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eバイク+サイクルトレーラーでカヤックを運んでみた

ファルトボート(折りたたみ式のカヤック)を入手して以来、これをどうやって海まで運ぶのが良いかあれこれ考えてきた。大本命はもちろん自動車だが、あいにく持っていない。バス路線はあるが乗り降りが面倒だし、特に帰路は濡れたり砂汚れがあったりなので気が引ける。幸い、自宅から最寄りの海岸までの距離は10km程度しかない。eバイクとサイクルトレーラーを使えば、カヤックを牽引して自力で往還できるのではないか、とかねてより考えてきた。

結論から書くと、実現可能。カヤックの輸送について技術的に大きな問題はなかった。使用したサイクルトレーラーはBurley社のTravoyの第1世代。非常に優秀な製品で、20kg近い荷物を載せても安定しているし音もほとんどしない。発進の際に重さを感じるのではと考えていたが、それもほとんど感じなかった。

一方で別の問題に気付くことになった。最も大きいのが使える道が制限されること。道交法の定めによりトレーラーを牽引している状態のeバイクは歩道を走行することができない。車道の端を走行することになるが、大きすぎる道では自動車が多くスピードも出し気味なので、怖かったり気を遣ったりで気持ちよく走ることができない。かといって細すぎる道では却って邪魔になるし走りにくいことが多い。ちょうど良い大きさや交通量、舗装状態の道を選ぶために、実際にトレーラーを牽引して走る前に下見をしておくのが正解のようだ。

もう1件は盗難対策。自動車であれば鍵をかけておくことで一定のセキュリティが保たれた空間を確保できるが、自転車の場合それ自体が盗難の対象になってしまう。当然厳重にチェーンロックなどで対策する必要があるが、パーツレベルの盗難に対しては実際上無力だ。また、貴重品については肌身離さず持ち歩く必要が生じるが、その分海上でロストするリスクを高めてしまう。これらの問題については、根本的な対応策は思いつかない。持ち出す貴重品を最低限のものにした上で、なるべく人目につかない場所を選んで駐輪するくらいしかないだろう。

どちらの問題も、技術的なものではなく社会的なものだ。思い返せば公共交通機関でカヤックを運ぶ際の問題についても同様であった。こう考えていくと、自動車というものが単なる移動や輸送の手段ではなく、プライベートでセキュアな空間を持ち運ぶ手段であることや、「自力でカヤックを運ぶ」という独立不羈のように見える取り組みが、実際には交通やセキュリティといった社会インフラの多大な恩恵がなければ成り立たたず、むしろ自動車よりもよほど公共サービスに依存しているといったことがわかって面白い。

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