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アイスクリームフィバー

「これは生涯に一度の恋だなって恋。したことあります?」「その日が消えても、火傷の痛みだけは身体が覚えてるみたいですよ」

「母さんの職場の人のはなしなんだけど、、燃えるような恋をしていた相手を、実の姉に奪われたらしくて‥ 」

後輩、貴子(詞羽)のセリフ。右


「 アイスクリームフィーバー。」
冷たいアイスクリームと、限界まで燃え上がる反語が面白いタイトルの映画。

こちらは、一軒のアパートと一軒のアイスクリーム屋、ミリオンアイスクリームを舞台に時間を繰り広げられるストーリーです。

生涯に一度の燃え上がる恋に出逢い、残された人のドライアイスの火傷のようなヒリヒリとした感情がテーマになっているんではないか、と私は感じました。

PARCOらしい乙女心くすぐる映像に、可愛いアパレルや、小物が出てくる。そんな商業らしさも感じながら観賞。カラフルな色づかいとファッションは、PARCOそのもの。


※ここから先は、私個人的な感想と、沢山のネタバレが混ざっています。間違っている解釈も多いと思いますので、読み進めたら混乱する可能性があります。要注意してください🐄🍨


あるマンションに引っ越してきた男(マカロニえんぴつ はっとり) のベランダには、
ピンク色の花の絵が描かれていた。
ABCのモチーフの看板が見えるマンションである。

🍦

ミリオンアイスクリーム店で働く、菜摘(吉岡里帆)は、店の常連客である佐保(モトーラ世理奈)に運命的な感情を抱きます。

アイスクリーム屋を盛り上げたいと考えた菜摘は、佐保にアイディアを聞く。

佐保「… 上になにか吊るすとか?」
佐保は、いつも黒い服を着ている。

佐保は芥川賞を一度受賞し、新作を生み出せず世間に叩かれていた。
自分のことを何一つ語らない。女の子。

何気ない時間と、菜摘の行動力により、2人の距離は少しずつ、近づいていく。

菜摘「私、アイスクリーム作れるよ。冷蔵庫さえあれば。」

佐保「ねえ、アイス作りにきてよ。」 

佐保のマンションで過ごす夜。キャラにもなく、夜中に外に飛び出し、黒い蝶々の絵が書いたスケボーに乗る佐保。必死に追いかける菜摘。決して追いつくことのない2人の距離。

そんな2人の距離が一気に近づいた。


佐保「ミリオンアイスってどういう意味?」
菜摘「…  百万年、君を愛す。」

どんな瞬間よりキラキラしていた時間。
次の日、佐保は失踪した。
さよならも伝えられないまま、菜摘の恋は呆気なく終わった。

失恋した菜摘の心には取りきれない甘い汚れがついたのでした。

菜穂はベランダにアイスクリームの汚れをつけた。


🍨

マンションで一人暮らしのOLの優(松本まりか)。人生の楽しみは、銭湯とアイスクリームを食べること。

そんなアパートに、居なくなった父を探しにきた姪っ子の美和(南琴奈)が押しかけてきます。

美和の急な訪問に戸惑いながらも仲良く暮らしつつ優と中学生の美和の心にはそれぞれ複雑な思いがあった。

優にとっては姉であり、美和にとっては母である愛を事故で亡くしていている。

美和はいなくなった父親に対し、優は大好きだった人、そして大好きだった人を取られ先に逝ってしまった愛に対し、忘れられない火傷のような想いを抱えている。


ある日、2人で掃除をしていると、ベランダにはピンク色のアイスクリームの汚れが。
美和は、花びらのようなその汚れに葉を描く。

アイスクリームの汚れは、花になった。

🌸

ある日、優の家に、知らない人宛の贈り物が届く。黒い蝶々のモビールである。

二人の部屋に届いたものと勘違いした美和は、モビールを天井に飾ってしまい、優と喧嘩になってしまう。そんなとき、美和が、今まで触れてこなかった愛と優の恋愛関係について、皮肉を言ってしまう。

それに対する優は「幸せか幸せじゃないかなんてもはやどうでもいいから。問題は、私か、私じゃないかだから!」 と言い放つ。

♨️

ささいな思いつきで、優はOLを辞め、美和と銭湯で働くことに。優の言葉で一歩大人に成長した美和は、父探しの旅を、放っておくことにした。

失恋した菜摘はアイスクリーム屋の店長になった。

それぞれの主人公たちが、新しい人生を一歩ずつ踏みだします。

🐄

優のマンションに間違えて届いたモビールは、偶然アイスクリーム屋に立ちよった美和が、アイスクリーム屋の菜摘にプレゼントしました。

菜摘は、黒い蝶々のモビールをアイスクリーム屋さんの天井に飾ることにした。

佐保「上になにか吊るすとか?」
佐保は、いつも黒い服を着ている。黒い蝶々のような人だった。

…荷物は、佐保のものであった。

時間は過ぎ、銭湯帰りのアイスクリーム店に男性が訪れる。

その男が抱えていた本は
佐保が執筆した新作、「百万年君を愛す」でした。


アパートの花柄の汚れ。
冒頭のバイトのセリフの職場の先輩が、優の話であったこと。引っ越してきた男に美和が佐保の新作の本を偶然渡したこと。まるで、ミリオンアイス店のぐっちゃぐちゃのアイスクリームのメニューの様な、それぞれの主人公の感情と時系列をごちゃまぜにしたような作品。
青春ってそんなもの。

まるでアートのように現れる一つ一つの色鮮やかなヒント達が、時間の経過や、ストーリーの順路を導いてくれるのです。

甘く冷たく儚いスイーツ。早く食べないと溶けちゃうし、大切にしすぎていても、そのうちドライアイスで火傷をするよ?
そんなアイスクリームに恋心を重ねたような、作品でした。

一生に一度の燃え上がる恋に、置いていかれ、とり残された人の心の痣。それは一生取れることのない染みのようなものだと思います

燃え尽き、溶けたら戻ることもできない。さよならも言えなかった恋だったけれど、それぞれ時空を進む主人公達が色んな形に残していった恋の形が未だベランダに残ってる。

偶然なのか。必然なのか。

冒頭の雨の中の佐保は、マンションに消えない未練があったのかな?

一生に1度だけ。あの感覚は、消さなくていい。どうせ百万年、消えない。
でも、そんなことは放っておこう。

🦋


私は学生時代、4年ほど佐保のような自由なアイスクリーム屋でアルバイトをしていました。ドライアイスの火傷も、バニラの葉の剥きかたも、アイスクリームが人を幸せにする感覚も身体に染み付いていて、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。

固まったアイスを掘り起こすように、まだまだヒントが埋まってそうで、まだまだ私には溶けない謎がたくさんあると思います。

アマプラ、レンタルじゃなくて購入したら良かったな。大事なポイントを見逃さないようにしていても、きっと見逃しているから、もう一回見たらまた感想が変わってきそうな映画です。

ここまでが私の考察と感想です。難しかったので、捉え方など間違いも多々あると思います。皆さんの考察が知りたいです。

曲も素敵でした。可愛かったです🍨🦋💭

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