pauper 進化増殖デッキ思考録

一旦、自分の中での結論がある程度出てきたのでまとめ。とはいえ対人は数戦しかやっていなく、無限の一人回しの末の結論なので、実戦回す中で気が変わってきたりはあるかもしれない。

背景

元々、モダンをやっていた頃にティムール進化なるものが一瞬どっかで勝って話題になったことがあり、なんかガチャガチャやる感じのデッキも大きめのサイズで殴り切るデッキも好きだったためそそられていた。
ただ、「回すためには、《霧深い雨林》を筆頭とした高額土地をけっこうな枚数買う必要がある」という部分で踏み出せず、当初は諦めていた。

そして今のpauper界隈、某氏が「シミック進化」の話題を出してくれたことで再点火。今に至る。

スタート地点

元々5-0リストが少し有名な、いわゆる「シミック進化」を参考にスタート。参考にしたのはこんなん。

土地(21)
6《森》
7《島》
4《シミックのギルド門》
4《茨森の滝》

クリーチャー(39)
4《雲ヒレの猛禽》
3《両生鰐》
3《歪んだ爪の変成者》
4《夢で忍び寄るもの》
4《大クラゲ》
3《熟考漂い》
4《シュラバザメ》
4《嵐縛りの霊》
4《かき鳴らし鳥》
2《木立を歩むもの》
4《根の壁》

サイドボード(15)
1《ブラストダーム》
3《本質の管理人》
4《散弾の射手》
2《木立を歩むもの》
1《払拭》
4《木化》

シミック進化としてのリスト調整

考え出した段階から、《木立を歩むもの》が《開花の巨体》の下位互換に近い(このリストが結果出した時は《開花の巨体》はまだ刷られていなかった)事に気付いたためそこを全部差し替え、他にも一部好みじゃないカードを差し替えたりしたのち、採用候補探しや調整を重ねながら一人回しを繰り返す。

その中での気付きを以下に列挙。

進化クリーチャーの選択

《雲ヒレの猛禽》
シンプルに強い。タフ1しかないおかげで、タフ5生物だけで4/5まで到達できる。進化というコンセプトデッキを組む理由がこのカード。

《シュラバザメ》
2Tに瞬速で出してそのまま進化させて3Tに3〜4点クロックなので、理想的に回れば理論上は強い。ただ、トランプルも飛行もなくタフネスも低いため、相手からするとブロッカーなどによる対処は容易。

《両生鰐》
何度タフ5を出しても3/5にしかならない彼の弱いこと弱いこと。到達が価値だけど、攻め気を出すべき生物ビートダウンデッキでそれはどうなのか。赤を足して頭でっかちな誘発剤を揃える方針にするなら面白いけど、テンポと安定感は3色になると更に下がるためビートダウンとしてさらに怪しくなってくる。

《乱打する混成体》
ギリギリ。トランプル持ちなので、ダメージレース的な圧は強い。シュラバザメと同じP/Tなので構築上扱いやすいといえば扱いやすいが、逆に言うとシュラバザメとお互いの進化を誘発させられないとも言える。また、3マナ2/1スタートのフレンチバニラなので普通に遅く、序盤の弱さを考えると最低でも3回は進化させることが大前提となる。3Tにこれを置いて、4Tに2マナ×2などで2進化できるかどうかが重要。

P/Tのそれぞれを比較する都合上、頭でっかちとケツでっかちな進化生物が競合するとどっちつかずになりやすく、そのあたりも加味して調整する必要がある。

他生物の採用候補の評価

《亢進する亀》
貴重な1マナ域。ビートダウンデッキにおいて「1マナでやることがない」と言うのはダメージレース的にも展開速度的にも痛く、4枚しか居ない《雲ヒレの猛禽》にそこを依存しているという課題を突破しつつ増殖で太れるこのカードの価値は高い。
タフネスが大きいため、スムーズに増殖できれば《稲妻》《雪崩し》《汚涜》あたりの圏内に入らず、また中盤以降に引いても進化の誘発剤になれる。

《跳ね橋》
遅めのビートダウンに入りがちな選択肢。
大きめの3〜4マナ域が着地して即殴れるのは大きい。ただ、進化生物が根本的に「着地した時には弱い」という性質を持つため、そことの噛み合いは悪い。

