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優れたコンテンツはバズるに負けるのか? 「可処分時間・争奪戦」とアテンションエコノミーの本質を読み解く

今さら聞けない「アテンション・エコノミー」について動画解説しました。併せてごらんください。


1:「可処分時間・争奪戦」で負ける旧メディア。「注目・争奪戦」で争うネット業界


テレビ時代は視聴率によってどのくらい興味を持たれているか目安としてました。しかしスマホの登場でSNSが広まると情報発信は誰にでも出来ることになりテレビはそのうちの一つになってしまいました。みんな有限なのはチャンネルより時間にシフトしたと気がついたのです。可処分時間・争奪戦は『如何に知ってもらうか』というSNS特性をマスターした人から成果に繋げていきました。ゲームチェンジが起きたわけです。

残念ながら新ゲームでは旧メディアの蓄積されたノウハウが活きません。むしろ成功体験が負の遺産になってしまっています。2020年にはテレビ広告予算がネット広告と地位を逆転したのもおかしくありません。可処分時間・争奪戦で勝利したSNSプラットフォーマーは「注目・争奪戦」で凌ぎを削っています。【如何に使ってもらうか】とか【長く滞在してもらうか】とか【何回も使ってもらうか】で競いあってます。心理学・認知学・脳科学をマスターしたUI/UXデザイナーが周到にサービスを作っています。

この状況は、刀で戦っていた戦国時代から鉄砲の集団戦に変化した時期に似ています。より遠くへより早くよりチカラを及ぼす。刀から鉄砲への変化はテクノロジーで生じています。テレビからSNSへのパワーシフトはゲームチェンジでルールが変わったのだと思えば理解しやすいと思います。

①:戦闘方法の変化(ゲームチェンジ)・・・刀の時代は「こちらは●●藩の筆頭家老▲▲であ~る!勝負いたせぇ!」と名乗りをあげていましたが、鉄砲や機関銃では卑怯と言われようが名乗りません。そんな事を言ってる場合ではありません。情報発信に多大な設備投資がなければテレビ放送はできませんでしたが、YoutubeはノートPCがあれば情報発信できるようになりました。
②:戦闘様式の変化(スキルの変化)・・・刀の使い方と、機関銃や大砲の使い方は違います。同様にテレビ番組の作り方とSNSコンテンツの作り方も違います。
③:勝ち方そのものの変化(価値観の変化)・・・刀の時代には「えい!えい!おー!」と勝どきの声をあげて周囲に勝利宣言しましたが、無線が発達して情報共有の方法も変わり、戦場にいても勝利をCNNで見ることさえあります。テレビ時代は視聴率が指標でしたが、それは情報の一つに降格してしまったのでアテンション(注目=視聴数×滞在時間)に変化しました。

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SNSプラットフォーマーが最も見ている指標は滞在時間(アテンション・注目)で視聴数ではありません。ユーザーを集めて、リテンションされるかは興味関心を示してもらって深く認識した情報です。アテンションが高ければ収益化しやすくなるからです。例えばYoutubeに表示されるおススメ動画も滞在時間にフォーカスしてます。実際に大手SNSプラットフォーマーの時価総額がアテンションと相関しているのがわかります。

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引用:How Gary Vaynerchuk Built a Marketing Empire With 19 Million Fans

優れたコンテンツかはアテンションによってコンピューターにより自動的に判断されます。この「場所」を支配しているのがプラットフォーマーの強みになっています。今までは消費者に一番ちかいコンビニが消費のカギを握っていましたが、消費者の脳に一番ちかいSNSが行動のカギをを握るようになったのです。SNSからすれば優れたコンテンツかどうかは有名大企業や個人の違いや学歴や職歴も関係ないのです。

アテンション・エコノミーとは「お金よりも時間の方が有限なので価値があるようになる」そして誰でもが情報発信できると情報大洪水が起きるので「注目を集めた情報」にパワーがシフトする。ということなのです。

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これをSNSに踊らされているようで気持ち悪いと感じたならあなたはまともです。しかし無料で使えるSNSをどう使うかは別だと思います。SNSのやり口や特性をよく学びツールとして使いこなす事が大事です。歴史から学ぶことが大事なのだと思います。

※1971年アメリカの経済学者ハーバート・サイモン(Herbert A. Simon)が情報過多社会におけるアテンション獲得の重要性を提唱。その後1997年にアメリカの社会学者マイケル・ゴールドハーバー(Michael H. Goldhaber)により情報爆発社会において仕事のみならず趣味やプライベート情報のアテンション獲得がビジネスになり、お金の経済からアテンションに基づく経済へ移行すると予測した。この状況を「アテンション・エコノミー」と名付けたトーマス・ダベンポート(Thomas H. Davenport)とジョン・ベック(John C. Beck)の書籍『アテンション!(Attention Economy)』2001年によって普及した。


