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ADRENA-LINEから学べること

個人的ストライクゾーンのゲームをたくさん作るフリゲ作家Daniel Linssenがきのう新作をリリース、その名も「ADRENA-LINE(アドレナライン)」。これをちょっと遊んだんで、いいなってとことか思ったことをさらっと書いてみる。 


基本が単純orわかりやすいこと(Easy to learn)

操作はWASD/Dパッドで自機を上下左右に移動させるのみ。
自機は直線を描きながら(線はゲームに直接関係ない)入力した方向に進み、壁に突き当たったところでふたたび操作可能となる。


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まんまこういうやつ。これはポケモン?らしいけど、Undertaleとかにもありましたよね

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これが実際のがめん

こうして、ゴールの位置まで到達したらクリア。ちょっと頭を使うが、実に単純なパズルだ。

で、このシンプルさを損なうことなくひねりがいくつか加えられている。結果、スナック感覚で遊べるめっちゃ面白いアクションゲームになっててさすがだった。
時間制限付きの小さなステージを次々クリアして、何個目までいけるか競うゲームになっているのだ。


ひねりとして、リアルタイム性を加えること

制限時間はだんだん短くなっていく、最初のステージは10秒以上だがすぐ数秒に(当然、最高難度で頭打ちではあるが)。時間切れになったらアウトで、それまでにクリアできた面の数が点数となる。
基本となるメカニクスはともすれば簡単なパズルだ。なんなら適当に動かしてても割とすぐ行けるかもしれない。しかし、そこに数秒という制限時間を設けることでとても忙しいアクションゲームのようになる。

単純な非リアルタイム性のメカニクスにリアルタイム性を導入する点ではネクロダンサーとかに近い。当然このようなアクションゲームみたいになる組み合わせもあるし、時間という要素との相乗効果で戦略性が高まっているような作品もある。リアルタイム性は使いよう。リアルタイム性にしろ物理法則にしろ、複雑な性質を持ちながらも現実にあたりまえに存在する法則を織り込むことは説明不要という点でゲーム性の拡張に適している。

次々あらわれるステージを切れ目なくこなしていく本作。「ちょっと頭を使う」を短いスパンでし続けることになるので、ADRENALINE全開で集中力の限界に挑むのだ。



上達の余地をうみだすこと(Hard to master)

慣れてくると、仕様として「壁に突き当たる前でもキーを先に入力すれば一気に進んでから方向転換してくれる」のに気づく。
つまり、一瞬先を読んでおくことでその一瞬を短縮することができるということ。これを連続でできれば高速タイピングのごとく十字キーを入れ、ゴールまで直行できるだろう。当然頭もそれに追いついていなければ、間違った道を高速で行ってしまうだけの話だ。

そうならないためには「氷の床パズル」がうまくないといけないが、このゲームに出てくるパズルはある程度パターン化されているようだ。とにかくやりこんで頭にたたきこんでいったほうが有利。

パッと見でゴールへの経路を導き出したら、自機の到達するであろう位置を把握して次の一手を先行入力する。この一瞬の作業を脳みそフル回転でぶっ通す。これはかなり慣れないとできない芸当で、本作に極めがいを与えている。

あとうまい人はしくじったときに通った跡を見るようにしてると思う。跡の線(タイトルにあるLINE)ってそのくらいにしかつかわないよな。。


繰り返すこと、組み合わせること

パズルゲームといえばだんだん難易度が上がっていくのが定石のように見えるし実際そういうのがおもしろい。しかしゲームジャムに参加したゲーム開発者という目線に立ってみると、そんな考え抜いたむずいパズルを作っている余裕はなさそうだ。

そこで、本作は前述してきたように繰り返しの中で上達を味わうスコアアタックゲームにしたのだと思う。それに、ステージはメカニクス上パズルゲームなのに簡単なものの組み合わせだけで完成している。

組み合わせと書いたが、説明ページによると「procedural generation」されているみたいだ(Twitterでも作者によりit`s proc gen!との言及があったが、多分それのことだとおもう)。つまりSpelunkeyなどのように、手動で作った断片的要素をランダムで組み合わせて生成している。
適度なランダム性があるので、暗記にも利点はあるけどちゃんと毎回頭を使わなきゃいけないというゲーム性は保持されるということですね。学習とアドリブがともに必要となるわけ。

ローグライクゲームなんかは同じ傾向があり、数値調整こそキモながらそのほかの部分は繰り返しや組み合わせでさまざまな遊びを提供してくれる。昔、不思議のダンジョンは「1000回遊べるRPG」と宣伝されたそうだが、実際同じ開発コストでもほかのRPGに比べてたくさん遊べただろう。


作り手の意図しないプレイをやめさせること(たぶん)

