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革靴についてのマイルール/S&S OPEN TALK #22

SLOW&STEADY ではオープン直後から、お客様からの相談窓口として、LINE@を利用しています。
その内容は、商品の在庫状況の確認から始まり、商品ご購入後のアフターケアに至るまで多種多様ですが、そんな中「これは多くの方も同じようなお悩みをお持ちのはず」と感じるようなご質問も少なくありません。さらに、そういったご質問ほど短文では返しづらいのが正直なところで、そこでこの度、そんな魅力的なご質問の数々をピックアップさせていただき、ここnoteにてマガジンという形で回答させていただく、という試みを開始いたします。

名付けて『OPEN TALK』今回はこんなメッセージからです。

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「革靴についてのマイルール」

毎週末、わくわくしながらopen talk拝見しております。slow and steadyのスタッフさん常連さん達は革靴を履いている方が多いように見受けられます。私自身も、革靴を3種類所有しているのですが家に出る前に悩んでしまう事も少なくありません。散々悩んだ挙句考える事を放棄して、履きやすくて脱ぎやすいからという安易な理由でいつも同じローファーを履いています。岡崎さんが革靴を選択する際に何か決め事はありますか? S様

「その人が履いている靴は、その人の人格そのものを表すものである」とはイタリアのことわざですが、「地に足をつける」「足場を固める」「足元を見る」「揚げ足を取る」など、足に関する慣用句は日本でも枚挙にいとまがありません。

これらはそのまま、はるか昔の日本に生きていた人々の「足元の意識」に由来します。江戸時代、人々は城下町周辺では軽装の草履を履き、旅などで遠路を行く際には、少し重装備なもの(いまで言うところの「靴下と草履が合わさったようなもの」)を履いていました。さらに山道を行く際には、虫除けが付いたものを用意する人もいたようで、つまり「靴を状況により変えられる人」=「場所により臨機応変な対応ができる人」と、その人を表す言葉に「足」が多く用いられるようになります。
ここからは僕の考察ですが、身分制度が根強く蔓延っていた江戸時代では、草履を何足も所有し場所に応じた装いができる人は限られていたはずで、相手の身分や生活水準を簡単に判断できる手段としても、「足元を見る」ことが手っ取り早かったのかもしれません。

そんな現在。僕も初めて会う方は、無意識に足元を見てしまいます。
綺麗好きな人、大雑把な人、繊細な人と、履物を見ればその人の個性・性格、生活習慣がある程度想像できてしまうのは恐ろしく、再三にわたりお伝えすることですが、「足元と手首」には、その人の個性が見事に現れます。

そんな中で、僕が最低限、気を使っていることは、「シューズの色とベルトの色を合わせる」たったそれだけです。
基本、黒か茶系しか履かないのですが、これは、スーツなどの着こなしにも通ずる当たり前のルールで、ベルトとシューズの色があっていないと、性分として我慢なりません。

これはもしかして、女性の方が下着に感じる意識なのでは?と邪推しながらも、昔は「ショップ店員は、一週間単位で毎日違う靴を履いて出勤する」ようなことが当たり前になっていた頃もあったので驚きですよね。
歳を重ねるごとに「気に入ったシューズは毎日履きたい」と意識は変化し、今では年間履いている靴が10種類もありません。それすら年々減っていっています。

その代わり、同じ革靴を履き続ければ当然ダメージも蓄積していきますので、同じものを2〜3足所有し、日替わりで履くようになりました。つまり僕の場合、靴を所有する欲求の半分以上が、お洒落のためではなく、お気に入りの靴を長く使うためという理由になっています。(ちなみに当店では、随時10足ほど、エイジングサンプルとして、私物を展示しています)

最後に絶対的に必要となるのは清潔感!適度なメンテナンスを定期的に行いながら、良い状態で着用することは、お洒落以前に最低限の身だしなみです。
「楽だから」という理由で、同じものを履き続けるのは厳禁。履き続けることによるシューズのダメージも考えて、メンテナンスやローテーションを心掛けていただくことが、湾曲しますが、いただいたご質問のお答えとなります。

