まどの向こうの景色【インタビューで探る akira muraccoさんと、のなかあやみさんの視点】

「誰もが気軽に行ける・参加できるアートイベント」をコンセプトに、昨年からクリエート浜松で開催されている「ハママツクリエーターズフェス」。

今年は「みんなのまど」をテーマに開催され、浜松にゆかりのある10人のクリエーターさんが作品展示やワークショップを行います。

今回の出品クリエーターさんのうち、イラストレーターとして活躍される、akira muraccoさんと、のなかあやみさんに仕事・作品・制作など様々な角度からお話を伺いました!


〈仕事について〉

―― イラストレーターの仕事を始めたきっかけを教えてください。

akira muraccoさん:昔から絵を描くことが好きで、学生時代から絵を描いたり絵に関することを調べたりしていました。そんな中、グラフィックデザイナーの方が浜松にいらっしゃることを知り、自分の描いた絵を宮下さんのところに持って行ったことがきっかけでした。

のなかあやみさん:元々デザイナーになることが夢で、大学はデザイン学科に通っていましたが、大学生活の中で自分に本当に合っているのはイラストレーターだと感じ、今のお仕事に興味を持ちました。その後、音楽活動をされているご友人のCDジャケットを描いたことから今の仕事を始めました。


―― イラストレーターの仕事の楽しいところと大変なところは何ですか?

akira muraccoさん:毎回違う媒体に仕事をできることが楽しく、描いた絵を展示会場などで見てくれる人がどのように思ってくれているのかを想像することが苦手で大変です。

のなかあやみさん:好きなことがお仕事になること、自分の絵を見た知らない人と繋がれることです。大変とまではいきませんが、自分のイラストが納品され、お仕事に反映されるまでの期間は少し気持ちが落ち着かないです。みなさんそうかもしれません(笑)


〈作品について〉

―― 現在の表現方法にはどうやって至ったのですか?

akira muraccoさん:イラストレーターの仕事を始めた当初はCDジャケットの仕事をすることが多くあり、現在のタッチとは違い、細い線にこだわりを持って描いていました。しかし、イラストを描いていく中で変化していきつつ、様々なイラストや写真などのビジュアルからインスピレーションを受け、現在のデジタルツールで制作するポップな画風に変わっていきました。

のなかあやみさん:色紙を切り貼りするコラージュに楽しさを感じ、ある時自分で色紙を作るところからやってみよう、と思い至ったのが始まりです。表面を使うつもりで作った色紙が、案外、裏面の方が美しいと気づくなど、思いがけない発見があるのが面白いです!


―― 「ハママツクリエーターズフェスvol.1」のテーマは「みんなのまど」。おふたりはどんな景色を絵にしようと思っていますか?

akira muraccoさん:何を景色と捉えるかは人それぞれ違うと思っているので、今まで描いてきた女の子たちが持つ色々な側面を景色と捉え、改めて景色とは一体何なのかというところを個人ではテーマにしようと思っています。

のなかあやみさん:日常の中で「この風景いいな」とふと思って撮った写真や、記憶などからイメージして描こうと思っています。あまり考えすぎず、気に入った景色への直感を大事にしています。


―― 見る人に作品を通してどんなことを伝えたいのかを教えてください。

akira muraccoさん:人が見て何か思ったり、「いいな」と感じたりできる作品を目指していて、あえてメッセージ性は入れないようにしています。

のなかあやみさん:作品には自分のメッセージを表しすぎない方が、見た人それぞれに自由に見る余白ができて、それぞれ違った視点があって面白いです。見る人に作品を説明しすぎない、お菓子の包み紙のイラストのような身近にある存在に近づきたいです。


〈制作について〉

―― 普段どんな時にアイデアが浮かびますか?

akira muraccoさん:毎日仕事をするばかりじゃアイデアは出ないです。映画を観たり本を読んだり誰かの写真を見たり、インプットをたくさんすることで自然に出るアイデアを大切にしています。

のなかあやみさん:撮った写真をよく見返していて、その蓄積から生まれます。基本的には何をしたか、何を大切に思っているか、という「記憶」がアイデアになるので、ゼロからは生まれることはないと思っています。


―― 絵を描く上で心掛けていることやこだわりを教えてください。

akira muraccoさん:線を綺麗に描くことと、幾何学図形を使うことです。自分の納得できる線や構図を大切にしています。

のなかあやみさん:いかに良いテクスチャを見せるか、テクスチャを画面のどこに持ってくるのかを意識しています。貼り絵のもともと持つ素朴さが可愛く出すぎないよう、配色で少しピリッとさせることを心がけています。

