夜にしがみついて、朝で溶かして
良いアルバムだなぁ。3年3ヶ月。待たされた。という感情になる事もなく、良い子で待っていたら素晴らしいご褒美を貰えた。そんな気持ちです。CDケースにも愛が沢山詰まっているし、この作品をずっとずっと大切にしよう。そう思わせてくれるアルバム。これから音楽記録媒体がどうなっていくのか?この変革期に、色々模索しているバンドの『愛が沢山詰まったアルバム』を今、手に取る事が出来ている幸せ。は、きっと、のちのちに効いてくるんだろうなぁ、と思っています。
料理
一曲目にこの曲が来た事で、その後に連なる新しい試みの曲達もスッと耳に入ってくる。クリープハイプはちゃんとクリープハイプなんだから心配しないでね。と宣言してくれている様な、そんな一曲目。
『愛と平和を煮しめて味覚を馬鹿にして笑う』の『笑う』の所で聴こえる「コン♪」が、凄く馬鹿にしている感が出てる。ここの歌詞、愛と平和…ラブ&ピース…そんな大それた事ではなく、俺は半径3メートルの愛を歌いたいんだよ。って解釈で合っていますか?
『なぜか腹が減る…』からの2行。後ろで鳴っている音が切なくて好きです。
音楽に明るくないので、上手い言葉で言い表す事が出来ないのですが、この一曲の中に様々な音が入っていて、凄く盛り沢山な感じがして(だからと言って、盛り過ぎてはいない絶妙な足し算引き算がなされているのを感じる)、それはこの曲だけの話ではなく、このアルバムは、一曲一曲が本当に沢山の時間をかけて丁寧に丁寧に作っていったんだろうな。という事が聴いていて伝わってくる、そんな一枚でした。
ポリコ
嗚呼、太ちゃんはベースで始まるイントロを無条件に好物としてしまう習性があるのかもしれません。まずイントロが大好き。そして全部好き。
この曲が【ポリティカル・コレクトネス】について歌っている。という事を知らない人は、この歌詞をどう解釈するのでしょう?私が初めて「ハイパーポジティブよごれモン」のエンディングでこの曲を聴いた時は、潔癖症の子の歌だ。と思っていました。汚れに取り憑かれてひたすら手を擦り続けるぽり子。
歌詞の『うまく切りとれ』はPCの問題だけでなく、誰かの発した言葉の一部分が切り取られて報道され、それが槍玉に上がってしまう怖さを。また『でも消えない』の所は、一度口にしてしまった失言は消す事が出来ない恐ろしさを持っている。という事も表している様に感じました。
二人の間
尾崎世界観マジですげぇ。と思わされた一曲。この曲は、お笑いコンビ『ダイアン』さんに書き下ろされた曲のセルフカバーですが、こんな風にダイアンのお二人の空気感を見事に曲にして表してしまえるんだ…。はぁ…。凄い…。二人の歴史や紆余曲折を歌詞にしなくても、この歌を聴けば、二人の良さや、なぜこの厳しいお笑いの世界で長い間続けてこられたのか?が、何となく伝わってくるし、最後の『二人の間で』の『で』の音も上がり調子で終わる事で、これからもこの二人はこんな感じでずぅ〜っとやっていくんだろうなぁ〜。と思わせてくれます。
四季
春。イントロのドラムの音を聴くだけで何か新しい事が始まりそうな予感に、心が浮き立ちます。
夏。幸慈ギターの音が暑い夏の青い空を思い起こさせます。
秋。一転、ピアノの音色が入り、並木道、紅葉した葉がヒラヒラと舞い落ちる感じに…。
冬。更に季節は進み、吐く息が白い寒い帰り道が頭に浮んできます。
『四季』というタイトルがついているのに季節を感じさせる言葉は「蛍の光」「雪」くらいです。しかし、曲調でちゃんと移ろう季節を感じさせます。そして、寒い冬のある日、急に「無性に生きてて良かった」と思って、なんか涙が出ちゃう尾崎さん。(俺がそうだった。ってわけではないからな!)みんな誰しも生まれてきたら死ぬ日まで、「年中無休で生き」続けています。そりゃあ色んな事があって、辛かったり悲しかったりする事もあるけれど、楽しいことや嬉しいこともあります。だから頑張って生きていこう。と勝手にそんな気持ちになれる曲なのです。素敵な応援歌だなぁと思います。最後の曲も然りなのですが、尾崎さんの作る曲は、『頑張れよ!』とか『やれるよ!』とか言って励ましたり、背中を押したりするのではなく、曲の中に出てくる人の姿に自分を重ねて、私も頑張ろう!という気持ちにさせてくれる。そんな曲が多いです。すぐ隣にいてくれて、歩調を合わせて一緒に歩いてくれている、そんな優しさを感じます。
愛す
「逆にもうブスとしか言えないくらい愛しい
それも言えなかった」