《かき鳴らし鳥》
強そうな見た目してるけど全然強くない。飛行とはいえ1/1が除去されずアタックを通せることがあまり無いし、2Tに置いて3Tに殴っても、1Tに置いた《雲ヒレの猛禽》以外は何もカウンターが乗っていない状態なため、有効に機能し出すのは4〜5T目以降。
しかも1/1だから、置いた直後の《雲ヒレの猛禽》以外の進化を誘発させられず、根本的な進化デッキの強みの一つである「非進化生物の全員が進化生物を強化するCIP持ちのようなものなので、テンポ的に強いのに加えて、着地後の除去やバウンスへの耐性が多少ある」という部分を否定している。
ただ、ここまで否定を重ねたものの、除去されず毎ターンアタック通せるご都合主義前提で見るならばやはり増殖自体が強いため、「そもそもTierデッキじゃないんだからご都合ドブン勝ちに期待した構成にしないと勝てないでしょ」「とにかく気持ちよくなりたい」という発想なら、ロマン枠として優秀なのは事実。

《花粉光のドルイド》
《雲ヒレの猛禽》に2つカウンター乗せられたり、《かき鳴らし鳥》にカウンター乗せて1/1フェアリーを突破可能にしたり、やれることの幅は広い。
ただ、1/1なため《雲ヒレの猛禽》以外の進化誘発剤にはなれず、進化ベースのデッキ構成だと進化生物以外にカウンターはあまり乗らないことを考えると、普通に進化誘発させやすいサイズの生物でいいのでは?ともなりやすい。

《夢で忍び寄るもの》
自分を戻して何度も進化させてもよし、1度死んだ《嵐縛りの霊》や消耗した《根の壁》《ヴィグの水植物》や各種CIP生物を戻してアドバンテージを稼いでもよし、こちらより速いアグロ相手にタフ5ブロッカーとして立ってもよしで多彩。ただし、どの選択肢においてもテンポ的には悪いので注意。

《根の壁》
4マナ域までテンポロス無しで行きたいことや、《暴走の先導》《紆余曲折》の存在もあり、マナを伸ばすことの価値は高い。かつ、自分のターンに使った上で相手のターンにもマナを出せるため《シュラバザメ》《歪んだ爪の変成者》との噛み合いも良い。
また、実質1マナでタフネスが高いので、単純に進化誘発剤としても悪くないスペック。

《大クラゲ》
《夢で忍び寄るもの》が相手の生物を狙えるようになった代わりに進化誘発剤兼ブロッカーとしての性能を落とした形。
ブロッカーをどかせる意味で《かき鳴らし鳥》との噛み合いが良い、というか《かき鳴らし鳥》を使うつもりならこれが居ないと話にならない。
ただ、pauper環境におけるバウンス(しかもソーサリータイミング)自体が根本的に弱いところはある。

《嵐縛りの霊》
ブロッカーで誤魔化そうとしてくる相手に強い。除去に強い側面については、このデッキではこれを放置して他を除去されるだけなので「布告除去にだけ強い」といったところ。
不死で出直す際も進化を誘発させられるので進化との噛み合いが良くといえば良いものの、初期2/2で、放置されると不死も使えないため、案外そこまででもない。ただ純粋にカードパワー的に強いのと、増殖やバウンス生物との噛み合いが良いので、ふんわりデッキ全体と噛み合う形。

《ヴィグの水植物》
5/5で進化を誘発させつつ、後続の非進化生物にカウンターを乗せることで増殖の旨味を上げることができる。
《木化》などと組み合わせても強いものの、それの採用自体が生物純度を下げるという課題はある。

《エイヴンの永遠衆》
2/2飛行クロックを置きつつ、増殖でデカくなる1/1生物を置ける。ただ、単純な3マナ3/3よりも進化の誘発はさせ辛い(《雲ヒレの猛禽》を1枚で2回進化させられる強みはあるが)。
ただ、「面で戦う」構造なら1枚刺ししたくなるスペックであるものの、進化がコンセプトだとどうしても進化誘発剤が枠を取る都合で点とも面とも言い難いバランスの構造になるため、半端。

《縫い合わせのドレイク》
多少の消耗戦が前提となるものの、 3マナ3/4飛行は進化誘発剤として見ても単純な殴り屋として見ても強い。3Tに置けるかはかなり怪しく、被って出せずにダブつくのが怖いため、0〜2枚か。