―― 作品の制作方法について教えてください。

akira muraccoさん:主にデジタルで、Procreate、Photoshop、Illustratorなどを使っています。

のなかあやみさん:書道の半紙にアクリルガッシュで色付け、スティックのりで貼り付けて、完成させています。半紙は薄く、皺になりやすいためアイロンをかけるようにしています。色選びやアイロンがけは、クローゼットから服を選ぶのに似ていますね。


――どのくらいの時間で1つの作品を完成させていますか?

akira muraccoさん:仕事で描く時は納期までに間に合わせるのがまず基本で、例えば書籍関連は2週間〜1ヶ月、雑誌などは短いです。

のなかあやみさん:akira muraccoさんと同じく、制作にかける時間は媒体によって違います。


―― 制作の行き詰まりの対処方法を教えてください。

akira muraccoさん:いつもと違うことをすることで、行き詰まりを解消できることが多いです。例えば映画を見たりしています。

のなかあやみさん:行き詰まることはあまりないですが、リフレッシュするときは湖や緑のある場所に行くことが多いです。


〈イベントについて〉

―― 今回のイベントで大事にしようと思っていることは何ですか?

akira muraccoさん:イラストレーターが企画から参加することは珍しいので、自分の発言で企画の乱れが起きないように気をつけています。普段は1人で制作しているのに対して、イベントではたくさんの人と関わることになるので、慌てないよう気をつけたいです。

のなかあやみさん:グループ内で誰がどんな役割をしているのか把握して、意見出しの時にメンバーの方々が気持ちよく、納得できるような動きをすることを大事にしています。


―― 今回のイベントに展示するにあたり、今までの作品と比べて変えたところを教えてください。

akira muraccoさん:新作ばかりではなく過去に描いたものをひいてみるのも良いと考えるようになりました。

のなかあやみさん:今回は「窓」がテーマということで、見ている人が「そういうふうに見えているんだ」と発見できるような作品づくりを心がけています。


〈その他〉

―― 子供の頃に好きだったものは何でしたか?

akira muraccoさん:スポーツにも活発に取り組んでいて、中学ではバレー部に所属していました。

のなかあやみさん:子供の頃にお母さんに連れて行ってもらった機織り教室でもらったバンビの人形から始まって、フランスのお菓子「ガレットデロワ」に入っている陶器の人形など、小さくて可愛いものが好きでした。また昔のラベルやマッチ箱もお気に入りでよく集めています。スポーツだと、小学生の頃から卓球部に所属していて、特にスマッシュを打つのが好きでした。


―― 休みの日にしていることを教えてください。

akira muraccoさん:固定休というものはないですが、まとまった時間がある時はカメラで写真を撮ったり音楽を聴いたりしています。

のなかあやみさん:写真を撮ることと音楽を聴いたりすること、他にも湖で野鳥観察をしたりしています。


―― 尊敬している作家さんはいらっしゃいますか?

akira muraccoさん:
・書籍やプロダクトのグラフィックを手がけるイラストレーターであり、アーティストの前田ひさえさん
・資生堂パーラーなどを手掛けたグラフィックデザイナーの仲條正義さん
・アールデコ期のイラストレーターシャルルマルタン(Charles Martin)さん です。

のなかあやみさん:
・明治から昭和にかけて活躍したレトロでおしゃれなグラッフィックデザイナーの杉浦非水さん
・お菓子のパッケージデザインなどを手掛ける、アートディレクター兼デザイナーの渡邉良重さん です。
ミュージシャンである細野晴臣さんも好きで、大きな存在になっても新たな挑戦を楽しむ心、お茶目でチャーミングな姿勢を忘れない、手がける音楽のジャンルは多種多様だけど常に細野晴臣さんとわかる、そんな姿を尊敬しています。


〈まとめ〉

今回のインタビューでは、クリエーターの方の仕事に対する気持ちのあり方、自分なりの作品との距離感や関わり方、制作の裏側など様々な角度からお話を伺うことができました。さらに、おふたりがどんなものを魅力的に思い、目指してきたのか、というバックグラウンドまでお聞きすることができ、とても興味深く、作品への深い理解につながる内容でした。また、あえて作品にはメッセージを込めず、緊張せず自由に見てほしい、というお言葉からは、作品の繊細な優しさを感じると共に、これから展覧会へ足を運んだりアートに触れたりする際に、新たな見方で誰でも自由に楽しむことができるきっかけになると感じました。

クリエーターご本人から直接お話を聞くことができて、とても貴重な経験になりました。akira muraccoさん、のなかあやみさん、ありがとうございました!

ここまで読んでいただきありがとうございました。この記事を読んで興味を持ってくださった方はぜひ、7月19日〜21日、クリエート浜松にて開催される「ハママツクリエーターズフェス」にお越しいただき、おふたりの作品を実際にご覧ください!

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