~生まれ変わったら桜の下で逢いましょう~

りゅうへ。

どうしてる?
お父さんと爺ちゃんに文句つけれた?
お母さんとお義兄ちゃんに逢えた?

君と出逢ってから旅立つまでも早かったけど。
旅立ってから今日までもとても早かった。

家にいても。
仕事をしていても。
子供たちと過ごしていても。
海にいても。
買い物をしていても。

どこにいても。
君の声が聴こえてくるんだ。

「ただいま」
「おかえり」
「悔しいよ」
「頑張れ」
「お疲れ様」
「俺の事想ってて」
「いつもそばに居るから」
「笑ってよ」
「生きたいよ」
「死にたくねぇ」
「愛しくて、恋しくて、切なくて、優しくて。生きてるなぁって感じてるよ?」
「逢いたい」
「ひとつになりたい」
「愛してるよ」
「ありがとう」
「SEXしてぇ~!!!!」
「充電切れる!!!!」

君の歌声。
耳から離れない。
過呼吸起こすほど泣いてしまったあたしに一緒に泣いていた君が不意に歌った銀河鉄道999。
息子の誕生日に録って送ってくれたハッピーバースデー。
君の踊りもYouTubeに残ってる。
あたしだけが知っている君の踊ってる姿も。

あたしと家族になりたいと。
子供たちに誇れる父になりたいと。
もう踊れないのにオーディションを受けようとレッスンを続けた。

「振り付けが覚えられない」
「サインを求められてももう書けない」
「それでも俺はオーディションを受ける」
「夢を選ぶなら俺が招待する。愛を選ぶなら俺は歩く。止めるなら俺は叫ぶ。俺の生きがいを取るなと。」

でも結局条件を満たせずダンサーとしての道は途絶えてしまった。

きっとね。
あたしの姿は余命宣告を受けて病気と闘ってる君を最後まで支え、その人を失った女の姿とみんなの目に映ってると思うんだ。
実際そうだし。

でも、りゅうとの物語は後2つある。

1つは「あたしの生きてきた道とりゅうの生きてきた道と。2人が出逢ってからの道を本に書いて印税で暮らそうぜ!!!!」って笑いながら話した時があった。

もう1つはりゅうは知らずに逝ってしまったけど。
この話はあたしと君の代理人しか知らない。
りゅうが知っていたらどんな風に思ったんだろう。
もしかしたら気づいていたかもしれない。
でも多分知らずに逝ったんだ。
その話を聞いてから尚更りゅうの生きてきた道が寂しすぎて。
そしてどんなにりゅうは守られてきたのかを知って涙が止まらない。

君はずっと1人だと言っていたけど。
「たくさんの人に色んなものを貰ったね。そして色んなものを引き継いだね。だからりゅうは1人じゃなかったんだよ」と言いながら人生を振り返った。

「もうツイートするのがきつい」
「腕が上がらない」
「寝るのが怖い」
「それでもみうが居るから頑張る」
「頑張って生きるから待っててよ」
「俺が死ぬの分かってて。俺の全てを知って尚。俺の船に乗ったんだろ?」

どんどんどんどん強くなるりゅうを見てあたしはもう何も言えなかった。
こいつはもう死ぬ気で今から旅に出る。

「信じて待つのみ。正直怖いよ。でも俺はこのまま死ねない。俺が死んでもみうが生きていけるよう。必ず帰る。」

そう言われたらなんにも出来なかった。

りゅうに出会ってからはいつも死と隣り合わせ。
互いに寝る間も惜しんで会話して。
「吊り橋効果やね」と笑いながら愛を語った。

出会ってからの間に君は5回入院した。
その度に「もう帰ってこないかもしれない」と思いながらも帰りを待った。

その度に
「待たせてごめんね。ただいま」
と泣きながら連絡をくれた。

「俺頑張ったよ」

繰り返す吐血。
限界に達した脳萎縮。
発覚した胃がんのレベル4。

「ホントだったらもう歩けないんだって。それでも歩けるのはダンサーとしての筋肉があったのと。みうに逢いたいって気持ちだけ」

そこまで想ってくれた人がいなくなってどうして泣かずに毎日を過ごしていける?

いつもあたしの後を追いかけてた。
いつもあたしのことだけ考えてた。
いつも家族になることを望んでた。

余命少ないりゅうの願いを叶えようと子供たちにも協力を頼んだ。
不審に思いながらも子供たちは協力してくれた。
「ママがいいならいいよ」
そう言ってくれた子供たちに。
「俺の子供たちはいい子に育ってくれたね」と。
なんの疑いもせずに君は泣いて喜んだんだ。

辛いと言いながらもあたしが仕事の時にはほかのフォロワーの応援をして。
その文字を見る度に心が痛かった。

いつ死ぬか分からない中で。
あたしとの電話が心穏やかでいれると。
君の周りにいた人達に茶化されながらもあたしとの電話を楽しんだ。
君の代理人に感謝されたんだ。
「一時の安らぎをありがとう」と。

りゅうと連絡を取れなくなった後。
1つのメールが入った。

「荷物を郵送しました。必ず連絡するからとの事です」

連絡より先に荷物が届いた。

ハートに包まれた宝箱の中には華奢な指輪。
ディズニーの袋に入ったスティッチのキーホルダー。
君が使ってたミッキーの携帯クリーナー。
君の生まれ落ちた血筋の証。

レターパックに書かれた文字は震えてて。
とても綺麗な字だったね。

どんな想いで買い物してた?
どんな想いで宛名を書いた?
どんな想いでベッドの上にいた?

