So Kamiya
角野隼斗というとんでもないアーティストに出会ってしまった

角野隼斗というとんでもないアーティストに出会ってしまった

So Kamiya

私は音楽が好きでFUJI ROCKという音楽イベントが大好きだ。あえて特定の好きな音楽のジャンルをしぼる感じはなく、ロックもパンクもソウルもジャズも好きだし、バンドでもソロでも、エレキでもアコースティックでも、邦楽も洋楽も歌物もインストゥルメンタルも、とにかく選り好みせず自分の琴線に触れる音楽はいろいろ聴いている感じだ。
そういう私にとってFUJI ROCKはまさに最高のイベントで、夏の初め、梅雨が明けた7月の最終金曜、土曜、日曜に過ごす苗場での3日間は、新しい音楽との出会いであり、魂の解放であると思ってる。
2014年に子供が産まれて以来、3日間フルで苗場で過ごす機会はそうそうないが、それでもInterFMやJ-Waveなどの現地中継ラジオ、さらにここ数年はYoutube中継も定番化しており、リモート在宅でもあの空気に触れられることは本当にありがたい。そして今年も例のごとく自宅で3日間、苗場を恋しく思いながら子育てしつつYoutubeでFUJI ROCKを楽しんでいた。

そんな私が今年2022年に完全に撃ち抜かれた1人のアーテイスト、それが角野隼斗だ。
2022年7月31日、事前にはノーチェックでその時間も3ch同時中継のYoutubeをぼんやり見ていた訳だが、なんとなく他のステージの合間にch2に変えた瞬間、FUJI ROCKの数あるのステージの中、私が一番好きなField of Heavenにてほぼ譜面通りに奏でられるショパンの英雄ポロネーズが耳に入り、一瞬で釘付けになってそこから目を逸れせなくなった。
このときのステージに関しては、すでにかなりの熱量でレポートされているファンの方もいるので、興味のある方は是非みてほしい。

私は彼の古参ファンでなければクラシッククラスタでもなく、ただの音楽好きでFUJI ROCK好きなだけだ。たまたまYoutube中継で初めて角野隼斗に出会い、心動かされただけに過ぎない。ただ、この熱量を誰かに伝えたい、その一心で今この文章を打っている。

FUJI ROCKとクラシック

FUJI ROCKの現地の熱量を最も早く、そして熱く伝えるFUJI ROCK Expressというメディアがある。
このライブレポートでも書かれているが、FUJI ROCKにクラシック、これは今までなかった組み合わせだ。

私は2008年、大学最後の年に初めてFUJI ROCKに行って以来、さまざまなジャンルのライブを見たし、上原ひろみやBen Foaldsなど、最高のピアニストのライブも見たが、直球クラシックは初めて見た。
ただ、ここで誤解を与えたくないのだが、このField of Heavenでの50分間、彼がクラシックコンサートをやって苗場をコンサートホールに変えたかというと全く違う。音楽ライターの小室さんがリアルタイムで解説しているTwitterの投稿の通り、クラシックで始まりクラシックで終わっているが、それは彼の信念と表現によるものであり、コンサートホールでもYoutubeでもなく、FUJI ROCKのField of Heavenで演奏されたあの50分間は、正真正銘のロックだったと私は確信している。

そしてリアルタイムはたまたま途中から中継を見た訳だが、とてつもない衝撃を受けたため、その日のFUJI ROCK中継終了後の再配信スケジュールを確認し、真夜中に目覚ましをセットし、翌午前4時頃から、今度はヘッドフォンを使ってちゃんとした音質で頭からしっかりその演奏を聴いた。結果、間違いなく最高な出来事だったことを確信した。


彼は一体何者?

まずはこのFUJI ROCKでのライブの10日前に公開(というか生配信?)されたこちらの動画を見てほしい。50分以上と長いのだが、FUJI ROCKとほぼ同じ構成でスタンウェイとなにやらカスタムしたアップライト、シンセサイザーにCASIOのキーボード(そういえばCMやってるよね)をコの字型にセッティングし、同じ曲を含むセットリストのライブを公開している。是非このNoteを見て興味を持った人、あるいはこいつはこのテンションで何を言ってるんだと思った人に見てほしい。

ここでFUJI ROCKでの驚きと感動から一転、Cateenという名義でYoutube活動をしていてチャンネル登録者数100万人超えてるという事実を知る。いやそんなの知らなかったですよ。全然。まじかよ。

さらにWikipedia見ると、現在27歳、出身は開成中高から東京大学大学院情報理工学系研究科出身だと。

え?
東京大学??
東京藝術大学じゃなくて???

