「シーシャ機材を育てる」というマーケティング

※シーシャはたばこの一種です。喫煙は20歳から。
※性格の悪い考察です。話半分と思ってお読みください。

皆様いかがお過ごしでしょうか。チルしてますか?
シーシャ専門店で、素焼きボウルを育てていたり木製ステムを育てていたりするのをよく見かけると思います。あれはマーケティング戦略として優秀なんじゃないかという話を、マーケティングを齧ったことも舐めたこともないぽっと出のシーシャバー経営者が根拠もなくダラダラと述べていく記事です。
僕の独り言に付き合ってくれる奇特な方は是非最後までご覧ください。



自己紹介

六本木にあるシーシャバー、B-Side Shisha Bar店主のSoheiです。「シーシャは誰でも美味しく作れる」をモットーに、シンプルで再現性の高いシーシャのレシピを日々模索しています。
欧米のシーシャ文化に基づいたシーシャの作り方や機材・フレーバーのレビュー、シーシャに関する豆知識なんかを発信していくのでよろしければフォローをお願いします。


「機材を育てる」とは

「育てる」というと、皆さんはどのようなイメージでしょうか。個人的なイメージはこうです。

経年により生じる変化を、あえてポジティブなものとして楽しむ。

デニムやヌメ革製品などが代表的な例として挙げられます。使用を繰り返すことにより汚れや傷、色落ちなどといった本来ネガティブな変化が生じますが、それを「経年劣化」ではなく「経年変化」とポジティブに解釈して愛着を抱きながら使用していく。そして時にはあえて経年変化が起きやすいように乱暴な使用方法を選んだり、加工したりする。

これはシーシャにおける「育てる」も同様です。
素焼きボウルを育てる際は、あえてクラシックな製法で作られた質の悪いターキッシュボウルを使うことが多いです。最初の数回は土臭さが出てしまったり、煙がすぐに出なくなったりと、使い勝手の悪さが目立ちます。しかし繰り返し使用していくうちに徐々にボウルの色も土色から飴色に変色し、使い勝手が向上します。さらに、ひとつのボウルに対して毎回同じフレーバーを用いて「育てる」ことにより香りが染み込み、シーシャフレーバーによる香りだけではなくボウルに染み込んだ香りを楽しむことができるようになります。
木製ステムも同様です。ステムをきちんと洗わずに放置していると生じる残り香は本来ネガティブなものですが、それをあえて活かして単一フレーバーで吸い続けることにより香りを定着させていきます。
どちらの場合も、お店で提供できるレベルにまで「育てる」ためには少なくとも10回以上は単一フレーバーで吸う必要があります。多いお店だと300回以上スタッフで吸って育てたなんてところもあります。

ここまでの説明を読んでどう思いましたか?手間のかかることをやってんなぁこだわってんなぁと思うはずです。


シーシャ専門店における「差別化」

未解決問題のひとつに、シーシャ屋増えすぎ問題というものがあります。シーシャ専門店が都市部を中心に乱立し、各店舗が顧客獲得のために差別化を図っているところと存じます。
内装をお洒落に仕上げたり、ドリンクに力を入れたり、カラオケ・ダーツを併設したり、メタルをBGMにしたりなど、様々な差別化要素があるとは思いますが、シーシャ専門店なんだからシーシャで差別化したいですよね。ただ、そこで問題が発生します。

シーシャの味は、吸うまで分からない

「美味しいシーシャ、作ります」をスローガンに掲げているお店があったとします。このお店に行けば間違いなく美味しいシーシャが吸えると思いますか?否、「美味しいシーシャ」とかいう安直なワードなんて誰でも書けます。それを理由にお店に足を運ぶことはないでしょう。

吸ったところで、大抵味なんか分からない

信州国際大学の研究によると、シーシャ専門店の顧客のうち90%はシーシャの味の違いが分かりません。だから安くてお手軽なチェーン店が賑わうのです。「俺のシーシャは美味しいから、吸えばきっとリピートしてくれるはず」なんてのは傲慢もいいところです。10%にも満たない小さいパイを奪い合ったところで業界の売上は伸びません。

味以外の要因で「美味しい」と感じる場合がある

シーシャは誰とどこで吸うかが結構大事だと思っています。家でシーシャを作って一人で吸ってもお店ほどは美味しく感じずに1時間を待たずに吸うのをやめた経験を持つ方は多いはずです。逆に、別に大して美味しくないシーシャであっても、仲のいい友人と吸うシーシャであったり、接客の心地良い店員さんが作ったシーシャは美味しく感じることがあります。
食事に例えると分かりやすいです。ウルフギャングのステーキをテイクアウトして便所で食べてもウン万円の味はしないでしょう。また美味しいラーメン屋でも、店員同士が怒鳴り合いの喧嘩をしていては味どころではありません。
誰かさんの言葉を借りれば、シーシャ屋の顧客の大半は、情報を吸っています。「美味しい」ことよりも「美味しいと思わせる」ことの方がはるかに大事なのです。

このような問題に直面したとき、どうしますか?
そう、機材を育ててしまえばいいんです。


「育てる」効用

批判もあるかとは思いますが、機材を育てることに関する個人的な見解を述べると、「自己満」だと思います。味が変わるとかいいますが、煙が薄くなってもほのかに味を感じるようになる程度の些細な変化だと思ってます。少なくとも僕には分かりません。
しかしシーシャの味の違いが分からないビギナー層は、「育てる」ことによる違いが判ってしまうのです。なぜでしょう。

文字情報だけで「こだわり」が伝わる

「純日本製」と書かれた工業製品を見て、なんとなく品質が良さそうだなと思う方は多いはずです。それと似た現象が、「機材を育てる」を謳ったシーシャで発生します。
先程も述べたように、機材を育てるにはある程度の手間と費用がかかります。そしてこの「こだわり」はシーシャの仕組みを理解している人であれば、文字情報だけで容易に伝わります。これだけこだわっているなら、きっとシーシャも美味しいんだろうなと。この先入観が来店動機となります。
尤も、シーシャの仕組みを全く理解していない人にとっては「育てる」と言ってもなんのことかさっぱり分からないと思いますが、そこはこう、ゴリ押しましょう。

味以外の付加価値を提供できる

シーシャは情報です。何も言わずに出されたシーシャよりも、こだわりなどのバックグラウンドを説明しながら出されたシーシャの方がより「美味しそう」と感じます。感受性豊かなお客さんであれば「育てている」という情報だけで「美味しい」と感じるかもしれません。
またフレーバーごとに専用の機材を用いるため他のお客さんに提供中の場合吸えないというプレミア感も重要です。育てているという情報と、店にひとつしかない専用機材で吸っているという特別感で、より一層「美味しい」と思わせることが可能になる。この体験がリピート要因となります。
まぁ育てたところで作ったシーシャが美味しくなかったらなんの意味もないんですけど、なんとかなります。知らんけど。


「育てる」は広告であり接客である

ここまで、機材を育てていることをアピールすることによって来店に繋がる上に顧客満足度も上がるという話をしてきました。
もはや機材を育てない理由などありません!今すぐAliexpressで100円のターキッシュボウルを買いましょう!

家でも機材を育てたい?そんなことよりまず煙の質を上げましょう。


最後に

いかがでしたか?


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