宮舘涼太くんが演じる松平定信の話(本多力さん演じる猿吉の話でもある)※個人的解釈もあります

昨年のハロルド観劇レポぶりにnoteで文章化してみたいと思うほどの感情が溢れてくる。
フジテレビ木曜10時から放送中の「大奥」の話。その中でも最推しの宮舘涼太くん演じる『松平定信』について。…いやきっかけは涼太くんだけれど、大奥自体にもすっかりハマっている。

時を遡ること2023年11月末。亀梨くん(徳川家治)のライバル役として連ドラ初出演が決定したという嬉しすぎるニュース。しかも架空の人物ではなく、史実としても有名な松平定信。日本史は人生でちょっと避けてきた私は「なんかすごい役もらってるかも!?」「ライバル役!?倫子にもある思いを抱いていて…!?おお!?恋系もあり!?」という極めて浅はかな期待を抱いたのを覚えている。

4話くらいまでは、何かしら陰謀はあるだろうが、将軍の座奪還のため家治に正々堂々戦いを挑むのだと思い込んで、倫子様とのデートの優しい眼差しにきゃーーとなって幸せな気分だった。それだけでも嬉しかったし、初連ドラで主役との台詞がある役だなんてすごいと思っていたのだが。
6話あたりからドラマが始まる前に期待したものとは全く違うものに変わっていった。(もちろんいい意味で)父の死をきっかけに定信の中の歯車がぎしぎしと音を立てて狂い始めた。幼少期から抱いていた劣等感やら家治や田沼に対する憎悪やらが決壊して、人道外れた行動に出始める。”家治の血筋を根絶やしにする”ためなら、文字通り『なんでもする人間』となってしまった。その定信の移り変わり、異常性が出てくる策略と黒い感情、復讐に蝕まれていく様子を、涼太くんは表情で、特に目であんなにも細かく的確に表現される方なのだととても驚いた。
ずっと出たかった時代劇、しかも連ドラ出演。今をときめく小芝風花ちゃんの主演で将軍には事務所の尊敬してやまない先輩亀梨くん。ものすごいチャンスであると同時に、並の人間なら尻込みしてしまうような状況で負けじと存在感を放つ彼が本当に素晴らしい。
涼太くん演じる松平定信に一気に引き込まれたのは4話の家治との対峙シーン。倫子と代参の際に顔を合わせたことを知り動揺する家治に「…気になりますか。」と冷ややかな視線を向けたあの演技。「あれ…ご存知かと。」と言い終わった瞬間の完全に真顔になるあの微々たる表情の変化。
今後もしかしてものすごい演技を見せていただけるのかもしれないと心躍ったのを覚えている。
6.7.8話も影のラスボスっぷりがものすごいストーリーで展開されていて、その演技も素晴らしかったので本当は事細かに書きたいが、すごい量になりそうなので一旦省略。

そして迎えた先日の9話。あんなに屈託のない笑顔で奥女中と接していた猿吉こそが松平定信の隠密であったという衝撃事実から始まった9話。
世継ぎ候補が生まれてしまったからにはもう理性も何もなくなってさらにえぐい手段に出る。計画通り猿吉を使い家基を殺めることに成功した定信は満足そうな表情を浮かべるが、猿吉は脂汗をかいて曇った表情。貞次郎も消してしまえとさも当たり前のように(なんの罪悪感もなさそうに)言う定信に「…ほんに、殺す必要があるのでしょうか」と小さい声で小さな抵抗をする猿吉。
その直後の、定信の”目と眉だけ”のシーン。目と眉しか映っていないのに「…何?口答えするだと?」というようなセリフも一緒に聞こえてきそうなぐらいの演技。ここで既に完全に9話の定信に捕まった。
そこから、普段びっくりするほどキラキラキャッチが入る涼太くんの目なのに、暗い陰謀のような光しか映っていない目で猿吉をゆっくりと見やる一連の動作もまた至極。そして一気に激昂するその強弱の凄さ。
太い声で叫ぶのは滝沢歌舞伎などでもあったが、それとは全く違うオーラと凄みがあって見入ってしまった。

中盤で入る回想。猿吉もかつて貧しい民だったところに定信が声をかけてくれて救われたシーン。罪人の子どもに分け隔てなく接し、おにぎりを配給し、大義のために手を取り合おうと意気投合するシーン。
ここからは9話を見返せば見返すほど切なくて苦しくて悲しい、もう戻れない過去。
回想の定信は現在とは違い、ただ真っ直ぐに貧困層のために幕政を変えたいという夢を語り、猿吉はそれに惚れたのだろう。一体どれくらいの期間、共に大義のために尽くしたのだろう。どんな風に夢を語り合ったのだろう。そう思えば思うほど結末が悲しくて泣いてしまう。
その大切なもう戻ってこないあの頃を思い出して肩を落としながら歩く猿吉。