と、まあとりあえず、おそらくご本人が今までに幾度と言われたであろう驚きを一発感じる訳なんだが、この驚きはまるで本質を突いていない。
といってもまだ角野隼人を知って5日なので、本質も何も知らないんだが、そういう「すげー」なスペックとはまったく次元が違う感動を私は受けたのだ。
そしてご本人のTwitterから、こちらのインタビューに辿り着き、私自身がこれまでの音楽好きの人生で養ってきた感性や感覚と、FUJIのライブでの感動が素直にリンクした。

角野隼斗の名を聞いて、「東大卒」や「YouTuber」というフレーズを思い浮かべる人も多いだろう。けれどもそれは、彼のほんの一面を表しているに過ぎない。音楽家・角野隼斗の本質に迫った。

「登録者数や再生回数が増えるのは素直にうれしいですよ(笑)。でも、気軽にクリックするという行為が、音楽を好きになってコンサートに来てくれることに本当につながるのか、という不安もあります。だからYouTubeでは、数を増やすことよりも、きちんとした音楽を伝えたい」

これからの活動については、「これが自分の音楽だ、これが僕の世界観だと言えるものを出したい」ときっぱり。

徐々にこの辺りから、私がなんでこんなに撃ち抜かれ、沼にハマりかけているのかの片鱗が見え始めてきている。

角野隼斗のすごさ

まず繰り返しになるが、FUJI ROCKでクラシックを表現する、これは明らかに今までにない新しい挑戦だ。
そしてクラシックをクラシックとして解釈・表現するだけでなく、クラシックを軸、ルーツ、基盤としつつ、ジャズをはじめとした他のジャンルの音楽と融合し、アレンジやオリジナルの曲を交えて自分の音楽・世界観を表現していると感じた。
最初見た時は、失礼ながらショパンコンクールの反田さんのバーター的存在としてしか認知しておらず(まじで無知で超絶失礼)、クラシック畑の彼のキャリアの中で、この経験が新たな可能性を生むのではと、ポジティブながらもかなり遠目で引き気味の感想を抱いていた。たが、時間と共に彼のことを少し知るにつれ、その感覚は大いに間違っていて、むしろ彼の音楽や表現を知るきっかけに過ぎなかったのではと思っている。

例えば先ほどのYoutubeのCateen’s Piano Live - Summer ‘22だが、6:26からChick CoreaのLa Fiestaを演奏している。この曲ではルーパーやシンセサイザーを交えた演奏をしていて、非常に実験的な様はピアニストという表現には収まらない、まさに音楽家だ。
また、蓋を開け、アップライトの弱音ペダルやハンマーに金属の板?を挟んで音色を遊ぶ演奏もおもしろい。ここは南アフリカのジャズピアニスト、Abdullah Ibrahimがフェルトに鋲つけたピアノで演奏したMannenbergなど、個性的なピアノ作品の影響を彷彿するし、同時に生ピアノへのリスペクトも感じる。
一方でスタンウェイに戻ると王道のクラシックピアニストであったりジャズピアニストの姿を見せる。
いやいや、これより前から色んな表現は色々やってるのかもしれないし、まだにわか、知ってから5日の私が出会ってないいろいろな表現があるんだろうと思うんだけど、それでも少し触れただけで角野隼斗の奥深さを知れる。

あとはこのインタビューを見ても、影響を受けたアーティストに上原ひろみやジェイコブコリアーの名前が上がっており、非常に興味深い。

最後に

100万人のチャンネル登録者がおり、トップクラスのピアニストとして世界中に知れ渡っている角野隼斗について、突発で語るのは恐れ多く、界隈の方からすれば「いやいや今更何言っちゃってんの」でしかない自覚は大いになるのだが、とは言えFUJI ROCKで(しかもYoutubeで)初めてその存在を知った私としては、もし万が一まだ出会っていない人がいたら、この感動・興奮を少しでも伝えたいというのが本心である。

特に、今回のFUJI ROCKを通じて私自身が新鮮だったのは、クラシック対クラシック以外という音楽の壁は思ったよりでかいんじゃないかという気づき。
普段ロックやポップスを聴くFUJI ROCKのメイン層からすると、クラシックっていうのは敷居が高く高尚なもの、場合によっては別の世界であったりとっつきにくいものという感覚が、多少あるんじゃないだろうか。(FUJI ROCK Expressの記事も、クラシックにちょっと壁というか、「自分あんまり詳しくないんで」みたいな雰囲気がある)

でも、今回のFUJI ROCKでの彼の演奏は、ジャンルなんて関係なく、「音楽」としてめちゃくちゃかっこいいものを表現してるステージだったし、クラシックを普段聴かないお客さんにもガンガン届いていたと思う。
聴衆のバックグラウンドなんて全く関係なく、表現の方法として王道クラシックを思い切り演奏できるのってめっちゃかっこいいし面白い。そして、その中には「クラシックってかっこいいだろ」だけじゃなくて、「音楽に壁なんかないよ」っていうメッセージもあったんじゃないだろうか。
テンションで書いているので表現が拙いんだけど、例えば敷居をさげるとか、壁を壊すとか、風穴を開ける、みたいな形ではなく、クラシックの高尚さは決して下げず、とはいえ色んな入り口や立ち位置、視点、そこに至る道なんかを表現して、決して迎合せずに最大限のリスペクトを持って万人の心を掴む、そういう印象を受けた。

私がこの熱量を伝えたいと思った動機は、「クラシックも面白いね」ってことではなく(いやその感想もあるんだけど)、ジャンルとか知識とか関係なく、素晴らしい音楽に垣根はないし、まだまだ音楽の世界は広くて深い、それを改めて感じ、心動かされた興奮と感動によるものだ。
そしてあわよくば、まだ角野隼斗を知らない人が興味を抱くきっかけになってくれると幸いだ。

これまで度々、思いを文章でアウトプットしたいなと考えることはあったものの、日々の忙しさに流されおざなりにしてきた。が、今回初めてNoteのアカウントを作って勢いで文章を綴ってみた。拙いこの文章を読んでくれた人に感謝します。
そしてこの熱量を与えてくれた角野隼斗、しばらくディグります。

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