《熟考漂い》
3Tに進化誘発させつつ2ドローしてもよし、5Tに普通に出してもよし、各種バウンスで出し直してもよし。ただ、とにかくテンポが悪いので、ビートダウンデッキとの噛み合いが良いかというと微妙。生物枠というよりは、《紆余曲折》《暴走の先導》で拾える重いドローソース、くらいの見方が正しい気がする。

《開花の巨体》
4/4のスペックで進化を誘発させつつ追加で増殖できる。かつ、《ヴィグの水植物》が居れば増殖→移植の順で誘発させることで自身も6/6になれる。強い。

《歪んだ爪の変成者》
瞬速飛行とはいえ4マナ3/1なためスペックはかなり怪しいものの、突然3点クロック増やしたり、進化誘発やCIPを用いたコンバットトリックしながら着地したりできるため、行動の選択肢が増えて面白い。うまぶり枠。

《ブラストダーム》
増殖との相性が良い。進化誘発させやすい。以上。

非生物呪文の採用候補の評価

《紆余曲折》
《暴走の先導》
生物が多くの枠を占めるこのデッキでは弱いわけもなし。ただ、3〜4マナアクションが多いデッキであることからテンポが悪いのも事実で、緑単ストンピィで使われるようなパンプアップ系呪文に変えてテンポを上げる形でもいいのかもしれない。

《遮蔽する粘体》
《雲ヒレの猛禽》あたりに付けられれば、相手次第ではあるもののフェアデッキにはイージーウィンしやすいと思われる。ただ、《紆余曲折》《暴走の先導》のための生物純度を下げるかどうかという部分は怪しい。

進化いる?

わざわざ進化誘発剤という名目の「まともに殴れない生物」に枠を割いて実質的な生物数を減らさないと活躍しない割に、《雲ヒレの猛禽》以外の進化生物がとにかく弱い印象。しかも、《雲ヒレの猛禽》はわざわざ介護せずとも適当に生物を置くだけで育つ。

となれば、必然的に辿り着く疑問。進化よりも増殖を軸にした方が、無駄杯が不要になりつつ安定して強いのではないか。

増殖ベースでの調整

《雲ヒレの猛禽》以外の進化生物を外して増殖ベースにして調整。ここで得た新たな選択肢や評価の動いた選択肢は以下。

《紆余曲折》
《暴走の先導》
増殖の特性として、「カウンターが載っているパーマネント数が多いほど強い」という部分がある。
つまり、必然的に採用カードを軽い生物に偏らせつつ面で殴る形を目指すことになる。
となれば、この爆アドドローソースの出番。
ただ、土地を回収できずに手札が増えるので、素で4マナには最低限届く(調子が良ければ5〜6マナまで届く)ような土地枚数にしておかないと、このドローソース自身のテンポロスもあり、かなり遅い展開になってしまう。

《鱗の召使い》
1マナ域からしっかり展開できつつ、増殖との相性が抜群に良い。増殖コンセプトの1マナ域では最も強いカード。
増殖でしっかり大きくなりつつ、死んでもその分他にカウンターを移せるため実質的に死んでいないためブロッカーや除去にも強い。

《若き狼》
初期状態ではカウンターが乗らないため鱗の召使いほど強くはないが、鱗の召使いと共に除去に強い。
1/1のまま放っておかれがちだが、それはそれで毎ターンアタック通してもらえるということでもある。

《スカルガンの穴潜み》
他の1マナ域が居る前提でないと2Tのスムーズな着地は難しいが、ハマれば強い。前述の《若き狼》が放置されてアタック通して貰えたところで着地してやりたい。
増殖で太らせればアンブロ能力が強いので、移植や鱗の召使いのPIGを活用して無理矢理カウンターを乗せる手もある。

《水辺の蜘蛛》
増殖デッキのマスターピース。
増殖生物の着地に対応して移植する(移植から解決する)ことで、増殖生物自身も含めて増殖できる。
かつ、到達付与で殴り合いに強くなる。
特に進化を重視しないならば、《ヴィグの水植物》ではなく素直にこちらでいい。