ここの意味、『それも言えなかったって歌っているんだから、ブスとすら言っていない。』とSpotifyのLinerVoiceで尾崎さんが話しているのを聴いて衝撃を受けました!私はブスブス言うとるけど、それは愛しさ故だったんだよ。という事を伝える事が出来なかった。と歌っているんだと思っていたからです。
小学生男子が好きな女子を虐めて、なぜ虐めていたのかというと、それは好きだったから。的なヤツです。だって、後から「いつもほらブスとか言って素直になれなくて」って歌ってるし…。
まぁいずれにせよ、このブスは決して腐して言ってるブスではなくて、ブスとしか言えないくらい愛しい。って歌ってるのに、某ブログで四の五の書いた人は、何をどう解釈したんでしょうね?読解力無さ過ぎですね。(自分を棚に上げる)
初めてこの曲を聴いた時私は、尾崎さんが世間に向けた歌を作った。と感じました。言うなれば、過去のクリープハイプの曲の中では少し異質で、どこかふわりと浮いた感じの曲でした。なのに、アルバムで聴くと何の違和感も感じないのです。あるべき場所に収まっている。という安心感すらあります。クリープハイプが舵を切っていく為の大切な曲だったんだな、と思いました。
しょうもな
『愛す』の歌詞に対して言われた事に対する気持ちを込めた楽曲であり、そんな事に一曲を使うのはイヤだ。と尾崎さんは言っていたけど、全然構わんよ。と思いました。だってそのおかげで、こんなに素敵な曲になって、私は今それを聴くことが出来ているんですから。更には『てめーに用がある』と歌われて、喜びで鼻息が荒くなっています。フガフガ
今回のアルバム制作では、音の面に置いて色々な試みがなされていて、尾崎さん小川さんがギターを弾かない。長谷川さんがベースを弾かない。小泉さんがドラムを叩かない。そんな試みをした楽曲が多々ある中で、その間間に『料理』や『しょうもな』『モノマネ』があることで、互いを高め合っている。そんな印象を受けました。もともと、クリープハイプ引き出しありすぎ。と思っていたのに、更に沢山の引き出しが作られました。やーー!これから一体どうなっていくんだろう?期待しかないよねぇ〜!
一生に一度愛してるよ
楽しい曲。随所に工夫がいっぱい。
私は個人的には、クリープハイプが変わっていく事になんの不満もないので、この歌詞みたいにファーストばかり聴いてないし、最近の曲も好きだし、あの頃に戻って欲しいとも思っていません。(突然の告白)
この曲、言われてみれば本当に凄くテンポの速い曲なのに、それを感じさせない。ライブでやる時、拓さん大変ですかね?「103です」の所をちゃんとカオくんが歌ってるの嬉しい。最後の「バンドと恋人が逆だったらな」の後に「いいな」って歌う所と、最後の「と思ってたよ♪」の歌い方も好きです。
ニガツノナミダ
アルバムを聴いていてこの曲が始まると毎回、脈が上がるんですけど、それはおそらくTVCMで流されて以来、この曲は簡単に聴くことが出来ない曲となり、何かの折に聴けた際きゃあ〜嬉しい!ってなった思いがDNAに染み込んでしまっているんだと思います。
曲終わりのボヨヨンボヨヨンボヨヨンボヨヨン…がしばらく続く所が好きです。からの…
ナイトオンザプラネット
この曲のイントロに繋がる感じも好きです。初めてライブで聴いた時、「えっ、尾崎さんがハンドマイクでラップみたいなのやってる!」とびっくりしたのですが、今では当たり前にクリープハイプの大切な曲の一つ。になっています。2月に映画が上映される事で、この曲がより多くの場所に届けられると良いなぁ。と思っています。
凄く大切な出来事だったわけではないけど、なんとなくちょっと思い出す出来事。人は、そんな思い出の積み重ねの中で生きているもんだよなぁ。と、この曲を聴いて思いました。
しらす
イントロが流れてきた途端に頭の中の世界をガラリと変えてしまうから、カオくんも凄いです。(語彙力…。凄い。は最高級の褒め言葉…。)
この歌を聴くと毎回、最後のランランラン♪の所で勝手に、NHKのアナウンサーさんの「みんなのうた」という声が聞こえてきます。世のちびっ子達に聴かせて、頂いた命を大事に思いながらご飯をモリモリ食べて欲しいと思うし、自分もちゃんと心して食べよう。って思えた、そんな曲です。
なんか出てきちゃってる
好きです。
語りの部分、叫ばないで語りにしたの本当に正解だと思います。ライブでどう再現されるのか?楽しみな曲の一つです。カオくんと掛け合いになったりするのかな?
