町田で電波を測定してみた ~ソフトバンク編~
どうも!
前回、町田で自分のdocomoの端末を使って電波測定をしましたが、今回は、ソフトバンクの端末を使って電波測定をしてみました!
1, 測定の前説
今回使用した端末は、皆さんおなじみの「iPhone12」!2020年10月23日に発売されているので、比較的新しい端末ですね。そのため、前回測定に使用したGalaxy S8よりスペックは高いです。つまり、通信速度の理論値が前回より大きいです。もちろん、端末自体のスペックの高さもありますが、やはり5Gが対応しているというのも通信速度においては非常に重要な点ですね。
そのため、前回の結果と単純比較はできないものの、ソフトバンクの基地局でどれくらい速度がでるか調べてみました!
ちなみにソフトバンク の5Gサービスは2020年春から始まっており、今なおサービスが継続して提供されています。最近では、LTEとコアを共用して電波を吹くパターン(NSA方式)に加えて、5G単体で電波を吹くパターン(SA方式)の提供を日本のキャリアで1番早く始めました。さすがソフトバンク!会社のバリューにNo.1と掲げているだけありますね!
さて、iPhone12はソフトバンクのどの周波数に対応しているのでしょうか?下図はiPhone12が対応している周波数で、そのうち赤線で引いたのがソフトバンクの周波数です。5Gがそれぞれ、n3(1.7GHz)、n28(700MHz)、n77(3.4GHz,3.9GHz)となっています。ちなみに、n77はソフトバンクにおいて3.4GHzと3.9GHzの2つの周波数を表すらしいので、どちらか、あるいはどちらも対応している可能性はありそうです。色々調べましたが、どちらも対応している説が濃厚です。
続いて、LTEはB1(2.1GHz)、B3(1.7GHz)、B8(900MHz)、B11(1.5GHz)、B28(700MHz)、B41(2.5GHz)、B42(3.5GHz)です。
ここで、図中のFDD-LTEとTD-LTEについて言及しましょう。前回の記事をお読みになった方は少しビビっときているかもしれませんが、FDD・TDは通信方式を表しています。正しくはFDDとTDDですね。
FDD(Frequency Division Duplex)は割り当てられた帯域をダウンリンク(DL)とアップリンク(UL)に半分ずつに分け、それぞれ同時に通信させる方式です。それに対し、TDD(Time Division Duplex)は全帯域を使いますが、時間によってDLとULを切り替えます。TDDでは全帯域を使っているので、一般的に、より大きい通信速度がでます。下図のような感じでイメージしていただければよいかと!
前回は2.0GHz(FDD)までした対応していなかったのが、今回はFDDだけでなく、TDDまで対応しています。さらに対応している周波数の種類も多いので、2つ以上の周波数のセル(基地局から吹かれた電波の届く範囲、Band1のセルという言い方をする)を同時に使うキャリアアグリゲーション(CA)ができ、通信速度が飛躍的に向上する可能性もあります。かなり期待値は大きいです!
残念ながらiPhone12のCAの周波数の組み合わせは公開されていないので(Apple社秘密多すぎ、、、)、測定時のoutputがどの周波数と組み合わさった結果なのかはよく分からないですが、とりあえず測定してみましょう!
2, 測定方法
今回は、「電話」と「5G Mark」というアプリを使います。
「電話」はいわゆる電話です笑。実はiPhoneでは電話アプリで「*3001#12345#*」と打って発信ボタンを押すと、電波測定モードになって、以下のような画面がでてくるんです!
