な判断と感じています。


しつこく確認 食品ですがダメですか?

凝り性の僕は、何事も確かめないと気が済まない性格です。

上記の回答を実証するため、パストリーゼを抱えてヤマトさんの営業所を回ってみました。「アルコール濃度70.13w/w%あります。でもアルコール消毒液じゃあなくて食品、アルコール製剤です。ダメですか?」と聞いてみました。以下に結果を示します。

A店  60%未満でないと荷受けできない

B店  60%以上は荷受けできない

C 店 後で返事します。その後、60%以上は荷受けできないと連絡。


というわけですので、現時点でのぼくの結論はこうです。



パストリーゼを ①ぼくたち個人が、②宅配便で③適法に発送することはできない。

リーズナブルに送る方法はないのか もちろん適法に

とはいえ、どうしても、送りたい場合はあります。

消防法も危険物は運搬できないとしているわけではありません。規定を遵守すれば運搬できます。

実際、ドーバー酒造さんもネットのサイトもパストリーゼを発送しています。ぼくも、こないだ、すったもんだしましたが、パストリーゼ一斗缶を発送できました。

これらの事実は、宅配便はだめでも、一般便や特別な契約を結べばパストリーゼの発送ができることを示しています。

問題は、こないだのような高額な送料(一斗缶の送料が5000円弱)が発生する方法しかないのか?田舎の両親、知人友人にリーズナブルに発送する方法はないのか?と言うことです。

次はここを調べてみたいと思います。

(パストリーゼ一斗缶発送の顛末に興味のある方は、本noteの「パストリーゼ発送顛末記 前編」をどうぞ)

長文、最後まで読んで頂き、ありがとうこざいました。



もし間違いや勘違いがありましたらぜひご指摘くださいませ。

追記
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