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「作り手と作るもの」

初めて質問します。お店では、数多くのイベントが開催されていますが、個人的に一番楽しみなのは各ブランドのデザイナーさんが直接接客してくださる別注商品のPOPUPイベントです。私は、直接デザイナーさんと話した際にデザイナーさんの人柄とそのブランド洋服が呼応しているように感じます。岡崎さんは仕事柄多くのデザイナーさんと関わりがあると思うのですが、やはり作り手の性格や人柄などの内面的な部分は洋服に現れるものなのでしょうか?
徳島県/男性/Sijima様

過去にも「作り手が透けて見える」などの言葉でBLOGを綴った記憶もありますが、深く長く、ひとつのブランドに接していると、自然と作り手本人の性格や人柄、または思想のような、内面的な部分と製品との繋がりを感じるものです。
優れた製品とは優れた作り手がいてこそ生まれるもので、優れた作り手ほど、製品に、そのものが持つ以上の魅力が宿るのは、長くこの仕事を続けてきて間違いありません。

では、それを感じられないブランドはダメなのか?
そう問われれば、必ずしもそうではありません。それはそのものが持つ「濃度」に強く関係します。
自分の全てを賭して物を生み出しているデザイナーさんは、僕の知るところでは皆一様に、人には理解できないであろう苦悩を抱えながら、譲れないプライドや信念を必ずお持ちです。
しかしブランドの規模が大きければ、それを動かす人数も必然的に多くなります。そうなれば当然、デザイナーの信念や想いに加えて、ブランド戦略となるマーケティングにも複数の方が参加することとなり、ブランド運営のため必要となる事柄に比例して、作りたいものだけを作っているわけにはいかなくなります。
つまり「モノから滲み出る作り手らしさ」ではなく「ブランドらしさを兼ね備えつつ進化すること」が求められるのです。

現在、エルメス(メンズ)を支えているデザイナーは?と尋ねられて、答えられる人はごく一部だと思います。僕もとっさに聞かれたらその名を即答できるか不安ですが、当時の社長にその才能を見出され、1988年エルメスのメンズデザイナーに抜擢、就任されて以降、26年間にも渡って今なおエルメスのメンズコレクションを支えるのは、ヴェロニク・ニシャニアンという方で、実は女性の方。
果たしてエルメスの洋服を好んで着る方の、どれほどがこれを知っているでしょうか。これは、洋服になにを重視するのか、という話です。

大量生産の商品以外は、どんなものでも「作り手の想い」が詰まっているはずで、表層に上がらなくとも、必ず内包されています。
僕がもし「作り手をしっかり感じるものしか並べたくない」というのであれば、極端な話、僕の店には母親の手作りの洋服しか並ばないわけで、それでは流石に経営は困難でしょう(笑)

だからこそ当店では、作り手とお客さんを繋ぐイベントを定期的に実施しています。直接デザイナーの方にお話を伺えるというのは大変貴重なことですので、そういった体験を通して、様々な視点で洋服を捉えていただき、本当に自分が欲しいと思うモノを選んでいただきたい、そう思っています。

慣れてくると、顔すら知らないデザイナーの方と、洋服を通して繋がる感覚を覚えます。それがただの自己満足だとしても、より洋服選びは楽しくなるはずです。

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今週は、以上です。
最後に6月11日から明日まで、開催しております店内イベント「KLASICA POP-UP STORE」のお知らせ。

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初日より多くの方にご来店いただき、誠にありがとうございます!
イベント詳細はこちら、アイテム詳細については随時当店 Instagram にて公開しておりますとともに、BLOGでは、当イベントにてリリースされたリミテッドアイテムの全てを公開中。お時間合う方はぜひ、この機会にお立ち寄りくださいませ!!

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ここでは、あくまで僕の答えられる範囲内にはなりますが、このマガジンを使って、皆様からお寄せいただく「洋服に関するご質問やお悩み」を、ざっくばらんにご紹介しております。

個別の商品に関するご質問ももちろん歓迎です。ご質問は、LINE@の他に、下記メッセージフォームより随時受けつけております。どうぞお気軽にご連絡ください。

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