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ドラマティックな毎日を

毎日を「つまんない」と思いながら過ごしているあなた。実は身近に起きているミステリーを見過ごしているだけかもしれません。

『タルト・タタンの夢』は、フレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」に集う人々が巻き込まれる事件や不可解な出来事を、シェフの三舟さんが解決してゆく短編集です。

「ロニョン・ド・ボーの決意」は、偏食が激しいお客さんの物語。気に入らなければわずかに口をつけただけで料理を戻してしまうため、予約をお断りしているのですが、じつは彼にはお店で見せる顔とは別の一面があり、その理由についてシェフが紐解いてみせます。また、「理不尽な酔っ払い」では、常連客が高校時代に経験した謎 ― 部活の合宿で、お酒がないのに酔っぱらった部員が現れたこと ― のからくりを鮮やかに再現します。

常連さんとスタッフの会話やギャルソンの視点を中心に話は進み、三舟シェフは会話にあまり口を挟みません。けれども、職業柄、食材や調理法に詳しい上、人の行動をよく観察している(常連客であれば、料理の減り方から体調を見極め、コース料理のメニューを変更してくれる)ため、肝心なところでしっかりとその心情を語ってくれます。
一見、嫌われるような行動をとっている登場人物でも、読み進めるうちに、その行動の理由がわかるので実は世の中に悪い人はいないんじゃないかという気になります。

このお店で繰り広げられる“事件”は私たちの身の周りでも起きそうな出来事ばかりです。
私たちが “取るに足らない”と思っている出来事をもっと丁寧に見てみると、実は短編小説になるくらいの“事件”が起きているかもしれません。


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