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シーシャ小話④ 〜Na Grani HMDって何がすごいの?〜

※シーシャはたばこの一種です。喫煙は20歳から。

皆様いかがお過ごしでしょうか。チルしてますか?
近年世界的な流行を見せるNa Grani HMD。HMDといえばKaloud Lotus一強であったにもかかわらずここまで流行したのはなぜでしょうか。Kaloud Lotusと比較しながらNa Grani HMDの強みについて解説していきます。



自己紹介

六本木にあるシーシャバー、B-Side Shisha Bar店主のSoheiです。「シーシャは誰でも美味しく作れる」をモットーに、シンプルで再現性の高いシーシャのレシピを日々模索しています。欧米のシーシャ文化に基づいたシーシャの作り方や機材・フレーバーのレビュー、シーシャに関する豆知識なんかを発信していくのでよろしければフォローをお願いします。


Na Graniとは

ロシア連邦ウドムルト共和国のシーシャブランドです。あまり知られていませんが、最初はシーシャステムのブランドでした。
脱線しますが、Na Graniのロシア語表記"НА ГРАНИ"はどうやら"瀬戸際"という意味らしいです。ロシア語の文章を機械翻訳して読んでいたら"On the Edge"という言葉が出てきて困惑していましたが、ブランド名を英訳しただけのようです。
そんなNa Graniが2019年12月頃からHMDの販売を始めました。その名も"Na Grani HMD"。このHMDの強みはどこにあったのでしょうか?Kaloud Lotusと比較しながら見ていきましょう。


Na Grani HMDとKaloud Lotus I+の比較

デザイン

正直、Na Grani HMDを購入したきっかけはデザインでした。Kaloud Lotusの洗練された高級感のあるデザインも素晴らしいですが、Na Grani HMDのメタリックな重厚感と光沢感はこれまでにないものでした
購入当初は後に解説する細かなスペックの違いなど知らず、「なんかお洒落なKaloudレプリカ」だと思って購入した記憶があります。

実物を手に取ると、まずその重量感に驚きます。蓋を除いて実測値約80gのKaloud Lotusに対してNa Grani HMDは約160gと、約2倍もの重量差があります。側面の切り込みもシンプルでかっこいい。

素材

Kaloud Lotusと比較した際に最も違いが現れる点が素材です。Kaloud Lotusはアルミニウム製であるのに対し、Na Grani HMDはステンレス製。それぞれの違いは主に以下の通り。数値は参考値なので詳しくは各自調べてみてください。

https://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/key_properties/comparison/

・融点
アルミニウムの融点は600℃程度、ステンレスの融点は1400℃程度。Kaloud Lotusは融点の低さによりコンロでの予熱は非推奨とされていましたが、融点の高さによりNa Grani HMDは予熱が可能になりました。

・熱伝導性
アルミニウムの熱伝導率は195W/m・K程度、ステンレスの熱伝導率は16W/m・K程度。予熱をしない場合はKaloud Lotusの方が温まりやすく、プレヒートにかかる時間は短いです。一方で、Na Grani HMDの方が冷めにくく、小さな炭でも十分な火力をキープしてくれます。さらに、体感ではありますがNa Grani HMDの方がより高い温度をフレーバーに伝えることができます。外気により温度が下がるファクターが小さいためと考えられます(違ったらごめんなさい)。
また炭の熱量がゆっくりと伝わるためか、Na Grani HMDの方が炭の接地面が黒くなりにくいです。

・耐久性
メーカーによると、ステンレス製のNa Grani HMDは変形しづらいことに加え、腐食や傷などにも強いです。多少乱雑に扱ったとしても外観が変化することはありません。

内部

Kaloud Lotusの内部
Na Grani HMDの内部

HMDの内部を見てみると、大きな違いは主に2つあります。

1つは、突起の深さ。Kaloud Lotusは深めの突起があります(モデルによっては小さなドットがあるものやそもそも突起のないものもあります)。これは炭の接地面積を減らして炭が黒くならないようにするためのものですが、小さい炭を3箇所に置く想定で作られており大きな炭を2つ縦に並べて置く際は若干のやりづらさを感じます。一方でNa Grani HMDは円状の浅い突起があります。突起が浅いため炭の接地面が黒くなってしまわないか不安でしたが、前述の通りその点はKaloud Lotusより優秀でした。

もう1つは、周囲の出っ張りの有無。Kaloud Lotusは蓋でエアフローを調整する仕組みのため蓋を引っ掛ける3箇所の出っ張りがあります。この仕組自体は悪くないのですが、蓋を使用しないロシア式の作り方をする場合は若干使いづらい。その点Na Grani HMDは壁面が円状になっているため炭の配置自由度が高い。

底面

Kaloud Lotusの底面
Na Grani HMDの底面

底面に関して大きく異なる点は、突起の有無でしょう。
Kaloud Lotusは8つの突起が底面に付いており、これをフレーバーに軽く触れさせてフレーバーを温める仕組みになっています。一方Na Grani HMDは円状の浅い突起があるのみで、突起に触れさせてフレーバーを温めるという設計思想ではないように感じます。
Kaloud Lotusは突起にフレーバーを当てないとまともに煙が出てくれないイメージですが、Na Grani HMDはHMD自体がかなりの高温になるため、UnderpackからOverpackまで幅広い火力に対応します。