色々良く分からないことが英語で書かれていますが、とりあえず今回使うのは、上から3番目の「Rach Attempt」と上から4番目の「Serving Cell Info」です。
「Rach Attempt」は、端末から基地局に信号を送った時に基地局から返ってきた情報が書かれています。基地局から端末が受け取っている電波の強さ(電界、RSRPともいう)もここで確認することができ、それを基に端末はどの基地局へ接続するかを決定します。今回様々な地点で測定を行うにあたり、電波の強さを同じにして測定を進めていくので、この情報が必要です。
下図は実際の中身です。今回は赤丸のRSRPが電界に相当するので、そこを合わせて測定します。
「Serving Cell Info」は、端末が今つかんでいるセルの情報が書かれています。今回端末がどのセルをつかんでいるのかを調べるために、セルの周波数が記載された、この情報が必要になってきます。
下図がその情報です。赤丸の部分が現在端末がつかんでいるセルの周波数を表しています。ここでいうとBand3(1.7GHz)をつかんでいますね。ちなみに、この周波数はあくまでLTEの情報らしく、5Gの情報はまだ見られないようです、、、。そのため、5Gでどの周波数をつかんでいるかは残念ながら今回は確認することはできませんでした。
上からの2番目、3番目のul_bwとdl_bwは参考までに見てほしい情報です。簡単に言うと、ULおよびDLで、使える帯域幅の内どれくらい使っているかを表しています。ここではBand3をつかんでいるため、DL/ULそれぞれ最大で使える帯域幅は7.5MHzです。最大を100としており、37という表示があるので、DL/ULともに7.5MHzのうちの約2.8MHzの帯域幅を使って通信していると分かります。これも通信速度には大きく寄与する要素になるので、一応今回の確認項目に入れておきました。
もう1つのアプリ「5G Mark」は前回の測定でも使いました。端末が今出せる通信速度を測定するためのアプリです。データをサーバー→基地局→端末へDL、あるいは端末→基地局→サーバーへULすることにより、通信速度が算出されます。通信速度はThroughput(略称 THP)と呼ばれており、単位はMbps(Mbit per sec)です。一秒間(sec)にどれくらいのデータ量(Mbit)が流れているかを表します。ちなみに、iPhone12では現状で最大DLが2.4Gbps、ULが182Mbpsでるそうです。ご参考までに!
さて、下図は「5G Mark」の測定結果が表示された画面です。
数字が横並びで2つ表示されていますね。左の下矢印がDL、右の上矢印がULのTHPを示しています。また、少し左下に行くと、「4G ソフトバンク」と書かれていますね。LTEで通信していることを表しています。もちろん、5Gにつながったら、ちゃんと「5G ソフトバンク」と表示されるそうです。そして、下半分は地図です。測定地点に「4G」と記載があります。残念ながら、このアプリでは通信した基地局の位置は見えませんが、おおよそ見当はつくので、次の章からは水色の点でそれを示しますね。
今回は、上記の2つのツールを用いて、どの周波数でどれくらい通信速度がでるのかを見ました!
3, 測定結果
測定場所➀
・電界と周波数の情報
・通信速度の情報(水色は通信したであろう基地局の場所)
一応、基地局自体の写真も撮ってきました!上にロウソクのような棒(実はアンテナ)が8本立っているものが基地局です!これ、ソフトバンク特有の基地局らしいです!
・基地局の画像
測定場所➁
・電界と周波数の情報
・通信速度の情報(水色は通信したであろう基地局の場所)
・基地局の画像
測定場所③
・電界と周波数の情報
・通信速度の情報(水色は通信したであろう基地局の場所)
・基地局画像
基地局の位置に関してはだいぶ怪しいです笑。水色の地点の割と真ん前で測定していたので、電界は-60dBmくらい出てもいいかなと思いましたが、-85dBmでした。もう少し遠くの基地局と通信していた可能性が大きいです。
以上が結果です。
下表にまとめてみました!(見づらい時は表をタップして拡大してみてください、すみません、、、)
今回は幸いにもLTE通信のみで測定を行うことができました。恐らく、測定場所がまだソフトバンクの5Gエリアになっていなかったのでしょう。町田駅からずいぶん離れていますからね。
結果としては、DL THPはBand42(3.5GHz),Band41(2.5GHz),Band3(1.7GHz)の順に、UL THPはBand3(1.7GHz),Band42(3.5GHz),Band41(2.5GHz)の順に小さくなっています。
