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アオアシカツオドリの話

この世界には「作用・反作用の法則」があります。作用があれば、必ずどこかでそれに相応しい反作用が起こるもの。


アオアシカツオドリはガラパゴス諸島に生息する、足の青い鳥です。
15年ほど前でしょうか、記憶が定かではありませんが、テレビ番組でこの鳥の生態系が放送されていました。

この鳥は足が青ければ青いほど栄養状態が良く、足の青さが狩りの巧さであり、つまり人間でいうと仕事ができるということ。
収入とルックスが「足の青さ」に現れるようです。

オスはメスの前で足踏みの「求愛ダンス」をしますが、オスは足が青ければ青いほどメスにモテます。

番組の中で、ある一羽のアオアシカツオドリが求愛ダンスをしているシーンがありました。

彼の足の色は他の鳥と比べてかなり薄く、白に近い色でした。
なのでもちろんメスは彼に興味はありません。
彼は何度もメスの前で求愛ダンスを披露しますが、どのメスにも逃げられてしまいます。

「どう考えても無理でしょ?」

と、明らかに恋は成就しないとわかる足の色の彼があまりに哀れに思えました。
そしてやはり、その放送の中で彼がメスと結ばれることはありませんでした。

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その後、私の頭の中には彼のダンスシーンがずっと残り、日々の生活の中でふと彼の求愛ダンスを思い出すことが何度もありました。

何かに挑戦しようとし怖くなった時、また、自分のやっていることに意味が見いだせなく何もかもが無駄に思えた時、彼のダンスが頭の中で再生されます。

そしてたくさんの気付きを重ねていくうち、やりたいことを何も疑わず行動することの大切さが段々と分かってきて、その時哀れなほど無駄に思えた、彼の疑うことなく行動に移す姿勢が輝かしく思えてきました。

そしていつしか彼のダンスは私の中で「行動すること」のシンボルとなりました。

番組放送の中で彼がメスと結ばれることはありませんでしたが、その後どうなったのでしょう。
もしかしたら、誰とも結ばれなかったのかも知れません。

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この世界には「作用・反作用の法則」があります。作用があれば、必ずどこかでそれに相応しい反作用が起こるもの。どんなに意味がないと思えることでさえ。

あの時どのメスの心も動かすことができなかった彼のダンスは時間と距離を飛び越えて、今でも私という人間の心を動かし続けています。





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