また外周にも違いが見られます。
Kaloud Lotusは外周に2mm程度の切り込み(溝)があり、これによりボウルとフィットさせる構造です。それに対してNa Grani HMDは外周のギザギザによりボウルから滑りにくくする構造です。
素焼きボウルや溝付きのボウルで使用する分には使用感は変わらないのですが、Oblako Phunnelなどの全面に釉薬が塗られた薄手のボウルではNa Grani HMDの滑りやすさが目立ちます。

蓋の有無

前述の通り、Kaloud Lotusは蓋があり、Na Grani HMDは蓋がありません
ただし蓋を使用しないロシア式の作り方では全く影響はありません。蓋を使用せずとも1時間以上炭が持つので、個人的には蓋は不要かと思います。


Na Grani HMDの強み

以上の特徴をもとに、Kaloud LotusにはないNa Grani HMDの強みを考察しました。Na Grani HMDはなぜ流行したのでしょうか。

デザイン性

ここは個人的には機材を買う際にかなり重視しているポイントです。いくら機能性に優れていたとしてもデザインが野暮ったい機材では気分が上がりません。その点Na Grani HMDは初めてInstagramで見かけた時からデザインがいいなと思っていました。
Kaloud Lotusを始めZeppelin HMDやMIG Razorなどデザインに優れたHMDは多数存在していましたが、後述の点でNa Grani HMDは優れているかと思います。

シンプルな操作性

Na Grani HMDには蓋がありません。これは一見デメリットのように感じられますが、シンプルな操作性を実現したという点ではむしろメリットです。
とりあえず炭を置くだけでシーシャが完成し、火力を調整する際も炭を増減させるだけで済みます。さらに保温性も非常に高いので26mmキューブが3つあれば最低でも90分は満足に煙を楽しめます。

ステンレス製であること

前述の通り、Na Grani HMDはステンレス製です。ステンレス製のHMDといえばSteamulation HMDやAOT Provostなどがありますが、アルミホイルを張る必要性があり、Kaloud Lotusとは全く異なる使用感でした。
その点Na Grani HMDはアルミホイル不要で簡単に扱える上に「高温」「高耐久」といったステンレス製のメリットを享受することができます。
火力の違いについてざっくり説明すると、すり切り程度までフレーバーを盛ってNa Grani HMDで作ったシーシャと、HMD全面にべったり付着するまでOverpackしてKaloud Lotusで作ったシーシャの強さがおおよそ同じくらいです。

ロシア製フレーバーとの相性

Na Grani HMDが誕生したロシアではフレーバー作りも盛んに行われており、ロシア製フレーバーの大半は熱に非常に強いものとなっています。
Na Grani HMDが登場する前はストレートボウルにKaloud Lotusという作り方が主流でしたが、これでは熱が全体に回りきらない場合がありました。しかし、高温をキープできるNa Grani HMDを使うことでフレーバー全体を最大限に活かし、濃厚な煙を簡単に出すことが可能になりました。


Na Grani HMDは誰におすすめか

シーシャ上級者

特にストレートボウルで吸う場合、このHMDはシーシャをしっかりと吸える上級者向けです。というのも、高温でキープする特性上、吸い方でシーシャの温度をコントロールすることができる人でないとオーバーヒートしてしまいがちです。
ロシア製フレーバーのような熱に非常に強いフレーバーを高温でしっかりと熱を全体に回しながら吸える場合、このHMDは真価を発揮します。

作成にかかる時間を減らしたい人

先述の通り、Na Grani HMDは予熱が可能です。それを生かしてHMDを乗せてすぐにシーシャを吸うということも可能です。Egg Shishaさんの盃Bowlを用いた場合の作り方を以前の記事にまとめてあるのでご参考にどうぞ。
ファンネルボウルであればオーバーヒートの心配はそこまでしなくてもよいので案外お手軽に作れます。ただ、陶器100%で薄手のボウルの場合急激な温度変化で劣化してしまう恐れがあるので注意が必要です。

炭替えをしたくない人

炭替え、面倒くさいですよね〜。ヤニ箱労働者ですら面倒に感じる炭替えが一般の方に面倒くさくないわけがありません。
26mmキューブ炭3つでKaloud Lotusでは60分程度しか持たない火力がNa Grani HMDでは90分ほど持続します。ズボラに爆煙を出したい方には素直におすすめできます。

上記3つ全て当てはまる人

ズボラな水ヤニカスさんですね。Na Grani HMDの素質があります。今すぐ買いましょう。


まとめ

個人的な見解としては、
・ロシア製フレーバーを最大限活かせる
・デザインがかっこいい
・お手軽に爆煙を作れる
以上の理由でNa Grani HMDは海外で流行したのかなと思います。正直に申し上げると、日本のシーシャユーザーでNa Grani HMDのポテンシャルを享受できる人は多くないので、デザイン目当てで購入すると後悔するのかなと。ステンレス製所以の高火力が必要ないのであれば、Na Grani HMDでできることの大抵はどのご家庭にもあるKaloud Lotusで事足ります。
デザインが気に入って購入検討されている場合、アルミニウム製のNa Grani HMDなんかもあるのでこれを選択肢に入れてみるのもありかと思います。

あ、執筆中にお店が一周年を迎えました。祝ってくれた皆さんありがとうございました。


最後に

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