#9 駅の可能性〜 公共空間の付加価値について

皆さんは、駅と言えばどの様なイメージをお持ちでしょうか?
通勤、通学の際に利用する場所と言うイメージでしょうか。

私は、出会いや別れ、そして出発 の場所としての思いがあります。

写真は、イタリア ミラノの中央駅です。
とても美しく、降り立った時にとてもワクワクする場所です。

その駅の特徴は、アーチ型の背の高い天井や広々としたホーム、そしてガラスを使用した開放感は、日本の駅では想像がつき難いスケール感があります。

ヨーロッパの駅舎は、この様な天井を持った駅がいくつかあり、駅の存在感がとても大きいと思います。

特徴は色々とあると思いますが、この様な立ち止まりたくなる景色は、それだけで見惚れてしまう。

最近の日本の駅についての印象は、残念ながら、その様な印象がほとんど無くなってしまったイメージです。
東京駅の駅舎は、印象に残る所もありますが、残念ながら駅の数とすると少なく感じます。

私の街にも大きな駅がありましたが、平成に入り大きく姿を変えてしまいました。

子供の頃は、コンコースの一部にステンドグラスがはめ込まれた吹抜けの空間もあり、それはとても趣がありました。
その景色を見ると幼心に「我が街の駅だ」と、誇りが持てる場所でありました。


その後、平成になり大きく姿を変えていく事になります。

その駅は、大型のショッピングセンターやホテル
オフィスを併せ持ち、とても合理的な駅になり、便利になりました。

しかし、私の印象は、通過点の一つになった印象が強くなった気がします。

オフィスや買い物に急ぐ人の波は、さらに拡大し、経済効果は上がった
様に見えますが、無機質になった様にも見え、少し寂しく感じていました。


■駅は、旅立ちの時の特別な場所

駅は、公共の場所であり、もっと多くの思いを乗せて運ぶ場所になれると
旅立ちや帰省の際、心がワクワクしたり、また落ち着く場所になれるのでは、と思います。


私の初めての一人旅は、大学の受験の時でした。
初めての土地へ向かうワクワクと緊張、そして少しだけ不安があった事を今も覚えています。

駅で感じたその一瞬が、人生の1ページに今でもなっています。

また、友人や大切な方との再会や別れなど、その時間こそが、その後の人生にとって新たな展開や決意などをもたらしてくれるケースもあったりします。

その様な思いや光景が、無機質な空間から有機的な空間に変わることで、利用者の人生の1ページを飾ることが出来ると思います。



■どうすれば文化遺産的な価値に投資出来る様になれるのか

日本の大規模建設や公共事業は、民間企業のデベロッパーの企画や、駅の様な大規模な施設も民間の取り組みへと変化し、収益的には良い結果を生み出してきてると思います。

大都市の大きな駅周辺は、より高層化したビル群が立ち並び、駅は益々商業施設の一部と化してきている様に思えます。

時代の流れが、その様な高収益、高効率へと向かい
収益こそが幸福
かの様に映っている様に思えてなりません。

こうした背景より日本では、欧州の様な文化的施設への投資や景観を形成する事へ目を向けれる様になるのは、まだ時間がかかることなのかもしれません。

市民が共通の財産を共有する事が、新たな価値になり、その気持ち良さを感じる事が出来る様になれば、公共空間が新たな存在価値が築かれると思えてなりません。

そうする事が出来れば、通過点でもある駅は、
付加価値のある公共スペースと変化するのでは、
ないでしょうか。

私にとっての駅は、そんな特別な場所であって欲しいと思えるところです。

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