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ゲンシュウというゲンショウ

夏にコロナにかかった。
ヘヴィな締切を乗り切り、仕事が少し空いていたのが幸いだった。

色々とまあ、あった。でも
あの頃はたくさんの方がコロナにかかって、それぞれ同じように苦労していたことだし、詳しく書かない。そもそも覚えていない。

体調がほぼ回復して、隔離期間も終わった。
私は自宅で仕事なので、パソコンに向かう時間を増やし始めた。

その頃である。おかしい、と感じ始めた。
変なにおいがするのだ、するはずのないところで。
トイレで石油のようなにおいに気づく。
パソコンに向かってるとき髪が焦げたにおいがする。
料理をしていて灯油のにおいを感じる。
とにかくあらゆるところで
石油のような、灯油のような、悪い燃えかすのような、火事場の後のようないやな悪臭を感じていた。

まず疑ったのは、コンセント火災だった。
コンセントに埃が溜まって、発火することがあるという(みんなも気をつけよう!)
ざっくり家のコンセントを見て回った。掃除不足でそれなりに汚かったが、ショートしている様子はなかった。

そこでようやく、実際ににおいがあるのか、何度か夫に確かめてみる。
「そんなにおいはしない」という。
においを感じているのが私だけだ、ということがわかった。

わたしだけ感じるにおいであれば幻覚……幻聴や幻視という言葉があるように、幻臭という言葉もあるのか。
あるとすれば、いやあるのだろうな。
この幻臭という現象はなぜおこるのか。

わたしの場合であれば
それをひきおこしているのは
精神か、脳か、鼻か、ということだろうと考えた。

精神である場合、どうだろう。
実はこれが一番深刻ではないだろう、と思った。
だまっていればいいのだ。
わたしだけ感じるにおいであれば
わたしが黙っていれば、なかったことになる。
もちろん、私は私の感覚は否定しなくてもいい。
口に出さない、それだけでいいのだ。それだけのこと。
それだけのこと、と思いながら、
わたしはそうやって、昭和平成令和、何をどれだけ飲み込んできたのか、と少しセンチメンタルな気持になった。
(もちろん後半生は吐き出す所存ではあるが)

脳である場合、ちょっと面倒だなと思った。
その半年くらい前に、妹が脳腫瘍の摘出手術をしていた。
(術後は順調で、とても元気だ)
脳腫瘍に気づいたのが目の異常で、
見えにくいのは脳にできた腫瘍のせいだった、という話だった。
視覚の異常がサインとなる脳腫瘍があるならば
臭覚の異常がサインとなる脳腫瘍もあるだろう、という理屈だ。

しかしまあ、原因が脳であるかは、鼻の異常であるという可能性を先に潰してから考えるべきだろう。とおもった。
どう考えてもいきなり脳外科はハードル高すぎる。

そこで思い出した。
私の持病である「副鼻腔炎」と関連があるかもしれない。
調べましたよ、カタカタカタ(パソコンのキーボードの音)


風邪などの上気道炎の時に鼻の中にある匂いを感じる部分である嗅上皮の細胞が傷つけられて、再生するときに匂いの信号を誤って中枢に送ってしまうために生じると言われています

鳥取県医師会 健康なんでも相談室

これや、これやがな!
わたしの中の全わたしが叫んだ。

というわけで、ちゃんと耳鼻科の薬を飲んで、点鼻薬を使って、喘息の薬も吸引して、できるだけしっかり眠るようにしていると
2週間ほどで、いやなにおいは感じられなくなった。

何が言いたいかっていうとね.
もう二度とコロナにはかかりたくない、ということ。
ただの風邪(上気道炎)かもしれないけれど
ただの風邪であったとしても、わたしの上気道は脆弱なので
ひどく傷つけられるような病気は、二度とごめんですよ、ということです。

そういうわけで、ノーマスクが叫ばれても、わたしはマスクをしています。

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