Air shishaってあるじゃん?あれ流行ると思うんだよね

シーシャ業界に突如として現れた持ち運びシーシャAir mini。「ただの使い捨てVAPEじゃん」と業界内で揶揄されながらも着々と取扱店を増やし、満を持して新製品を発表した。その名も、Air shisha。持ち運びシーシャを持ち運べない形にするってどういうこと?そもそもシーシャじゃなくない?

でもこれ、僕は革命的なプロダクトだと思うんですよね。

※この記事はシーシャバー経営者による結構長めの独り言です。データに基づくものではなく、ただの感想であることはご了承ください。



自己紹介

六本木にあるシーシャバー、B-Side Shisha Bar店主のSoheiです。「シーシャは誰でも美味しく作れる」をモットーに、シンプルで再現性の高いシーシャのレシピを日々模索しています。
欧米のシーシャ文化に基づいたシーシャの作り方や機材・フレーバーのレビュー、シーシャに関する豆知識なんかを発信していくのでよろしければフォローをお願いします。


持ち運びシーシャの顧客ターゲットは君たちではない

持ち運びシーシャはVAPEとシーシャの違いが分かってしまう君たちに向けて販売されている製品ではありません。シーシャのことをよく分かっていない、いわゆるマス層に向けて販売されています。

マス層というのはどういう人たちのことを指すのかというと、
・シーシャの仕組みを知らない
・ニコチンに発がん性があると思っている
・「煙がいっぱい出るやつ = シーシャ」だと思っている
・コカボムでピラミッドを、クライナーでハートを作る
・😂の絵文字を必ず3個セットで使う
このような人たちです。

そもそも、Air miniは使い捨てVAPEとして考えるとあまりいい製品とは言えません。400円で350パフできるような製品もある中、1200円で300パフ。コスパが悪すぎます。ただ他の製品と決定的に違ったのが、ブランディングでした。どう優れていたのでしょうか?

「持ち運びシーシャ」というキャッチコピー

業界では賛否両論というか否定的な意見ばかりであった「持ち運びシーシャ」という謳い文句ですが、ブランディングとしては賢いと思います。というのも、これによりマス層はVAPEとシーシャの区別が付かなくなりました。あまりシーシャに詳しくない層、特にシーシャを吸ったことのない層が「VAPE = シーシャ」と誤解するようになりました。
シーシャ業界としては良いことではありませんが、後に解説するAir shishaを販売する上で有利な土壌を築き上げました。

シーシャ専門店で販売するという戦略

Air miniに限らず、持ち運びシーシャのメーカーは取扱店の拡大としてシーシャ専門店に営業をかけました。シーシャ専門店を経営する方の中には、持ち運びシーシャの営業にうんざりした経験のある方も多いことでしょう。
そんな中でも、一部の店舗は持ち運びシーシャを店頭で販売することに協力しました。シーシャ専門店で購入できることにより、さらに上記の「VAPE = シーシャ」「煙がいっぱい出るやつ = シーシャ」という認識に拍車をかけました。

これらのブランディングで築いた土壌の上、満を持して発売するのがAir shishaというわけです。


Air shishaとは

Air shishaは、持ち運びシーシャを据え置き型にしたものです。いや持ち運べねぇじゃん。要するに、据え置き型VAPEです。
据え置き型VAPEというものも既に存在します。下記の製品はシーシャと連結できるタイプです。

従来の据え置き型VAPEと比べて、Air shishaにはどのような強みがあるのでしょうか?家庭用として見ると、カートリッジ式で手入れが楽であるくらいしかメリットはありません。しかし業務用製品として考えると、シーシャ業界の常識を変えてしまうかもしれない強烈なゲームチェンジャーなのです


Air shishaの強み

Air shishaを店舗に導入することを考えてみましょう。そうすると、VAPEとシーシャの区別が付いていないマス層をターゲットにするのであればメリットしかないことが分かります。

人件費が節約できる

専門店で提供されるようなクオリティの高いシーシャを提供することは簡単ではありません。シーシャの仕組みを十分に理解し、訓練を積む必要があります。研修の過程で時給が発生しますし、研修に使ったシーシャフレーバーなどの原価も経営者が負担することになります。
またシーシャの煙を維持するためには炭替えなどのメンテナンスが必要であり、人的リソースを消費します。

それに対してAir shishaであればどうでしょう。カートリッジを補充してボタンを押せば煙(厳密には蒸気)が発生するため、少なくともシーシャに関する研修が必要ありません。さらには炭替えなどのメンテナンスも不要であるため、常駐スタッフが少なく済みます。空いた手間でインスタ映えドリンクなんかを作ることもできます。

提供がスピーディー

上述の通り、Air shishaはシーシャよりはるかに少ない手間で提供することができます。オペレーション的に優秀なだけではなく、顧客の立場で見ても注文してすぐに吸えることは魅力的でしょう。
Air shishaに慣れてしまった人は、提供に20分も30分もかかるシーシャ専門店など行かなくなるでしょう。