《殺戮角》
生物純度を下げずに採用できる《巨大化》。
《紆余曲折》《暴走の先導》で持ってくると相手に見られてしまうものの、それを差し引いても1枚くらい挿しておく価値はあるように思える。
ブロックされたら《殺戮角》、ブロックされなかったら《スカルガンの穴潜み》、という選択肢を取れるのも魅力。

《シミックの信徒》
一度増殖しないと、移植する際に死んでしまう。
ただ、一度増殖してしまえば《水辺の蜘蛛》枠になれるのは事実ではある。1マナ域や移植枠が足りない際の穴埋め枠になりそう。

《ブラストダーム》
増殖に寄せるなら生存期間が伸びる。
というか、打ち消しコン相手以外では、着地した《ブラストダーム》が死んだ試しが未だになく、ただの4マナ5/5被覆のような感覚で扱えている。
また、被覆持ちでも布告には勝てないが、布告に強い1マナ域が多いためそのあたりの噛み合いも良い。

《跳ね橋》
《ブラストダーム 》や着地即6/6になった《開花の巨体》をそのまま発射でき、また《紆余曲折》《暴走の先導》によるテンポロスを低減できるため優秀。
ただ、進化誘発剤としての価値は無くなるため、終盤に引いた時は不要牌になる。

青いる?

増殖ベースの調整を進めていくと、元々青の枠は「進化と噛み合わせるから強い」カードが多く、みるみるうちにデッキが緑に染まる。

《亢進する亀》
《夢で忍び寄るもの》
《大クラゲ》
《熟考漂い》
《縫い合わせのドレイク》
進化生物を前提とした強さなので、増殖ベースにするなら抜ける。

《嵐縛りの霊》
(少なくともメインにおいては)ある程度進化生物を前提とした強さであり、除去耐性は《鱗の召使い》や《若き狼》が持っている。

《ヴィグの水植物》
ある程度進化生物を前提とした強さであり、移植は《水辺の蜘蛛》でいい。

《かき鳴らし鳥》
《歪んだ爪の変成者》
普通に弱い。

そのため、《雲ヒレの猛禽》と1枚挿しの《エイヴンの永遠衆》のためだけに、pauperにおいては大きなテンポロスを伴う多色化を、本当にするべきなのか?という疑問に到達。青が抜ける。

最終リスト

こんなん。
サイドは大幅調整中なため省略。

クリーチャー(30)
3:《スカルガンの穴潜み》
3:《若き狼》
4:《鱗の召使い》
1:《シミックの信徒》
2:《跳ね橋》
4:《水辺の蜘蛛》
4:《花粉光のドルイド》
1:《殺戮角》
4:《ブラストダーム》
4:《開花の巨体》

呪文(8)
4:《暴走の先導》
4:《紆余曲折》

土地(22)
22:《森》

軽めのマナ域を横に展開しつつ、面を大幅強化する増殖ギミックで戦線を固めて殴り切る構成。

調整の余地

現リストでの調整案は以下。

・《ブラストダーム》の枚数調整
死なない《ブラストダーム》が間違いなく強いのは事実。事実ではあるのだが、ある程度のサイズの生物がお互い並んで膠着した状況を打破できる突破力や、キルターン的な圧力の面で見ると、5/5以上でも以下でもないのは事実。また、後続の増殖生物を打ち消されるだけで勝手に死んでしまうので、打ち消しコントロールには弱い。
4積みではなく2〜3積みにして、《冠角獣》《鞍背ラガーク》あたりを試してみるのも手かもしれない。

・非生物呪文の方針変更
速やかに殴り切りたい相手への遂行速度を考えるなら、《紆余曲折》《暴走の先導》を抜いて、《吠え群れの飢え》《瀬戸際の勇気》《凶暴な一振り》あたりに変更しテンポアップする案もある。その場合は土地の1〜2枚の減量や、テンポロス回避のための1マナ域多めの生物バランスを少し2〜3マナ域重めに調整するなど、全体的な調整を伴う。
ただ、これは「じゃあこれ緑単ストンピィにすればよくない?」ということになりやすい。

・1マナ域の枚数調整
これまで自分は《シミックの信徒》をあまり信用していなかったが、《若き狼》《スカルガンの穴潜み》と違い相手のブロッカーを気にせず自分のやりたいことを推し進められる安定感は長所と言える。環境を考えつつ、枚数バランスを調整してみてもいいかもしれない。

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