ヘチマが海を眺めてるみたいな歌
僕の親方はイタリア人だ。ビールを昼休憩に飲みだすし、仕事中はオペラを流しているし、毛むくじゃらでイタリア語みたいに笑い、流暢な独り言を喋る。名前は極めてありふれた日本名なんだけど。田中太郎ぐらい。
中塩博斗とか、セリザワヒナタとか、いつも僕がサウンドクラウドで聞く音楽を現場で流していると「もっとアガる曲を流してくれ。ヘチマが海を眺めてるみたいな歌じゃなくてさ。」と言われた。正直爆笑してしまった。職人特有の古典的な江戸っ子文法みたいなものが含まれていてそれがまた一層おかしさを醸し出している。古典的な文法で何かを貶すときに野菜が登場するのがとても好き(芋女、ボケナス等)で、しかも野菜が海を眺めてるという何か村上春樹みたいなシュールさのある比喩がめちゃくちゃ僕のドツボにハマっている。昨日から反芻し過ぎて狂牛病になりそうなくらい好きな比喩だ。俺もヘチマが海を眺めてるみたいな歌を作らなくちゃいけない。でないとそのうち喉を壊す。そのうちその(恐らく)日に焼かれている海と寂寥感に浸っているヘチマを絵に描き起こしたいとさえ思う。
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