救急・集中治療医がMHA取得を目指す

この記事は九州大学医療経営・管理学専攻22期 Advent Calendar 2022 18日目の記事です.

九州大学医療経営・管理学専攻22期生のSOです.私は現在,高度救命救急センターを有する中国地方の某大学病院で救急・集中治療医としての勤務を継続しながら,九州大学医療経営・管理学専攻(以下,本専攻)の1年生として学んでいます.この記事では,私が本専攻を受験した動機や入学試験のこと,そして入学してからの9ヶ月間について簡単にご紹介します.

九州大学医療経営・管理学専攻への入学を志した理由

私が本専攻への進学を考え始めたきっかけは,2021年4月に集中治療病棟(3部署からなる合計32床)の病棟医長を拝命したことです.以降,直接的な患者診療以外の業務に広く関わるようになり,各部署の看護師長はもちろん,リハビリテーション部門や放射線部門,事務部門など他部門のスタッフ,外部業者さんなど,医師以外の方々(その多くは管理職の立場)とやり取りをすることが圧倒的に増えました.

しかし,医療安全や医療経営,医療の質の評価といった臨床以外の知識が圧倒的に不足している私は,そういった方々と共通言語で話せず,その都度かじった断片的な知識や自分の臨床医としての経験則をもとに,何とかその場をやり過ごす日々でした.

また,様々な業務改善策を考えてはみたものの,大学病院という巨大組織で物事を進めるにあたり熱意だけでは当然うまく行きません.現状の問題点を客観的な指標で示したり,医療安全面や経営面でのメリットを具体的に示したりする必要があるのは当然なのですが,そういった能力も不足していることを痛感しました.

このまま年齢を重ねて更に上の立場になっていく前に,臨床以外の事を幅広く学び直す必要があると強く思い,大学院への進学以外も含め様々な選択肢を検討しました.そして,本専攻はその名の通り医療に特化した経営や管理を重点的に学べることや,自宅から新幹線で通学可能な範囲でもあったことから,受験を決意しました.

ちなみに私は2021年5月に大学院の博士課程を修了したばかりでしたので,また別の大学院に行きたいという希望を職場の上司や家族に伝えることを少々ためらったのですが,快くOKをもらうことができ,大変感謝しています.

入学試験

私は2022年1月に行われた後期試験を受験しました.入学試験に向けて,前年度の過去問を取り寄せて解いたり,日経メディカル Onlineやm3.comなどのウェブサイトで配信される記事のうち医療経営,診療報酬,統計学などに関連するものには意識して目を通したり,病院経営の本を買って読んでみたりしました.しかし,まさに付け焼き刃の知識なので試験官の先生方にはすぐにバレるだろうなと思い,そもそも知らないことが多いので学びに来ているというのが前提なのだから,なぜ自分が本専攻で学びたいか,そして学んだことをどう生かしていきたいかをとにかく思い切り伝えるしかないか,と試験直前には開き直っていました(笑).

筆記試験は制限時間いっぱいまで解答を続けましたが全部は解き終わらず,これは落ちたかもしれないと思いながら午後の面接試験に臨みました.面接試験では様々な試問を受けましたが,自分の経験に基づく問題意識や入学に向けた熱い思いを伝えられたのではないかと思います.後日合格通知を頂いた時はホッとしたというのが正直なところでした.

同期メンバー・講義・ゼミ

本専攻の22期生は合計18名です.初日のオリエンテーションで初めて同期のメンバーと顔を合わせ,自己紹介でそれぞれのバックグラウンドや志望動機を聞き,皆さんの意識の高さに圧倒されたことを覚えています.是非,メンバーそれぞれが書いた記事を読んでみて下さい.

私の場合,前期の講義は火曜日のみでしたが,後期はそれに加えて木曜日の午後にも受講しています.この他,土日に集中講義が行われることもあります.一部の集中講義以外は基本的にオンラインで行われており,直接先生方や同期の皆さんと直接会えないというデメリットはありますが,仕事をしながら毎週福岡まで通学する金銭的・肉体的負担を考えると,私にとってはありがたい面もあります.

具体的な講義の内容については他のメンバーも言及しているので詳細は割愛しますが,専門職大学院だけあって実務に直結する内容が目白押しで,興味深いものばかりです.自分がいかに何も知らずにいたか,知ろうとしていなかったかを改めて感じます.医学部や博士課程の時の私はどちらかと言うと講義をサボりがちな学生でしたので,学校の講義にこれほど真剣に参加したのは初めてです(笑).

講義はオンラインとはいえグループワークも多いことや,前期はオンライン飲み会も2回開催されたことなどで,早いうちから同期のメンバーとつながる機会を持つことが出来ました.職種も様々であり,自分が持っていなかった新たな視点を学ぶ機会にもなっています.

後期の集中講義は週末に対面で行われるため,初日のオリエンテーション以来初めて同期の皆さんと顔を合わせました.普段テレビで見ていた芸能人に会ったような気分でしたが,お酒の席も共にして,相互の理解や絆を深めることもできました.

ゼミでの研究はまだ動き出していないのですが,私は松尾先生のゼミに所属しており22期生は私1人だけなので,密にご指導頂けるものと期待しています.先日は松尾先生とゼミの先輩方が一同に会して歓迎会を開いて下さったのですが,わざわざ沖縄や鹿児島から日帰りで駆けつけてくださった先輩もいて,何とも温かい気持ちになりました.

仕事との両立

私の勤務先はシフト制になっているため,講義のある平日には休み希望を出してその分は土日祝日に勤務したり,それでも足りない時は年次有給休暇を消費したりして何とかやり繰りしています.

予習・復習や試験勉強,レポート作成に充てる時間の確保に苦慮しているのが正直なところですが,車で移動中に講義の動画を流すなどして,少しでも補っています(もちろん,運転中なので音だけにしています).また,夏に家族で沖縄旅行に行った時はレポートの締め切りが迫っていたので,行き帰りの飛行機の中だけでなく,家族がホテルのプールで遊んでいる間にも,部屋でレポート作成に取り組んだこともありました.

職場と家族への感謝

病棟医長という立場でありながら平日に不在のことが多く,職場の同僚には相当な負担・迷惑をかけていることは間違いないのですが,こうして送り出してもらっていることは本当にありがたく,私の学びを必ず業務に役立てなくてはと身の引き締まる思いです.

また,私には小学生の子どもが3人いるのですが,私が不在がちな分,妻には子育ての負担をかけてしまっていますし,講義やレポートに追われて休日にどこにも遊びに連れて行けないことを申し訳なく思っています.それでも,私が自宅で講義を受けている時は子どもたちも静かに過ごしてくれるなど色々と協力してくれていて,本当に感謝しています.

終わりに

本専攻での大学院生活もあっという間に1年近くが過ぎました.引き続き,講義,研究,そして同期のメンバーや先生方・先輩方との交流を通じて,本専攻で学びを深めていけることが楽しみです.ここまでは知識のインプットが中心でしたので,今後は自分の中で知識を再構築し,職場の業務改善や研究・教育などの形でどんどんアウトプットしてくことに力を入れていきたいと考えています.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?