『クリープハイプ。ハイトーンボイスが特徴的な中高生に人気のバンド』と紹介されていた当初、中高年なのに好きになってすみません。の気持ちで応援していた私と致しましては、嗚呼アダルトな曲調。心地良い。もっと頂戴…。ふぅ…。の気持ちなのです。これからのクリープハイプがどんな曲を聴かせてくれるんだろう?と、楽しみでしかありません。
キケンナアソビ
アレンジ面で新しい試みをした。という意味では、この曲も大切な曲ですね。なんとも言えない和の少し古めかしい雰囲気の曲調と切ない歌詞の世界が実にマッチしています。もしも私が今、絶賛不倫中だったとしたら、涙無くしてこの曲は聴けなかっただろうなぁ。
モノマネ
イヤホンをして聴いていると『いつもとおんなじ…』辺りから左耳から聴こえてくるギターの音を右耳から聴こえてくる音が一生懸命マネして追いかけているみたいに聴こえて、なんだか切ない気持ちになります。カップルだからって似てなきゃいけないわけじゃないし、同じじゃなきゃ一緒に居られないわけではないのにね。
「違うところに怒る不幸せ 違う気持ちを許す幸せ」という歌詞が好きです。尾崎さん、本当に凄いよ。凄い。(語彙力…どこ…)
幽霊失格
「写真にだけ写る美しさ」って歌詞思い付くの凄いです(だから、語彙力…)。
「分けて
悲しいことも苦しいことも
怖いどころか嬉しいんだよ」という歌詞、大切な人を亡くした人には胸に沁みる歌詞だろうな。と思います。
こんなに悲しいのに腹が鳴る
この曲の凄い(語彙力なさ過ぎてちょいちょい出てくる【凄い】という言葉…)ところは、腹が減るだけでなく、腹が鳴る。と歌っている所。
失恋したり、大切な人を亡くしたりして、悲しみに暮れると、人は時として食欲すら失い何も食べたくなくなって、周りの人に「少しでも食べないと…」などと心配されたりもします。しかし、身体は心と裏腹で「生きよう」とするので、腹が減れば鳴るのです。「なんか食わせてくれ!」と言ってきます。なんだか滑稽な話ですけど、どんなに悲しみに暮れていても、腹が減ればグ〜〜〜と鳴るのです。それを歌にしてしまう尾崎さん。この曲でも、人生、色んな事が起こって、時として辛い事や悲しい事に出会うけど、生きていようね。って言われている様な気持ちになります。
「食べなよ食べなよ何か食べなよ」でも、
「生きよう生きよう頑張って生きよう」でもなく、「食べたい」「生きたい」って歌っているんだけど、聴いている私の心の中にも沁み入ってきて、励まされている。そんな気持ちになるのです。
今日を生きて、その積み重ねで季節を重ね、そして一周してまた新しい一年が始まり、その年も重ねていって。誰かと喧嘩したり別れたり、どんなに辛い事があっても生きていれば腹が減るので、何か食べます。夜にしがみついてくよくよ悩んでいても、いつしか眠たくなって眠ってしまって、目が覚めたら新しい朝が訪れているのです。そんなこんなを繰り返している内に、悩みも少しずつ解けていって、また前を向いて歩けるようになって、の繰り返しでここまで来ました。この10年は、そんな感情のそばにいつもクリープハイプの音楽がありました。このバンドに出逢えて本当に良かった。私の人生に彩りを与えてくれましたし、私をここまで運んでくれました。
メジャーデビューして10年経とうとしているのに、こんなにワクワクさせ続けてくれるバンドの、こんなに素晴らしいアルバムを聴くことが出来てとても幸せです。本当にありがとうございます。来年もしがみつかせてくださいね。 ( ˘ ³˘)♥
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