見出し画像

承認された薬=安全?

前回は「すべての物質は毒である」という基本的に考え方についてお話ししました。
本日お話しする「医薬品の安全性とは何か」も、それを前提に聞いていただければと思います。

日本では様々な医薬品が医療現場で使われていますが、医薬品はいずれも製薬企業が承認申請を行い、日本の規制当局により審査を受け、その結果承認されたからこそ、使うことができるようになっています。件の●クチンもこのプロセスを経て、特例とはいえど承認されたから、全国各地で接種が行えるようになったわけです。

では、ここで質問です。

日本の規制当局により承認された医薬品は「100%安全」なのでしょうか?

おそらく、今回のコロナ禍で違和感を持たれた方であれば、感覚的に「No」と答えられると思います。ですが、そもそも医薬品の承認における「安全性」とはどのように考えられているのかについてはご存知でしょうか?「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第十四条(医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認)第2項に承認を拒否する事由について記載されており、その中に安全性に関しての考え方がわかる記述がありますので紹介します。

第十四条 医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。
2 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。
(中略)
三 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品の名称、成分、分量、用法、用量、効能、効果、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その申請に係る効能又は効果を有すると認められないとき。
ロ 申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品又は医薬部外品として使用価値がないと認められるとき。
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品又は化粧品として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。
(後略)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

少しわかりづらいかもしれませんが、前回の投稿でお伝えした通り「すべての薬は毒」であり、医薬品に有害作用があることは大前提です。この承認拒否事由の三のロもそれが前提となった記述になっています。「申請に係る医薬品又は医薬部外品が、その効能又は効果に比して著しく有害な作用を有する」とは、申請された医薬品が有害な作用を有するのは当然として、それが期待される効能又は効果を鑑みても許容できないような有害作用がある、ということです。

具体的な例で考えてみましょう。例えば花粉症の薬で、アレルギー症状を抑える効果が期待されるような臨床試験結果が得られたとします。そして、臨床試験でしばしばみられた有害作用が「眠気」だったとします。アレルギー症状を抑えてくれるのであれば、許容できる有害作用である、と考えられるかもしれません。ですが、この有害作用が例えば「脱毛症」だったらどうでしょうか。アレルギー症状を抑えてくれることが期待されるならば、脱毛は受け入れられるでしょうか?おそらく、多くの方が拒否されるのではないかと思います。では、この脱毛症の有害作用が、もし生死にかかわるような医薬品の使用時にみられる作用であったらどうでしょうか?個人の考え方によると思いますが、自分の命が助かるのならば、脱毛は受け入れ可能、と考える方もいるかもしれません。

なんとなく、考え方が分かっていただけたでしょうか。承認拒否事由の三のロが言っているのはこういうことなのです。医薬品に有害作用があることは前提としてあり、その作用が期待される効果に対して許容できない程度である場合、「医薬品又は医薬部外品として使用価値がない」と判断し承認しない、としています。

ということは、承認された医薬品では有害作用が許容できない程度ではないと判断された、ということです。つまり、承認された医薬品にも有害作用はあるのです。そして、その有害作用の程度は、期待される効果に対して許容できるかどうか、という基準で判断されているため、一律の基準があるわけではありません。また、この「許容できるかどうか」もあくまで製薬企業、規制当局、審査に関わった外部専門家等の中で議論した中で判断されたものであって、使用される患者さん個々人にとって「許容できるかどうか」はまた別問題であることを強調しておきたいと思います。

医薬品における安全性がどのように考えられているか、なんとなくでもご理解いただけたでしょうか。今後医薬品を使用される際には、添付文書などの資料をよくご覧いただき、必要に応じて薬剤師や担当医師の方とも相談の上、あなた自身の価値観に照らして、可能性のある有害作用が許容可能なのかどうか考えてみてください。

次回は具体的な情報収集の方法についてお話ししたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?