えーっと、見ての通り、欠損値があったり、測定場所によって電界が一致していなかったりと、通信速度の比較には適さないデータとなってしまっています、、、。
ただ、それでもつっこみどころはありそうなので、つっこんでいきましょう!(グレーアウトされている部分はおそらく10なので、その前提で以降話を進めていきます)
4, 考察
さて、今回LTEでしか通信できなかったと記載しましたが、たしかにソフトバンクの5Gエリアには今回の測定場所は該当していませんでした。下図でピンク色に染まっている場所が5Gエリアですが、見事に測定場所(青丸)を避けるように展開が進められていますね笑。ここ周辺は見た限りマンションが多かったので、基地局建設の許可を管理人にとるのに時間がかかってしまうのかもしれませんね、、、。それか、それほど人もいないようなので、5G展開の優先度が低いエリアの可能性もありますね。
では、測定結果に触れていきましょうか。
まず、DL THPについて。
周波数が小さくなるにつれてTHPが小さくなるのは、想定通りですね。
ただ、Band41とBand42において、今回結果的に使われた帯域幅がどちらも10MHzであり、理論上どちらも同じくらいのTHPがでるはずです。いや、むしろ、電界が強いBand41の方がTHPが出るはずです。しかし、2つの周波数間で約62Mbpsの差分が生じました。
これはおそらく、CAが影響しているのではないかと考えられます。つまり、Band42の電波を吹いている基地局から他にもう1つの周波数の電波がBand42のセルに重なるように吹いており、その周波数の組み合わせにiPhone12が対応していたために、どちらの周波数からも端末はリソースを使うことができた、ということです(詳しくは前回記事を参照に)。今回はBand42では10MHz使っていましたが、他の周波数の数MHzの帯域幅も使っていたのではないでしょうか?ちなみに、Band41,42単体では理論上、約172Mbps出る想定で、それに限りなく近いことを考えると、CAを組んでいる可能性はかなり大きいですね。一般的にフィールドではこんなに理論値に近いTHPが単体のセルで測定されることは稀ですから、、、。
念のため、測定場所➀の基地局に他の周波数の電波が吹かれているか調べてみました。どんぴしゃり!結論から言うと、Band42とは別に、もう1つ他の周波数の電波が吹かれていそうでした。上図でつけた2つの赤丸、これはRRHという無線送受信装置で、周波数ごとに設置されています(例外あり)。端的に言うと、携帯から受信した情報をアナログからデジタルに、携帯に送信する情報をデジタルからアナログに変換している装置です。この装置の数を数えることでおおよそ該当する基地局からいくつの周波数の電波が発射されているかが分かります。
実際に下の赤丸の方のRRHを近くで見てみました。すると、上2つの図から、Huawei製で3580-3560MHzの20MHzの帯域幅を使って通信していることが分かりました。つまり、確認した下の方のRRHはBand42(3.5GHz)のRRHですので、上の方のRRHで別の周波数を吹いていそうですね。ただ、今回はないとはおもいますが、RRHを設置しているだけで、起動していない場合もあるので、一概にRRHの数がその基地局から吹かれている周波数の数だとは言えないということをご認識ください。
さて、Band42の方ではCAをしていそうだという話でしたが、上の情報からもその可能性はかなり大きいですね。ちなみに、試しに測定場所➀でもう1回測定してみると、DLは245Mbps出ました笑。
次に、Band41だけを見てみましょう。111.32Mbpsと、理論値(約172Mbps)の約65%のTHPしか出ていませんが、これは前回もお話ししたとおり、周りの環境による影響ではないかと思います。DLを使っているユーザーが測定の時に同じセルにいた場合は、基地局はそのユーザーにもリソースを割り当てなければならないので、自然とTHPは減少します。また、その他の基地局から吹かれている電波との干渉によって、電波の品質が劣化することも頻繁にあります。今回は理論値の6割以上のTHPがでているので、かなり良い速度であるとは思いますが。
Band3については使用帯域幅も狭く、電界も弱いので、この結果は妥当かなと思います。理論的には約130Mbps出ますが、上記の理由でTHPは出ていなさそうですね。ただ、ソフトバンクのBand3はかなり特殊な形で電波を吹いており、それも原因の1つとして挙げられます。