あまりに適当にやってると再起不能のドツボにはめられることもある。

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ちょっとみりゃわかるのに、初手でミスっている


JFXRで作られた効果音も相まって動かしてるだけでも楽しいのだが、レバガチャは罰される。なぜなら適当プレイでもいけるときはいけてしまうし、いけなかったとしても消去法的な解法が狙われるからだ。

レバガチャが得点に大きく左右するのは不公平だし、ミニマルなゲームなだけに作り手の意図、ひいてはおもしろさにかかわる。
作者はこのドツボについて、Twitterにて嵌らないように気を付けてね的なことを言っている。のでこれはまず一ミリでも考えないとだめですよ、ということを表しているんではなかろうか。たぶんね。。。


作り手の意図するプレイに報酬を与えること、あるいは難易度の上昇をそれに利用すること

とにかく、このゲームは簡単なパズルを爆速でクリアしまくってみろというゲームだ。そしてできるだけ早くクリアしていくことこそこのゲームにおける「いいプレイ」にあたるはずだ。

で、そこに難易度上昇のしかたが関わってくる。制限時間がステージ毎にだんだん短くなっていく旨を前述したが、進んだステージ数ではなく経過時間に合わせて制限時間が設定されるのだ。
早くクリアすればするほど難易度が低いまま進行度を稼げる。難易度設定にもリアルタイム性を関連付けることによって、早くクリアしまくること=いいプレイ、楽しいプレイの動機づけを行っている。


でも

あれ、思ったほどハマれんかったかなという感じがある。めっちゃ感覚だけど、なんかあっさりした感じを受けた。本作、ゲームジャム「Ludum Dare 46」にて15時間で作られたそうだ。(こういう海外のゲームジャムやらフリゲサイトにまで目を向けだしたらマジできりがないよね)そのうえフリーゲームだし文句言えないですが。。ちょっと考えてみたところ、あんまり先が見えない/逆に、ある意味見え透いている というのが浮かんできた。

目標設定

先があんま見えないていうのは簡単に言っちゃえば何点目指していいのかわからんってことだったのかなと思う。
アーケードゲーム黎明期だったらスコアアタック自体が楽しみ方の主流だっただろうし、ハイスコアにNPCの名前を書いておくだとか、オンラインランキングがあるとか、「世界戦闘力」だとか、そういうもの。まあ説明文にもlet me know your best score!とか書いてあるし本当に文句は言えないのだが、ひとつうまいことやってるのがあるので紹介する。

同じく好きなインディーゲーム作家、Philipp Stollenmayerのアプリ「1Meter」


皿の上でパスタをくねくね限界まで伸ばしてくだけというADRENA-LINEに勝るとも劣らない単純なゲームなんですが笑、
タイトルのつけ方がパスタにもパスタソースにも関係ない。でも伸ばすという内容を的確に言い当ててつつ、さらに目標設定までする「1Meter」なのが秀逸。
実際はじめのうちは10cmかそこらまでしか行けないのだが、マジでうまくなれれば1mいけそう。このくらい極めたくなるのがいいですよねー。

でもADRENA-LINEもいいタイトル。ゲームの題名がダジャレなのは鉄則ってネクロダンサーだかガンジョンだかの作者が言ってた。

まあその程度。


ヘタクソでもアドレナリンは出る

見え透いているというのは、上達してもゲーム内容はそう変わらないんじゃないかという点。到達できるかは別にして、結局同じ操作をして同じことをやるだけだとわかってしまう、そんな気になる。

というのも、数回もプレイすれば死ぬ間際には「最高難度の制限時間に追われながらせっせとパズルを解きまくる」という体験ができてしまうのだ。その時点でとっくに。これはゲームの構造上仕方ない。
上達したところでスコアが上がり、そのフロー状態が長続きするだけの話だろう。

例えばどんどん難しい技が開放されていくアクションゲームだったり、知らない攻撃をしてくるモンスターがぞくぞく出てきたり。そういった進める楽しさを感じ取れなかったのかな、と思った。

RPGを進めるにしても数値が大きくなるだけでは面白くない。新たな魔法を習得し、新たな敵が登場し、さらなる戦略が求められるようになる。ゲームに限らなくても、ただ予測不能なことが感情を呼び起こしたり、次のステップへと進む原動力となる。

個人が15時間で作ったゲームに対してやたら壮大な話になってしまったので、もう一度「1Meter」を引き合いに出す。
難易度の上昇に頭打ちのあるADRENA-LINEに対し、1Meterにはそれがない。すでに伸ばしたパスタに触ったらアウトだからだ。伸びれば伸びるほど安全地帯は減っていく。90cm級の難しさはまだ想像もつかない。 そんなかんじのお話。

おしまい

ADRENA-LINE、もとはロケットの絵柄だったらしいので、トプ画はロケットのえ(いつもどおり半分以上切れた)

電ファミでも特集があった気がするけど、面ってかくかステージって書くかけっこう迷いますね


良ゲームの宝庫

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