2:『バズる・注目される』は消費される。目立っただけで成果には繋がらない。

Facebookでいいね👍が沢山ついてもお店に来てもらえない。フォロワー数が多ければ良いかと言うと、必ずしも成果に結びつかない事がわかるでしょう。フォロワー数が影響するのは『フォローするに足るか拙速に判断する人』が多いので、そのような人にフォローされやすくなる事です。どのSNSでもバズったコンテンツは優れた読み物とか優れた動画とは限りません。バズったコンテンツでフォロワーが増える事はありません。脊髄反射的に反応しただけですから。それは優れたコンテンツではないのです。アテンションエコノミー構造をnoteの中で起きている事で観察してみると、読まれるコンテンツがどのような傾向があるかわかります。「家族や友人の難病」「別れ」や「死」です。つまり「心の痛み」が描かれていると共感されやすい事が判明しています。コレはケータイ小説7つの大罪と呼ばれたコンテンツの作り方に似ています。私の周囲ではこれを「感情ポルノ様式」と揶揄しています。感情を揺さぶる手法を使って読ませるあざとさが読み解けるからです。これは文章を沢山読むと判別できるようになりました。私の場合はSNSレーダーチャート診断で1万本以上のnoteを(好きでもない記事を)読むことで鍛えられたのだと思います。

※ケータイ小説7つの大罪とは・・・レイプ・妊娠・薬物・堕胎・不治の病・死・真実の愛のこと。不遇を我慢すればいつかは真実の愛は訪れる。という不幸な出来事はゲーム・リセットされて幸せになれる的な小説のこと。コンデンスミルクのように濃縮された物語展開なのでコンデンス小説と呼ばれた。ケータイ小説は2000年代初頭に流行して書籍化・映画化された。赤い糸、恋空など。

感情ポルノ様式が、本当なのか恣意的なのか誰にもわかりません。その人の記事を沢山読まなければ本当なのか判断できないからです。逆に言えば、沢山noteを書いてる人は毎回嘘を重ねてない限り、行間から思考様式が滲み出ますのである程度判断できます。まぁ100%ではありませんが。しかし時間が大事な時代にそのひとのパーソナリティが把握できるのは大きな意味があります。これは優れた文章を評価してもらう「情報発信の基礎・基盤」と言えます。

しかし感情コントロールに長けた文章を書くと読まれるようになるのは事実です。ここでいう「読まれる文章」とはシェアされる文章のことです。優れた文章ではありません。この辺に違和感が湧くのは当然ですがSNSプラットフォームには関係ありません。だからそこを感情ではなくゲーム・ルールとして認識する工夫が必要になるのです。まともな大人ほど新しいゲームに適合するのは難しいし、SNSネイティブほど上手に使いこなせなくても当然だと言えるでしょう。でもココで諦めてしまう人が多いのも事実です。SNSは無料で使える便利なツールです。しかしそれを上手に使うには自分のゴールはどこなのか?SNSを利用したゴールイメージをしっかり持つことが大事なのだと思います。インフルエンサーになりたいのか?それとも新規顧客とつながりたいからなのか。目的と手段が入れ替わりがちなのがSNSの落とし穴だからです。

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3:記憶・争奪戦で残存者利益を得る

優れた文章は記憶に残る文章です。記憶に残ると、時間はかかりますが必ず読まれるようになります。ただ自分の希望するタイミングやスケジュールで読まれないだけです。特にせっかちな人には苦痛でしょう。可処分時間争奪戦や、注目争奪戦で勝とうとすると、SNSネイティブとの競走に勝てる能力を得なければ「望む成果」には繋がらないでしょう。もしインフルエンサーになりたくてSNSマッチョになる覚悟があるならば頑張れば良いかと思います。

残存者利益とは、周りが死に絶えて生き残ることで得られる利益ですが、コレはSNSにも当てはまります。そんな気長にで地道なことは出来ないと思われるかもしれませんが、その効果は想像よりも早いのが実感です。SNS時間はリアル社会の時間より数倍早いからです。拙速に考えず熟慮して情報発信を考えることが、SNS情報発信を成果に結びつける技だと思います。しかしそのためには自助努力で出来ることを全てやる事が大事です。なーんとなく気分のままSNSをやっていても成果が出ないのは当たり前です。努力も工夫もしないと成果が出ないのはリアル社会と変わらないと思います。試しに「情報発信学」でググってみてください。私の書いたnoteが出現するはずです。

もちろんセミナー告知や新サービス情報を伝える場合はそんなのん気な事は言ってられません。その場合には「協調拡散」などSNS特性を上手に使いこなすスキルが必要になります。フォロワー数が300人でもチーム連携して束になれば拡散は意図的に引き起こせます。集客に繋げることは可能です。しかし大事なのは「知ってもらう」ことに加えて「深く共感して記憶に残る」ことです。「セミナーに来てもらう」「自分のサービス・商品を買ってもらう」にはココロに響かなければ、行動変容につながらないからです。情報とは「情けに報いる」と書きます。ハートのこもった文章を書くことが大事だと思います。

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世間には「〇ヶ月でフォロワー数を〇〇万人に増やしました」というセミナーはあっても「自分の仕事や興味関心のためにSNSをどう使うか」を教えてくれる所はありません。SNSを自分の仕事のためにどう使うか、ゴール戦略からどうつかえばいいかを教えてくれる学校はなかなか見当たりません。というわけでSNSコーチングをはじめましたが、実践スキルにはSNSの使われ方を社会構造やリテラシーから読み解くことも大事だと感じています。SNSをビジネスに活かしたい方へ少しでもお役に立てたら嬉しいです。

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情報発信学・ニュースレター・ほぼ毎週月曜日発行しています。こちらからどうぞ。⇒ https://junikematsu.substack.com/


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