ソフトバンクのBand3では現在DSSという技術を使って、電波を吹いています。これは5GとLTEの電波を同時に同じアンテナから吹くという技術です。この技術を使うと、5Gが使える反面、5G/LTE同時にリソースを使うがために、LTEに割かれるはずのリソースのうち、5G用にいくつか使われてしまいます。端末に割り当てられるリソースが比較的少ないがために、低THPが記録されたのかもしれません。理論値として提示した130MbpsはおそらくDSSを意識せずに算出したと思うので、大きな差分が生じたのではないでしょうか?わざわざ新しい基地局を建設するより設定が楽なので、この技術の需要は低くはないですが、今までのLTEのTHPが小さくなってしまうのは、なかなか考えものですね、、、。
長くなりましたが、今度はUL THPについて見ていきましょうか。
UL THPについて、今回端末がつかんだ中で最も低い周波数のBand3(1.7GHz)がBand41(2.5GHz),42(3.5GHz)よりTHPが大きい、という想定外の結果が得られました。
もちろん、こちらも周りの環境に影響を受けているのは間違いないです。Band41,42の測定時に、同じセル内にデータのULを行っているユーザーが多数いれば、UL THPが小さくなるのも分かります。Band41,42は広帯域なので、多くのユーザーが使うことができます。そのため、私に割り当てらるUL用のリソースが少なかった可能性は大きいです。また、リソースの量だけでなく、もし電波の品質が良ければ、スマホから送られたデジタルデータをアナログデータに変調する方式が変わり、端末が一度に電波に乗せられるデータ量が多くなります。これも大きくTHPの差分を生む原因となり得ます。詳しくは述べませんが、QAMというワードを検索すると詳細情報が出てくるかもしれません。ぜひ検索を!
これに加えて、Band3とBand41,42の通信方式の違いも原因として挙げられると考えられます。先ほど記述したように、Band3はFDD、Band41,42はTDDという通信方式を使っています。前者では同時にDLとULができるのに対し、後者では一定時間ごとにDLとULを切り替えなければなりません。そのため、TDDでは時間によってはULを使えない時間が出てきます(使えないと言っても数m秒程度なので体感は分かりません)。今回使用した5G MarkがどのようにTHPを出力しているかは分かりませんが、UL THPが使えていない時間を含めてTHPを平均化しているなどの場合は、TDDのTHPは低く見えてしまいますね。(さすがにそこは考慮してほしいところですが、、、)
ちなみに、DLも同じことが言えそうですが、おそらく需要の高いDLの方が使える時間が長く設定されているはずです。その分、ULの方が使える時間が短くなり、DLより上記の影響は受けそうだなと思いました。
Band41とBand42を比べるとどうでしょうか?2倍近くBand42のTHPが大きく計上されていますね。ULの使用帯域幅もこの2つの周波数は結果的に同じであったため、DLと同じように、CAの影響なのではと思います。前回、端末によってはDLのCAは対応しているが、UL CAは対応していないと記載しました。今回使用したiPhone12が対応しているかは不透明であるため、断言はできないですが、UL CAに対応している可能性は大です。もちろん、先ほども記載したように、極端に測定場所での電波の品質が良かった、悪かったなどの原因も考えられます。
ちなみに、UL CAに対応していない端末が多いのは、CA時に多くのデータを送るために必要な送信電力を端末がもっていないからです。一方で、基地局はCA時のデータ送信に十分な電力をもっているので、DLの方は対応しているケースが多いです。
5, 感想
今回はiPhone12でソフトバンクの基地局と通信させてみました。前回と比べて、端末がTDDの周波数をつかんだせいか、かなり大きいTHPが出ていましたね!また、ソフトバンクのBand3の扱いも身をもって実感できたので、若干感動しました!
6, おまけ
測定場所の近くで2つも楽天の基地局を見つけました!
楽天の基地局はアンテナにRRHが張り付いているのが特徴です。RRHとアンテナの間ではケーブルを通じてデータ伝送を行いますが、どんなに頑張っても、その間に電波は損失してしまいます。最大限損失を無くすために、楽天はこのような形の基地局を展開したのでしょう。
一方で、高い場所にRRHがあると、工事の際に上まで登らないと作業できないというデメリットもあります。あと、RRHの情報が見られないのも、個人的には嫌ですね、、、笑。
それにしても楽天、基地局展開頑張っていますね!今では約3万局(5G・LTEあわせて)も立ち上がっており、人口カバー率は驚異の94.3%!スピード感が凄まじい!
今後のキャリア3社と楽天の競争が楽しみですね!
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