優しい(かわいい)私の彼は佐久間くんって言います ☆10☆

ねえ、何回引くの?
くじは5回までって約束したのに。
「まだ4回だよ。あと1回だけ、1回だけだから」

お散歩の途中、暖かいお茶を買おうと寄り道したコンビニで見つけた○番くじ。
お気に入りのアニメのシリーズで、賞品のパネルをきらきらした目で見つめている。手元にはE賞の賞品が4つ。
「これさ、ほんとにA賞残ってるのかな。ラス1。これに賭ける!」
今度はD賞。
「はぁぁぁ。もう次かその次の人くらいできっとA賞出るよ。人に当たるの見たくないから、もう行こう」
お店に入った時のテンションはどこへ…。すっかりしょげてしまいました。

ちょっと待って、私も1回引いてみたい!
出してしまいました。A賞。
お店を出て大きなフィギュアの箱を彼に託しながら
くじ運はいいのよね。男運無いけど。
そう呟くと
「そんなこと言わないでよ…」瞳からみるみる光が消えていく。
しまった。
ごめんなさい。他意はないの。そんなつもりじゃなかったの。昔、片想いしてた好きだった人から言われたとどめの一言だから。
「片想い…。昔好きだった人…」
やってしまった。どつぼパターンだ。
「どうして?どうしてそんな酷いこと言うの?その…、その好きだった人って、好きだったのは知ってたの?気がついてたの?」

え?そっち?
「そんな、人の気持ち茶化すような事言う人、全然良くない。良くないよ。悲しかったでしょ?」そう言うとそっと頬に触れてきた。

ずっと昔の話で、自分の中で鉄板ネタにして、すっかり消化できていたつもりだった。大好きだった事、気がついてもらえていたはずなのに、告白する前にふられたようなあの瞬間はやっぱりとても悲しかったことが鮮烈に蘇ってきた。

「泣いてもいいから、でも、家まで我慢して?」
ほら、こっちおいで。って言葉にしないのに繋いだ手がおしゃべりしてくる。
「これ、どこに飾ろうかな。ね?どこがいいと思う?」
「夕飯、俺が作ろうかな。ジャスミンライス炊いてー、レトルトカレーあっためてー、カレーバイキング!ふは。これ、作るって言わないか」
いつもより饒舌に話しながら、強く強く、繋いだ手を握ってくる彼。

繊細で思慮深く優しい優しい私の彼は佐久間くんって言います。

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