君の気持ちが痛いほど分かってたから。
もうなんにも出来なくて。
初めて子供たちの前で泣いた。
今まではどんなに苦しくても子供たちの前で泣いてはいけないと泣くことは無かった。
それすらも忘れてしまうほど泣き崩れてしまった。

また笑って話せると。
また一緒に夢を語れると。
次は必ず逢えると。
そう思って待っていたのに。

君はそのまま旅立った。

仕事中だったにも関わらず泣きわめいた。
立ち上がれなかった。
どこで何を吐き出しても癒えなくて。

「自分の顔を見るのが嫌だ」
頼んでも嫌がってたから無理強いはしなかったのに。
君は最後に髪を切った後の写メを送ってきた。
「髪はね。人形に使うから売れるんだ。」
「サーファーは髪を海の神と例えて髪を伸ばすんだ。髪を切ると命が縮まるっていう迷信がある。だから切りたくなかったけどそれでも俺は何かを残したい」
写メを見て愕然とした。
ここまで老化は進むのかと。
この時点で君の命はもう燻っているのだと分かっていた。

あたしに見て欲しかったんだよね。
「俺は頑張ったよ」と。
「俺は生きたよ」と。
「俺はここにいるよ」と。

ねぇりゅう?
私たちの笑い声が届いてますか?

今なら君の全てが分かる。

こんな普通の。
こんなに穏やかな毎日をどれだけ望んでいたのか。

君への供養として、君の望むものは全て叶えたつもり。

温かい味噌汁とおにぎり。
お揃いのTシャツ。
一緒に見たいと言った景色。
聴きたいと言っていた高い声。
並んだ同じ苗字の2人の名前。

最後の1つはまだ待っててよ。

君は代理人にこう言ってたと聞いた。
「食堂のマスターになるから食べに来てな」と。

最初の願いは特等席に客として座ることだった。
最後の願いはあたしと共にあたしの隣で食堂をやる事に変わっていたんだね。

ただ話を聞いていただけなのに。
ただ隙間を埋めただけなのに。
ただ自分らしく最後を迎えて欲しいと思っていただけなのに。

あたしが凄いんじゃない。
それだけ君の心の隙間は大きかったんだ。

居場所のない人達が穏やかに過ごせる場所。
それはうちら2人が欲しかったもの。
それが食堂という形になって。
それを叶えようと君は動いた。

何年かかるか分からない。
もしかしたら叶わないかもしれない。
それでも君が生きてきたように。
あたしも頑張って生きるから。

愛を語るのに歌を用いてお互いに送りあった。
その歌を聴く度にまた泣いちゃうんだ。

「生まれ変わったら桜の下でまた逢いましょう」
「きっとその時には笑って永遠を誓おう」
「愛し愛されてこの命は芽吹いて咲いて」
「色褪せない眼差しを胸に舞い散る願い」
「あぁあなたに あぁあなたに あぁあなたに ただ逢いたい」

ただ逢いたかった。
何もいらなかった。
生きていて欲しかった。

君と一緒に暮らした時のことを考えて、勤務形態を変えたじゃん?
今ね。
めちゃくちゃ忙しいんよ。
りゅうのことを想う時間もないほどに。
だから君が旅立って良かったんだと思う。
じゃなかったらお互いに気遣いあって生活が成り立たなかったんだと思うんだ。

そう思うようにしなきゃ。
君のいない毎日に耐えられない。

どんなに気を紛らわせてもふとした瞬間に流れ落ちる涙。
拭っても拭いきれない涙はきっと大きな海となるでしょう。

君がいた季節をブログに残した人がいた。
本音を言うなら消してもらいたい。
君は形に残されるのを嫌がっていたから。
そして。
あんな簡単に君のいた季節を残して貰いたくない。
でも代理人がOKを出したと言うなら仕方がない。
そのまま残されていくんだろうね。
「強く生きた人」として。

りゅうがくれたものを全て閉まってしまおうと思った。
でもやっぱり出来ないよ。
うちらの笑い声を聴いていて欲しい。
君が望んだ生活を聴いててよ。
この穏やかな生活をずっと守り続けるから。

ね?
ずっと一緒にいよう。

りゅう?

「ありがとう」

「愛してるよ」

泣くなってば!!!!

そう言ってたあたしが1番。
今も泣いてるんだ。

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