ノンニコチンである

非喫煙者の大半はニコチンに対してネガティブな印象を持っています。ノンニコチンフレーバーなんかもありますが、基本的にシーシャにはニコチンが含まれます。また、ノンニコチンフレーバーを吸っていても周囲にニコチン入りシーシャを吸っている客がいれば間接的にニコチンを摂取してしまうことになります。

それに対してAir shishaは全てノンニコチンです。ノンニコチンを謳い文句に店舗を宣伝することで、ニコチンに対して悪い印象を持っているマス層を取り込むことが可能です。さらに店内を完全禁煙にしてしまえば副流煙によってニコチンを摂取してしまうこともありません

味のばらつきが発生しない

シーシャの味は、作り方や吸い方に左右されます。そこがシーシャの面白いところではありますが、シーシャに詳しくない人にとっては店選びに迷ってしまう要因になります。

しかしAir shishaであれば、誰が作っても同じ味に仕上がります。シーシャに興味のない人にとってはそれがVAPEであるかシーシャであるかなんてどうてもいいのです。Air shisha取扱店であれば安定した味が吸える。行ったことのないシーシャ専門店で博打を打つよりよっぽど安心でしょう。

火事や酸欠などのリスクがない

Air shishaはシーシャと違い、炭を使用しません。炭を落下させて火事になったり物損が生じたりする心配も、お客さんが機材を倒して火傷してしまう心配もありません。さらに、酸欠対策で換気に神経質になる必要もありません。

たばこ販売免許が必要ない

Air shishaはシーシャではない、すなわちたばこではありません。なので、開業にあたり煩雑な手続きでもってたばこ販売免許を取得する必要もなければ、喫煙目的店のステッカーを貼る必要もありません。モラル的に微妙ですが、未成年を店内に入れることも禁止はされていません(違ったらごめんなさい)。
つまりは「シーシャバー」を名乗るハードルが極端に下がります。「客単価アップのためにシーシャを置きたいけどやり方が分からない」という既存のバーやクラブは、Air shishaを置きさえすればいいのです。

増税を気にせずに済む

シーシャはたばこである以上、たばこ税増税によって原価が今後も上がっていくことは避けられません。法改正によって喫煙目的店としての営業が不可能になってしまうという最悪の想定も考えられます。

その点Air shishaはたばこ税とは無関係。1台あたりの原価は1500円(定価)と割高ですが、原価高騰リスクが小さい上に前述のメリットを考えると安いものでしょう。増税がさらに進み、シーシャフレーバーの原価がAir shishaを上回ったとき、それでもシーシャを提供することにこだわりますか?


シーシャ業界の未来

ここまで、Air shishaのインパクトについて述べました。まだ普及しているとは言えませんが、もしこれが文化として浸透したら業界はどうなるでしょうか?僕なりの見解をまとめました。

ブームは港区から始まる

港区、特に六本木は税金対策の会員制バーが乱立する地域です。その会員制バー開業の流れが、最近はシーシャバーになってきているように感じます。流行りに乗って開業したシーシャバーが固定客を掴めずに失敗する実例をいくつか見ていますが、これらは軒並みAir shisha取扱店に置き換わるのではないかと思います。
またシーシャ導入に興味のある既存のバーにもAir shishaが置かれ始め、それらも「シーシャバー」を名乗り始めるでしょう。乱立するなんちゃってシーシャバーに埋もれぬように我々シーシャ専門店は戦っていかねばなりません。

巨大資本がチェーン化したら……?

巨大資本がAir shisha取扱店を開店し、チェーン化したらどうなるでしょう。マーケティング戦略に優れ、ノンニコチンで大衆訴求性の高い店舗が全国各地に出来上がります。シーシャ専門店の中には個人店も多いですが、他店との差別化を図れない小規模店舗は廃業に追い込まれるでしょう
想像してみてください。資本力が桁違いで、大衆を取り込める、クオリティの安定したチェーン店に、駅からのアクセス性とシーシャブームだけでなんとか乗り切ってきた個人店が太刀打ちできますか?


我々はどうするべきか

答えは2つです。
ひとつは、差別化を図ること。据え置きVAPEが普及してしまえば、マス層にとってシーシャなんてただのニコチンでしかありません。VAPEでは出せない味やこだわり、小規模店舗ならではの居心地や接客、高級感など、差別化をしなくてはなりません。
もうひとつは、潔く諦めること。ノンニコチンの波に乗るか、店を畳むかのどちらかでしょう。

まぁここまで述べてきたのは最悪のシナリオではありますが、このような事態になってもおかしくはないかなと思います。尤も、ブームにあやかってシーシャを置くだけでシーシャ専門店としてかろうじて成り立っていたこれまでが異常だっただけだとは思いますが。

という経営者の独り言でした。このタイミングでAir shisha専門の飲食店を開業するという人がいたら、僕は「賢い」と思います。僕は多分やりませんが。
今回の話について、ご意見あればぜひお聞かせください。ただの長い独り言に最後までお付き合いいただきありがとうございました。


最後に

いかがでしたか?

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