妄想(もし貴女と私が一緒に暮らしたら…)

「ご飯まだかい?」「もう出来たわよ。」貴女はテーブルの上を片付け、食事の用意をした。私はそれぞれの品を味わった。「どう?」「うん、美味しいよ。」「そう、良かった。」貴女は満足そうに食事を始めた。「もういいの?」「うん、満腹だ。」「私、もう少し食べるわ。」貴女は黙って食事を続けた。私はそれを心地良く眺めながらテレビのスイッチを入れた。「テレビ、面白い?」「もういいのかい?」「うん、後片付けするわ。」「手伝おうか?」「いいわよ。テレビでも観てて。」私はタバコに火をつけ、何気なくテレビを見続けた。後片付けを終えた貴女はコタツに入り編み物を始めた。私はテレビを消し、座布団を枕にして横になり、時折貴女を眺めた。貴女も時折私を見てはまた編み物を続けた。「もう寝ようか?」私が言うと「うん、でもお風呂は?」「明日でいいよ」「ダメよ。折角沸かしたんだから。」「でも眠いなぁ。」「ダメ。私が洗ってあげるから入りなさい。」「はい、はい。」こういう所ではいつも貴女に負けてしまう、と思いながらもそう悪い感じのしない私であった。「脱がせてあげるわ。」「いいよ、自分でやるから。」「眠いんでしょ。じっとしてなさい。」「君も脱がせてあげようか?」「いいの。私は自分で出来るから。さぁ、先に入りなさい。」湯船に入っていると貴女が風呂場の戸を開けて入って来た。何気なく貴女を見ていると「女性と一緒に入る時はあまりジロジロ見るもんじゃないわよ。」と微笑みながら言った。「ゴメン。」私は後ろを向いた。「無理して後ろを向くこともないのよ。見てもいいわよ。」優しく言った。「私も入れて。」「じゃあ、僕は出るよ。」「一緒に入りましょうよ。」「でも少し小さ過ぎないかなぁ?」「何とか入れるわよ。」貴女は湯船に入って来た。湯がどっと溢れた。「ネ!入れたでしょ。」「でもキツくないかい?」「大丈夫。貴方は?」「うん、大丈夫だ。」着せ替え人形のように風呂に入れられ、体を洗われ、風呂から上がった。「さぁ、寝ようか。」「ちょっとタバコでも吸ってて。お布団敷くから。」私がくわえたタバコに火を付けると布団を敷き始めた。「さぁ、坊や。いいわよ。」貴女はおどけて言った。他の女性とはどこかちがっているなぁ、と思いながら、火を消して布団に潜り込んだ。貴女は電気を消して一つ布団の中に入って来た。「おやすみなさい。」「おやすみ。」貴女はお休みの口づけを求めた。私もそれに応じて目をつぶった。外ではまだ冷たい北風の音がピューッと聞こえる冬の夜であった。

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