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オーストラリアの僻地医療と電子カルテ

久しぶりにnoteにログインしました。

そしてnoteにサインインして以来、1年経ったことを知りました。

1年あっという間ですね。


写真は、今年2019年7月にオーストラリア・ビクトリア州2つ目の世界遺産(文化的景観)に登録された、バジビム国立公園の看板です。

バジビムはメルボルンから車で4時間ほどの、いわゆるRural(地方)です。

バジビムには、現在のビクトリア州(ガンディジュマラ)に住んでいたアボリジナルの人々が数万年前から「うなぎ養殖」をしていた跡が残っており、それが世界遺産に登録されました。

バジビムの話はまた次回にするとして、今回はオーストラリアの僻地医療と電子カルテについて思うところを書いてみます。


私の彼のお父さんは1950年頃から、メルボルンの東部(ダンデノン山脈地域)で開業医をしていました。

お父さんはもう亡くなっていますのでご本人からは話をきけませんが、当時のエピソードをきくと、彼はまさに町の唯一のお医者さん、僻地の総合診療医だった感があります。

彼はいわゆるGP(ジーピー)ドクターでしたが、現代のGPとはかなり違い、手術も出産も自宅兼診療所で行われていました。

お父さん自身、子供達の目の前で怪我をしたとき、自分の怪我を自分で縫ったそうです。ワイルド。

現代のドクターはスマート。

女性医師ならミニのワンピースを着たりして、公立病院や街の至る所にある私立のメディカル・センターに勤めている。

そして医師になる方法も変わってきました。

従来の5、6年プログラムのBachelor of Medicine/Bachelor of Surgery (MBBS)から、 4年プログラムのDoctor of Medicine(MD)へ。

https://postgradaustralia.com.au/choosing-a-course/what-is-a-doctor-of-medicine-md

海外の医師に頼らずとも、自国民の医師が増えてきたという状況(留学生が永住権をとったのも含め)のようです。

増えてはきたが、都会の医師数が増えすぎて飽和状態。

オーストラリア医師会(AMA)によると、新卒医師調査で、76%の自国民(永住者含む)新卒医師が都市部に居住しているとのこと。

そして最近は、できるだけ新卒医師が僻地医療に従事する方向に教育を提供し、僻地医療へ政府からの補助金を求めてAMAは動いているようです。


さて、オーストラリアの僻地医療が、日本でも取り入れられつつあることを知りました。

また、逆にDrコトーとしてドラマ化された瀬戸上医師が、オーストラリア僻地医療学会で講演したり。

そんな中、ゲネプロ2期生さんの体験談を見つけました。

彼の文中にあった、クィーンズランド州の電子カルテ。

日本では電子カルテが病院によって違うため、違う病院から来た患者さんの情報を見ることはできません。そのため、色んな病院を掛け持ちしている患者さんが同じ効果だけど名前の違う胃薬を何種類も飲んでいたり、診療所から紹介された患者さんに同じ日に、同じ血液検査やCTを撮ったりすることがあるのです。

電子カルテ(チャートなど)は、オーストラリア各州で異なり、ビクトリア州においては各医療地域によって異なります。

NSW州だと公立病院はすべて州政府の管轄で、使用されるチャートはどの公立病院でも同じ。

ビクトリア州だと、ある医療地域(Austin Healthなど)では電子化されているけれど、別の医療地域(Monash Healthなど)では手書きとか、州内で統一されていません。

クィーンズランド州の公立病院は州政府が管轄で、電子化されたんですね。

ieMR

しかし電子カルテは便利と言っても、入力するのは人間。

データ入力ミスや操作を間違えたら元も子もない。

実際に電子カルテが原因で医療過誤が多発し、ニュースになりました。

https://www.abc.net.au/news/2019-12-24/health-documents-reveal-dozens-of-cases-of-patient-harm/11824370


ちなみに、連邦政府のMy Health Recordは、電子カルテというよりは電子医療情報国家管理システム。

My Health Recordは2012年に導入されたものの、Opt Outがデフォルトだったためか、ほとんどの人が利用せず。

2018年にOpt Inがデフォルトになり、国民永住者全員の医療情報が電子カルテ化されるということで、物議を醸し出しました。


私(と家族)はオーストラリアの情報管理を信用できないため、そして医療情報(例えばこの人は◯病にかかっている、高血圧があって◯薬を飲んでいる、入院歴など)が司法・警察にも開示されたり、将来的に実験・研究の材料にされるなどの危険が大いにあるため、Opt Outしてあります。

電子カルテには、血液型や薬の情報だけでなく、人に知られたくない個人情報までもが、てんこ盛りになります。

街の様々な医療従事者がアクセスできるようになり、アナフィラキシーなどの情報がシェアされ、リスク回避に役立つ一方で、個人情報が晒されるリスクが増えます。

被利用者としてのメリットとデメリットを比べた場合、My Health Recordのメリットを感じるのは、生命に関わるアレルギーがある人や、薬を大量にのんでいる人(主に高齢者)ではないでしょうか。

実際、僻地は高齢者の割合が高いので、My Health Record登録者も多いと想像します。


オーストラリアの僻地医療教育で、件のお父さんのように「なんでもできるドクター」が復活することを祈ります。



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