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僕が着たいと思えるプリントTは?/S&S OPEN TALK #52

四国にあるセレクトショップ SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。

その内容は、商品在庫の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様です。しかしそんな中「これは多くの方も同じお悩みをお持ちのはず」と感じるご質問も少なくありません。さらにそういったものほど短文では返しづらいのが正直なところ。
そこでこのnoteにて「マガジン」という形で回答させていただくことで、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただければと思います。

名付けて『OPEN TALK』今回はこんなメッセージです。

✉️

歳を重ねてくると、着る物が無地ばかりになってきました。プリントTシャツなんて何十年も着ていません。それが時折寂しくなるんです。岡崎さんはプリントTシャツ着ますか?今プリントティーを着るならどういう物を着ますか?(福井県 M様)

いつもありがとうございます。遠方よりいつもご注文いただくM様からのご質問。M様は確か僕と同世代か、少し上の方だったと記憶しておりますが、プリントTシャツ、そういえば僕も10年近く着てません。

着るか着ないかはさておき、「時折寂しくなる」お気持ちとてもわかります!
そこで、先日のフーディー同様、この機会にプリントTについても歴史から紐解いてみましょう。

Tシャツの歴史

Tシャツの起源は、意外なことにも19世紀のヨーロッパ、イギリスやドイツなどが発祥でないかと言われています。
ただこの時代、ヨーロッパでは肌を露出すること自体が下品だとされていたことからもわかるように、Tシャツというのはあくまで下着として作られたアイテムでした。

第一次世界大戦時、ウール素材のインナーしかなかったアメリカ兵が、すでに綿のインナー(Tシャツ)を着ていたヨーロッパ諸国の兵士達を見て、自国に持ち帰り、アメリカ軍の肌着として採用します。

そこからしばらくはヨーロッパ同様、下着や肌着扱いでしたが、さすが合理主義のアメリカ。その着心地と扱いやすさが広まり、やがて兵士だけではなく大学の運動着として採用されました。そこからさまざまな人たちがトレーニングシャツ(Tシャツの「T」は「Training」の頭文字)として着るようになり、徐々に今の形へと変化していきます。

最初は企業や映画の販促、大学の名前をプリントしたのが始まり、そこから1960年台に起こるフラワームーブメント(ヒッピー文化)、バンドムーブメントに乗っかってさらに拡大していくのです。
※この辺り、かなり省略しましたがもっと詳しく知りたい方はぜひご自身でもお調べいただくと、面白い話がたくさんあります。

・・・

なぜ、僕はプリントTを着なくなったのでしょうか?
Tシャツに限らず、年齢を重ねるごとに、シンプルで着心地の良いものを選んでしまうようになって、無地のほうが長く着られると、いつしかプリントTと疎遠になっていきました。

つまり理由は「プリントの意味に引っ張られるのが嫌」でした。
バンドTは趣味嗜好を不特定多数に披露している気がして無理…、カレッジプリントも別になんの縁もない大学なので無理…、キャラクター物も流石につらい…、文字に意味がありすぎるのも何かしら引っ張られそうで無理….。
と、自意識の問題と言ってしまえばそれまでですが(笑)プリントに全体の印象を左右されるのであれば、ない方が絶対いい、という個人的な判断です。

・・・

プリントTを再定義する

そんな僕が、「今プリントティーを着るならどういう物を着」るのか?
これは非常に面白いご質問!このご質問をいただいてから数日考え、やっぱり着ません、と伝える方が嘘がないのではないか?でもそれはただ思考を放棄しているだけでは?など脳内で堂々巡りをした結果、こういうものなら着てもいいかも!と思えるTシャツにたどり着きました。

それは…全く意味のないプリントT。
例えば、ABCとか。(大真面目です!)

プリントは全く無意味だけど、何かしら引かれるシンプルでキャッチーなデザインのTシャツなら欲しいかもしれません。…ひとまず自分のためにも、もう少し深掘りするべく、ここからは大きく分けて、以下の三つを考えてみます。

1. プリント手法について
2. 使用フォントについて
3. プリント位置について

1. プリント手法について

一口にプリントといってもその手法と種類は様々あります。

シルクスクリーンプリント
版画のように1色ずつ色をのせていく手法で、一色ごとに専用の版にインクをつけて刷り、色をのせます。そのためコストの面で少量生産には向かない一方で、高品質で耐久性も良く、市場では最も多く使われている手法です。

インクジェットプリント
生地に直接インクを吹きつけていく手法。色ごとに版を用意する必要がなく、コストを抑えた手法とも言えます。写真データをそのままプリントしたい場合などに、多く採用されます。

ラバープリント
生地の上にインクを乗せてプリントする手法。濃い色も薄い色もはっきりする安定したプリント手法と言えますが、プリントの主張が強く出るので、ナチュラルなイメージには向きません。

染み込みプリント
こちらはビンテージによくみられる手法。非常に柔らかな表情と、着こむほど馴染んでいくプリント手法です。ただ、濃い色のボディーにはプリントしづらいのが難点。

フロッキープリント
フェルト素材をデザインで切り抜きいて、生地に圧着することでプリントする手法。ポピュラーかつ手触りが楽しめるため、子供服などで多く見かける手法です。

他にも細かく挙げればたくさんありますが、仕上がりや経年を好む僕が選ぶなら、シルクスクリーンプリント、染み込みプリント、あたりでしょうか。

・・・

2. 使用フォントについて

意味のもたない文字で、シンプルなデザインだとしても、フォントまでまったく根拠がないものでは、着たいと思えるものにはなりません。
明朝体や手書き文字、筆書体など、それこそフォントの種類は無限にありますが、ここも単純に好みなものを選びたい。
そこで僕好みのフォントですが、それはベーシックなゴシック体。
まったく色のついていない文字でのプリントが、自分が着るなら嬉しいですね。

3. 理想のプリント場所は?

プリントが施される場所。これは「フロント中央やや上部」一択です。
胸部分に小さくプリントされたものは「〇〇工務店」などと印字されたポロシャツを想像いただければお分かりのように、チーム感を連想させます。
一方バックプリントは、バイカーを想起しますので、少しやんちゃな印象を受けます。消去法ですが、ここはベーシックに、胸元一択。

まとめ

以上をまとめると、僕が着たいプリントTがこちら。

□プリントは文字のみ、かつそれ自体に意味を持たない言葉を採用
□手法はシルクスクリーン、もしくは染み込みプリントを採用
□フォントはベーシックなゴシック体を採用
□プリント位置は、フロント中央やや上部

素材やボディーのシルエットは理想的なものとして仮定しますが、これが僕の理想のプリントTシャツです。
結局、それを着ることで何かしらの主張をされたくない、という内容に終始し、つまりは「それなら無地Tでいいのでは?」という堂々巡りとなってしまいました。

キャップのロゴなどもそうですが、文字要素は実は想像以上に洋服のコーディネートに影響するものなんです。その小さな一箇所で、コーディネート全体の印象が180度変わって見えることだってあります。
そういった意味では、何十万とする洋服を買うよりも、数千円のTシャツを買う方が、僕はとても慎重になります。

とはいえ、普段そういえば考えたこともない「プリントT」について、今回は色々と思いを巡らす良い経験をいただきました。
今後もどんなご質問でもお待ちしております!

✉️

今週は、以上です。
ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。
個別の商品に関するご質問ももちろん歓迎です。ご質問は、LINE@(http://slow-and-steady.com/news/lineat/)の他に、下記メッセージフォームより随時受けつけております。どうぞお気軽にご連絡ください。

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