いつから絵を描くことが好きじゃなくなったんだろう


物心ついた頃から絵を描いていた。長らく絵を描くこと以上に楽しいことも現れなかった。

私は絶対絵の道に進むし、今後も絵を描き続けると確信を持って疑わなかった。

絵を描くためにあらゆるものを犠牲にしてのめり込んだ。

―現在23歳の私は、趣味の絵を全く描いていない。
"絵を描かなくなった"わけではない。頼まれたら描くし、人を喜ばせる手段として絵を送る。
今でも週1回は絵画教室へ行ってデッサンをしている。毎日1枚はクロッキーをやるようにしている。
ただ、それだけをしている。
ゲームで例えるなら、ここ数年レベリングをやり続けている。

正直、描きたい絵に追われるような感覚をここ数年感じていない。
私はただ現時点での自分のスキルを披露してるに過ぎず、そこになんの感情も乗せていない。
人より少し描けるから求められ、人より多く描くだけ。

絵が得意なだけで馬鹿にされにくい感じがあって、それで浅い人間関係を乗り切ってきた実感もある。
ただ、結果的にはそれ無しではやっていけない存在になってしまった。
絵に対しての情熱は無い。ただもっと上手くなるために練習するだけ。

あるとき父が、「上手いかもしれんけど好きじゃないやろ」と言ってきた。
父の言葉の意図としては、「好きならもっと沢山作品制作するはず。絵の道に進めるほどの愛が無い」という雰囲気だった。
当時は怒ったけど、否定もしきれなかった。
丁度作品制作を避け始めた時期だった。

軽い気持ちで美大受験を始めた。
極度に自己肯定感が低い自分は一般的な将来をイメージすることができず、上手くいく可能性のある道は絵の道しかないと思い込んでいた。

でも実際、そんな精神状態の人間に受験は厳しすぎた。
毎日毎日絵を評価される。辛い。
好きな色も、受験では控えろと言われる。辛い。
美大受験をする層は裕福な上に教育熱心な家庭が多くて、美大を目指すには貧乏な私の家や、子供の将来に無関心すぎる両親を憎く思った。当時は人のせいにしてばかりだったから。

そうして毎日を過ごすうちに、不本意ながら心が練習に囚われてしまった。そして今も抜け出せず、好きな絵を描くことが難しくなり、情熱を失い、そのまま。

最初は情熱を失ったなりに普通の社会人として生きていこうと思っていたのに、情熱を失った人生をどう楽しめば良いのか分からない。
他にも趣味はあるのに、何か空虚さが埋まらない。

このまま絵に対する情熱を失い続けたら人生への情熱を失い続けているのと一緒で、将来が少し怖い。
現時点でも昔に比べて自分を大切にできなくなったと感じる。

でもどうしようもない。情熱が湧かない。絵が好きとも言えない。ただ絵の無い人生が辛い。

絵を描いている間だけ息ができる人はどう大人になれば良いんだろう?

こんな人生を送らせるなら、ちゃんと才能も与えておいてくれ。

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