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良い意味での諦め

私は、スポーツリズムトレーニングの「インストラクター」という資格を有している。
イベントで幅広い世代へのリズムトレーニング(リズムジャンプ)を行うこともあるが、本業は幼児~小学生への運動・サッカー指導をメインとしている。

ありがたいことに、インストラクターという肩書もあって、様々な競技団体への出張指導の話も頂けるようになってきた。
その中で自分なりに気づいたことがあるので、僭越ながらこの場を借りてつらつらと述べさせていただこうと思う。
※ただ、これはあくまで個人的な意見であるということを予めご了承いただきたい。

リズムジャンプの重要性

世間一般的なイメージでは「スポーツリズムトレーニング = リズムジャンプ」である。SNSに載せられている動画も十中八九がリズムジャンプの動画である。
だが、厳密には違う。
「スポーツリズムトレーニング ⊃ リズムジャンプ」である。
つまり、スポーツリズムトレーニングを構成する多くのプログラムのうちの1つがリズムジャンプなのだ。

ディフューザー養成講習会を受講した方ならご存知だと思うが、このリズムジャンプはスポーツリズムトレーニングにおけるピラミッドの最下層に位置する。
でも決して疎かにしてはいけない。リズムジャンプは最も基本的であり、最重要プログラムなのだ。

イベントでの指導

冒頭に述べたように、私自身はイベントで幅広い年代を対象にリズムトレーニングを指導することもある。
参加者は年代だけでなく、運動経験の有無、競技の種類など様々である。
そしてイベントという特性上「楽しい」ことに焦点を当てることも多い。
そういう場合はトレーニング要素を弱め、誰もが楽しめて難易度も簡単に調整できる「リズムジャンプ」を行うのが最適である。

スポーツ団体への出張指導

インストラクターという肩書上、様々なスポーツ競技の団体へ出張指導を行うことがある。
となると、単なるリズムジャンプだけでは物足りない。

スポーツリズムトレーニングはリズムジャンプだけではない。
せっかくだからもっと競技特性に合ったリズムトレーニングを教えてあげたい。
…インストラクター昇格当初はそう思っていた。

「経験」という壁

私自身、小さい頃からサッカーをしてきた。
幼稚園の頃からひたすら園庭でボールを蹴り続け、年上のお兄さんの頭上を越す高く浮いたボールを蹴れたことが嬉しくて嬉しくてたまらなかったときの記憶が今でも鮮明に残っている。
小学校に入学すると当然のように地元のサッカー少年団に入り、今では少年サッカーの指導者でもある。

むしろサッカー以外の競技は学校の体育や友達との遊びでしかやったことがない。
自分で言うのもあれだが、運動神経は割と良い方なのでサッカー以外の競技もそれなりにできる。(いや、正直に言うと水泳はあまり得意ではない)
だが、サッカー以外のスポーツは本格的にやったことがないので、専門的な動きについては一切分からないのだ。

便利なことに、今の時代は本やネット等でいろいろな事を簡単に調べることができる。連絡手段も発達して、その分野に詳しい知人にすぐ聞くこともできる。
しかし、「経験」というものは実際に自分がプレーしてきたかどうかである。
当然、経験者にしかわからないことだってあるはずだ。経験者だからこそ伝えられることがあるはずだ。

インストラクターとして

スポーツリズムトレーニングのディフューザーは有料指導は認められていない。
その理由としては「基礎的な知識・技能しかなく、誤った指導に発展する可能性があるため」とされている。

我々はディフューザーよりも更に深い講習や厳しい実技講習を乗り越えてインストラクターに昇格している。だからこそ外部でも有料指導が認められている。

話を戻す。
確かに私はスポーツリズムトレーニングのインストラクターとして、深い知識や高い技能を有している(と思う)。
指導の経験も多数積み、ノウハウもそれなりに分かっている。
それでもわからないことがある。サッカー以外の競技の専門的な動きである。

そのような状態で、競技特性に合ったリズムトレーニングなんて教えられない。それこそ間違った指導に発展してしまう可能性がある。
それは決して起きてはならぬことである。

もちろんインストラクターとして事前に依頼のあった団体の競技のことについては入念な下調べもするし、担当の方にも話を聞いて、可能な限り有意義な指導に繋がるよう精一杯努力をする。
それでもやはり「専門的な経験」がないので、踏み込みすぎた指導はできないのである。

辿り着いた境地

だからこそ、私はサッカー以外の競技の団体を指導する場合は、基本的にはリズムジャンプ+自信をもって競技に活かせると判断できることしか実施しない。

多くの場合、指導依頼が入るのは「リズムトレーニングを体験してみたい」という単発的なものであり、定期的な指導を目的として依頼されることはほとんどないからだ。
だからこそまずは基本的なトレーニングを体験してもらう。

そしてそれ以上先のことはチームの指導者の方にお任せするスタンスを取っている。
確かに、私はリズムについては詳しい。だがその競技については詳しくない。
チームの指導者はリズムについては詳しくないかもしれないが、その競技については詳しい。

私がその競技について今から本格的に学ぶ、経験することは様々な面からしても難しい。
しかし、チームの指導者の方がリズムについての知識を付けるのはディフューザー講習会の5時間で済んでしまうし、リズムトレーニングについてのアドバイスはいつでも私から受けることもできる。

「指導を受ける者」の立場から考えると、どちらからリズムトレーニングの指導を受けた方が良いのかは一目瞭然である。

当然、私自身の「ビジネス」の観点からすると私が定期的にチームの指導に当たる方が良いことはわかっている。でもそれ以上に、このトレーニングの良さをより正確に伝えるため、その競技の専門家に指導してもらい、高い効果を発揮してもらいたいという想いが強い。

だからこそ良い意味での諦めの境地に達したのである。
「私はこの競技についての専門性がないので、今後は私が指導を行うよりも、あなた(指導者)がディフューザー資格を取って専門的な指導を行ってほしい」と。

これは決してネガティブな諦めではなく、ポジティブな諦めである。

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