思想解剖#010『大切な人』

ある日、神様とも悪魔とも言えぬモノが僕の前に現れ、こう言いました。
「キミに10億円あげよう。」
そう言うと、僕の前に10億円が置かれ、そのモノは続けてこう言いました。
「ただし、1年後にキミの一番大切な人をもらうよ。この提案を受けるかい?」

僕はしばらく大切な人を考え、提案を受けることにしました。
10億という金に目がくらんだ僕は大切な人の命と引き換えに豊かな人生を手に入れました。


-----1年後-----
僕は10億円という大金を使い切る前に交通事故で死にました。

グチャグチャになった僕の身体を空から眺め、僕は考えました。
大切な人をもらうと言っていたのに僕が死ぬなんて…
ん?待てよ…そうか…
僕の一番大切な人って…僕自身だったんだ…

あのモノは最初から分かっていたんだ。
もし大切な人がいるのなら提案には乗らない。
提案に乗るということは本当に大切な人なんていないんだってこと。
提案に乗るということは自分のことしか考えていないんだってこと。
つまり提案に乗った時点で決まっていたんだ。

僕が死ぬことが…

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