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パントマイムの習得のコツ #16

パントマイムの習得という言葉はとても広い領域を示している
”パントマイム”というジャンルそのものが、様々な要素を内包しているからだ。

例えば
・彫像芸(スタチュー)
・大道芸
・クラウン芸
・無声劇
・言葉を用いずに表現する技法
・無対象で物質を生み出す技術
・「壁」や「綱引き」などのテクニックについて
等が上げられる。

いずれもパントマイムというジャンルが内包している要素だろう。
では、全ての要素に共通する、習得のコツのようなものはないのだろうか?

演技力とテクニックを習得するには

以前の記事で書いたパントマイム作品を生み出す為に必要な要素の中で、演技力とテクニックと言う項目があるとお話した。

どのようなパントマイムの活用場面であっても、この両面は必要となってくる。

ならばこの、演技力とテクニックの両面を向上させる為に必要なアプローチこそ習得のコツと言えるだろう

そうなれば、明確に一つやっておいたほうが良い訓練が見えてくる

それは、無意識を意識するという訓練ではないだろうか。

無意識を意識する

パントマイムの習得のコツは普段無意識でやっていることを意識することから始まる。

あなたは今この瞬間に日常で当たり前のようにやっている所作を、無対象で再現することが出来るだろうか?

例えば靴を履くという動作
・右足左足、どちらの足から普段履いているのか?
・その手順は?
・靴べらを取るタイミングは?
・かばんを片手に持っていた場合は?
・目線はどこにあるか?
・履き終えてドアを空けるタイミングは?
・かばんを再度手に持つタイミングは?
等など

靴を履くという日常動作だが、改めて無対象でそれをやろうとすると、どの順番にどの程度の距離感やスピードで、どこに目線を向けながらその動きをしているのかが分からないものだ。

同様に、
・水をコップに入れて飲むという動作
・バスを待っている時の体
・ジュースを自動販売機で買うという行為
あらゆる動作がほぼ無意識の全自動で、特別に頑張らなくてもいつの間にか出来るようになっている。

なので、無対象になった途端に、普段どのようにその動作をしているのかがわからなくなってしまうのだ。

これが無意識の状態である。

日常動作は無意識の連続

無意識でやっていることは、無対象になると出来なくなる。
普段やっているはずの動作がわからなくなり、おかしな順序で動いてしまったり、不自然にその動作を行ってしまうのだ。

パントマイムの基本は模倣にある。
余談だが、パントマイムは”全てを真似る”という意味を持つギリシャ語が語源にある。日常における出来事から、自然界が生み出す現象まで、あらゆることを真似ることがパントマイムの本質といえる。

我々は無意識であるが故に、見聞きして知っているはずのことが表現出来ないのだ。

常に呼吸はしているが、呼吸を意識することはないように。
常に心臓は動いているが、聞こうとしないと心音が聞こえてこないように。
当たり前のことを意識するというのは難しい。

全ては模倣から始まる

パントマイムの基本は模倣であり、習得のコツは普段無意識でやっていることを意識することから始まる。とさきほど述べたが、模倣するためには、世界中のことに興味を持つことが不可欠である。

「火を見たことのない人に、火は描けない」とは、かのスタジオジブリ宮崎駿監督が言った言葉だったと思う。火を見るとはガスコンロの火を眺めるだけではない。焚き火の炎とマッチの火の違いを観察することであり、経験していなかったとしても、火事になった家の熱や爆発の炎を、映画などから想像することである。

無意識であるが故に表現出来ないのなら、意識的に世界を見ることだ。
十人十色な人の動作を観察し、動物や植物などの有機物、そして家電や石ころなどの無機物、そして、炎や風や波なども含め、様々なものを観察し、自身の身体で真似してみる。

そこからパントマイムの入り口が開き、無対象表現の世界が見えてくるだろう。無意識で見ていた世界に注目し、意識してみてみよう。これまでは気付かなかった新鮮な発見があると思う。

テクニックも模倣から

「壁」や「つな引き」に代表されるパントマイムのテクニックにおいても同様のことが言える。

重いものを持っている時に体はどう動いているのか。急に引っ張られたら体のどの部分から動き、どこへその連動は伝わっていくのか。自らの体でその力感やエネルギーを生み出すパントマイムのテクニックは、物理法則に沿った動かし方を実はしている。

関節や筋肉の動かす順序やスピード感は、実際にその動きをした時を模している。リアルに沿って動かしているので、違和感なく且つ、無対象だから不思議に見えるのだ。

知っているから表現するへ

無意識であることを意識する
言葉を変えれば、見ているようで見ていなかった物に注目するすることでもあるし、自動でやっていたことを自覚してやってみることだ。

これらのことが必ずパントマイムの習得の助けとなるだろう。

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