長い間仕えていたお品に、今手を染めている悪事とは真逆の人だと、元気をもらえると言われてしまい、なんとも複雑な表情で下を向く猿吉も切なかった。
貞次郎のそばまで行って口を塞ごうとして、情が溢れて涙を流すところからはもう何回見ても号泣してしまう。

猿吉は貞次郎を殺めることが出来なかった一晩をどんな気持ちで過ごしたのだろうか。目の前で手下を殺せと平気で指示する定信を既に見ているのだから、しくじった時点で殺される運命にあるのは覚悟をしていたに違いない。
かつてお慕いして尊敬した定信に斬られる覚悟をした猿吉の気持ちを考えると私まで勝手に心が押しつぶされる気持ちになった。

そして迎えた定信と猿吉の最期のシーン。仄暗い蔵?の中で、しくじった猿吉を蹴飛ばし理性のかけらもないほど激昂する定信。これまたその理性のなさと自分でも感情を制御しきれていない様をしっかりと伝える演技をする涼太くんがすごい。
「やれなければお前を斬る」と脅して従わせるつもりだったのに、「ご自由に」と言われてしまい、さらに感情のリミッターが外れてしまう。「お品に絆されました」と言ってくれればまだ何か変わったのかもしれなかったが、返ってきた答えは。
『慕って尊敬して”いた”のは貴方。この世の中を変えてくれるかもしれないと思っていたが、変わってしまったのは貴方の心だった。』と、唯一の相棒に、心の内を共有できる相手に真正面から言われてしまう。
もし、自分はもう後戻りできないくらい本当はおかしな判断をし人道外れた道を突き進んでしまっていると認めてしまえば、倫子にしたことも、千代姫を流産させたのも、家基を殺したことも、全て”間違い”であると自ら過ちを認めることになる。
それでも目を覚まして猿吉と会ったあの頃の自分にと思えたなら悲劇は起きなかっただろうが、、「もう今更戻れない」と同時に悟ってしまったのだろうな。猿吉を斬ってしまった。
この一連の演技のぶつかり合いが凄まじかった。図星を突かれた瞬間の、ただの怒りからハッと気付いてしまったような表情の変化。そこから猿吉の命懸けの訴えに一瞬圧倒されそうになるけれど己を守るために弾き飛ばす直前の表情の変化。
「…だまれ……黙れ…!…黙れぇぇぇ!!!!」の3回の黙れの表情が全て違う。3回絞り出す間に色々な感情が彼の中を駆け巡ったのだろうと手に取るようにわかる素晴らしい演技だった。
そして一度弾き飛ばされた猿吉がものすごい形相で、それでも手をついて姿勢を戻す忠誠心からくる行動も苦しくて切ない。本多さんのその演技も素晴らしかった。

これは後々SNSで知ったことだが、猿吉を斬る直前の最後の最後に「黙れ彦兵衛!!!!」と叫んでいる。このたった一度しか出てこなかった猿吉の本来の名から想像される、語られていない定信と猿吉(彦兵衛)との歩みを想像すればするほど切ない。その過去はあと2話で少しでも出てくるのだろうか。もし出てきたら泣いちゃうだろうな。

最後に。貞次郎を世継ぎに押し上げんとする策略の際に田沼が言った「竹千代君が世継ぎになろうものなら其方の子は一生日の当たらないところで過ごすことになる」という一言。
歴史に詳しくないので誤解があるかもしれないが、定信も徳川の名前を奪われ、家紋を身につける権利も奪われ、日の当たらない苦しい人生を歩んできたのだろうかと思うと、今やっていることは許してはならないが一概に責め立てることが出来ないなと思う。大人の策略に巻き込まれた者の行く末は恐ろしいとまざまざと見せつけられている。

木10だし、史実にある程度沿うストーリーなら、主人公たちの未来は…恐ろしいものになる気がする。でもこんなに1話1話真剣にテレビに齧り付いて、終わってからも何回も見直すドラマは10年以上ぶりだろう。こんな良質なドラマがもっともっと今後増えてほしいと思いました^^
かなり思いの丈をそのまま吐き出しているので割と酔っているような文章だったりがあるかもしれません。お目汚しすみません^^;
すごく見応えのある作品だから、これからもXの皆さんのポストを見て分かる分かる〜〜!とニマニマしたいなと思いました◎笑


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?