ひなろじ小話

「ひなろじ」を、リオンたちを愛してくださる方たちに感謝を。
そして思い出を徒然に。関係各位に怒られない程度に。

※過去のインタビューやTwitterのまとめみたいな感じになっています。
※そしてつまらん話で恐縮ですが「公式とは関係なし」です。
※さすがに記憶が怪しい所もあるので用語など間違ってたらごめんなさい。

◆最初期の話
「ひなろじ」は世界観設定を前作から引き継ぐものであり、仕事の依頼をいただいた時点でキャラの概要もできていたので、私のオリジナルとはまったくもって言い難い。だが、ろくに物語を書いた経験のない私にとって、それは初めてのオリジナルだった(そのすぐ後に似たような作品も始まったのですが)。正直なところ、何故私に依頼が来たのか、いまだによくわからない。
そして資料を拝見し、いくつかの目標と条件を掲示され、まず手をつけたのが世界観設定とキャラクター設定の調整である。いや、物語を作る前の土台がしっかりしてないと書けないんですよ。私の場合。
なのでテーマを整理し、それに合わせてキャラクターを修正し、世界観の帳尻合わせを行う。大規模改修である。これが後に私にとっての、オリジナルへのスタイルになろうとは、最近までわからなかった。
「ひなろじ」の場合、ニーナ以外は新キャラとなるため、最初リオンたちに名前はなく、役割に即した名称が与えられていた。「姫」、万博は「ハカセ」、弥生は「ライバル⇒バル子」、華凛と華恋は「お供1・2」、夕子は「寮長」だった。ベルも「マスコット」と呼ばれていた。
ここでリオンの名づけエピソードが出るとステキだが、私は固有名詞が全く覚えられないタチなので、名前をつけるのも苦手である。なので他スタッフに全部なげた。候補がいくつか出てみんなで投票した記憶がある。おかげでとても良い名前が彼女たちに与えられた。できないことは他人に任す、仕事の基本である。

◆世界の作り方
そして私にできることは、世界の帳尻合わせである。そして既存の設定に、バックドロップをかけたような感じでピラリ学園が生まれた。
あの苛烈な世界、多くの少女たちが無理やり戦場に立たされる世界で、実は少女たちを守る場所があったとしたのだ。
当時の学園長や副学園長の想いを想像すると、大変やるせない。
Sランク、つまり盟約者ができた生徒たちの多くは学園から戦場に向かっていたはずだから。そういう意味で、戦後入学したリオンたちを除き「学園に残っていたと描かれたSランク生徒」は夕子だけなのだ。もちろん彼女以外にも多少は存在したはずだが、私は学園長らの苦悩を含めて描かなかった。結構な量の設定になったと思うが、それは学園長をはじめとする大人を描くための土台である。そして大人たちは、リオンたちに歴史は教えても、自分たちの苦悩は見せないと思ったので。
人が見せる顔は、相手によって異なる。当たり前のことだが、その多面的な見せ方でキャラの魅力を伝えたいというのは私のクセなのだなと、今では思う。
そして生まれたCパート。赤城さんとの次の作品でも、当たり前のように入っていたので、多分赤城さんも好きなんだろう、Cパート。

◆リオンたちの造形
これまた初期設定にバックドロップをかました。トラウマの全排除である。トラウマがなくてもドラマは作れる、が当時のなんというか世相への反抗心だったのかもしれない。
そして親から離れていても、ちょっと変わった生活環境であっても、いわゆる理想の家族像から離れていても、親が子供に愛情を注ぐことはできるし、子供もまたそれを信じることは可能である――とした。
また、学校という場所が、子供を守るための場である。理想や建前を子供たちに現実と示すべく、努力されている場である――とした。
前者は私の夢であり、後者は実際の経験に即した。
その結果、リオンたちは色んな形のヒナになった。基本的に、他人への好意を素直に表現できたり、素直に受け取れるのは、彼女たちが愛されてきたという経験によるものである。まあ、素直じゃない子もいますけど、それは性格であり、好意自体には疑いを持ってはいないのですよ。
そして、あの年頃ならではの要素としてリオンには「自信の無さ」を足す。ニーナは戦場での実績があり、弥生は成績など全て優秀だった、万博は研究がある。そんな中で、リオンは同年代の友人がいない中で育ったせいもあり、自分の能力や性格の客観的な評価ができない。これはその世代の少女なら当たり前のことで、そういう意味でリオンは普通の少女とした。
一方でニーナたちも、定理者が集う学園という場で改めて自分を再評価されていくわけで。十分ドラマは作れると思った次第。

◆リオンの両親
子供のために国を建てた両親――それがリオン父と母である。
違う、主にリオン父である。名前あるけど長いから父で。役者名で呼ばれてたけど、さすがにここでは遠慮しましょう。

彼らがしたのはとても残酷な選択。
他の子供たちは? 己の子供だけ守るのか?
だが振り返ってみれば、リオン父は世界有数の脳筋かもしれないが、定理者ではない。言っておくが、使者でもない。本当に。
(でもキャラデザが上がってきたときに少し疑った)
そんなわけで、リオン父は、襲い来る使者と戦う力を持っていない。
定理者はごくわずかな割合で才能を持つ若者たちであり、年を経ればその力を失う。リオン母もその道を辿る。
これが本作の残酷で、絶対で、魅力ある世界のルールである。
戦場に必要なのは戦士だけではない、リオン父は愛する人のために、守るべき人たちのために戦場で獅子奮迅の活躍をしただろう。「白銀のグリズリー」という異名を与えられるほどに。
そして彼とリーニャが命がけの戦いの報酬として得たのが、たったひとつのワガママ。ALCAの庇護を受けない代わりに強制徴収されない場所――小さな国を作ったのだ。なので、ここの国民は大体二人の元仲間なのでバリバリ強い傭兵国家である。猫も助ける。
これはリオンの年齢を考えれば、当然戦争が終わる前の話。さらに詳しい事情は私の脳内設定なので伏せますが、彼らがどれだけ壮絶な覚悟を秘めて国の名前を決めたのか。そして、どんな想いで大切な娘を学園に送り出したのか。
でも、リオンからすれば、母は優しくも怒ると怖いママで、父はとてもウザイパパで、どちらも大好きなのである。
それでいいのである。
それこそがリオンの両親が望んだ、娘がいてほしい世界なのだから。

◆最後?に
私の立場は構成脚本であり、「ひなろじ」という作品における設計図を引いただけ。それにどんな色を塗り、どのようなステキな家(作品)を作るかは、親方の監督の領分です。そしてリオンたちに命を吹き込むのは作画陣と役者陣の仕事です。
そして赤城監督たちは大変ステキなヒナの巣を作ってくれました。
リオンたちも大変かわいらしいヒナになりました。
また、何かやりたいですね。

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