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享介が「双子の片割れ」から「蒼井享介」になった日

突如、モバエムから解答を与えられてしまったオタクのMobage版アイドルマスターSideM はじける魅力!レモンライブ感想文です。


1.蒼井享介は、「蒼井悠介の双子の弟」である


蒼井享介は、「蒼井悠介の双子の弟」である。』

上記の文を読んでどう思われるでしょうか。
事実、蒼井享介は蒼井悠介の双子の弟です。
だから、そうだね、事実だね。という感じでしょうか。

私にとって「蒼井悠介の弟である」ことは、事実以上に重く、蒼井享介の存在そのものを表す文でした。

蒼井享介の意気込み台詞

これは蒼井享介のアイドル図鑑で真っ先に表示されるセリフです。
Nの享介はチュートリアルでレッスン用の餌として出てくるぐらいで、大半のPがドラマチックスターズの次に目にするカードでしょう。

一方、悠介のカードはNが存在しません。
Rのみ、かつ、入手が難しめで、大半のPが悠介に出会うのはかなり後になります。
つまりアニメもエムステもサイスタも無かった頃の大半の初心者Pは
「蒼井悠介?誰」という状態で、享介から「俺は蒼井悠介の弟だ」と名乗られるわけです。

蒼井悠介の意気込み台詞

いっぽう蒼井悠介ですが、享介の自己紹介とは明らかに異なる点があります。
悠介は「蒼井享介の兄だ」とは名乗らず、「やっと会えた。待ってたぜ」とPに語り掛けます。
自己紹介が自身の存在そのものなんですね。

初対面時点で蒼井享介は「蒼井悠介の双子の弟」、蒼井悠介は「蒼井悠介」として、Pとの邂逅を果たします。

と、運営会社すら違った頃の最初期台詞を擦っているわけなんですが
「蒼井悠介の双子の弟」であることは、このあともサービス開始8周年を迎えたばかりの今でも、蒼井享介にとって切り離せないものになります。


2.蒼井享介が「片割れ」から脱するとき

初期の蒼井享介は「蒼井悠介の双子の弟」=蒼井悠介の片割れの存在であることがアイデンティティでした。
故に、それを奪われることに対して怯えを見せていました。

悠介が怪我をしたことで失踪するサッカー選手時代の享介
(W雑誌通常号「やっぱり二人で」後編より)
(増刊号 双子星の涙「双子星の約束」より)


享介が「双子星の涙」を演じて、最愛の兄に先立たれるポルックスに自分を重ねてしまいボロボロと泣く姿はいつまでも印象に残っています。

悠介も、双子ふたりであることに対しての拘りは非常に強いです。
兄弟想いぶりは享介以上かもしれないぐらい、本当に、行動原理が享介のためだし、享介の存在に拘っています
蒼井悠介は趣味もサッカー得意なこともサッカーのサッカーに産まれてサッカーに生きた天才サッカー少年です。
その悠介が怪我で人生の全てと言ってもいいくらいのサッカーを奪われても抜け殻にならずにアイドルになったのだって、享介と一緒にまたミラクルプレイがしたいから。(1stライブ幕間より)

(W雑誌通常号「やっぱり二人で」後編より)


ただ、享介は悠介の双子の弟であるために兄に必要とされたいのに対して、悠介は自己の価値を上げることで兄弟で最強になりたい!の方向なんですよね。
それは蒼井悠介のアイデンティティが蒼井悠介自身だから。

もっといろんなことにチャレンジしてみたい悠介
【Animal Live】蒼井 悠介+

その後の悠介はアイドルとしてもめきめきと成長を見せます。

享介のためにも、自分の力で頑張りたい悠介と、悠介に必要とされることがアイデンティティになっている享介。
このあと双子はお互いを深く想い合っているにも関わらず、すれ違い出します。

色々と考えてアドリブを入れるようになった悠介
(Lighting Ceremony Live イベントストーリー09より)
自分は必要とされているのか、不安になる享介。
(増刊号Lighting Ceremony Live「カウントダウン」より)
どんどん一人で出来るようになっていく悠介を見てモヤモヤする享介。
(増刊号Wonderful Animal Live「初めての気持ち」より)

この件はイベントを4つくらい跨いで体感かなり長いことすれ違い続けたのですが、アイドルTV!秋の大運動会2016で悠介の自立に関する享介の問題は一旦ケリが付きます。

ストーリー冒頭、絶賛すれ違い中の兄弟。
(アイドルTV!秋の大運動会2016 イベントストーリー03より)

享介
「…なんでさっき、俺をかばったんだよ。放っとけばいいのに。」
悠介
「大切な兄弟を助けないわけないだろ。ずっと助け合ってきたじゃん。」
「けど…最近の享介はオレの心配ばっか。享介だけで頑張ろうとしてる。」
「オレだって、享介をアシストしたい。享介と2人で一緒に、並んで走りたいんだ!!」
享介
「俺、ずっと…悠介には俺が必要だって、思ってた。でも…違ったんだな。」
「俺にこそ、悠介が必要だったんだ。それなのに…俺、悠介の成長に焦って…」
「嫉妬したりして、最低だ…本当に…ごめん。」
悠介
「オレもゴメンな。オレにとっても享介はなくちゃならない存在なんだ。」
「自分たちの足で前に進んで、疲れたときはお互い助け合おうぜ!」
「支え合うって、そういうことだろ?」
「…次の二人三脚、頑張ろうな!享介!」

アイドルTV!秋の大運動会2016イベントストーリー07より

悠介
(…この感覚、どこかで…そうだ。ピッチを走ってた頃の感覚だ)
享介
「悠介ー!頑張れー!!」
悠介
(享介の声だ…うん。オレ、頑張るよ。最後まで…死ぬ気で頑張る!)
(ゴールテープが見える…あのテープは、享介を過去に縛ってる鎖…)
(見てろ…オレの…オレたちの力で、あれを完全に断ち切ってやる!)

享介
「…やった!!1位だ…やっぱり、悠介はすごいよ!」
悠介
「ううん…オレだけじゃない。これがオレと享介の実力ってね!」
「蒼井兄弟、完全復活!『オレたち』のサイコーのパフォーマンスを見てくれ!」

アイドルTV!秋の大運動会2016イベントストーリー09より

享介は自分こそが悠介を必要とし、自立していく悠介に嫉妬していたことに気が付き謝ります。
悠介もしっかり享介がなくちゃならない存在であると伝えて、双子の間のすれ違いが解消しました。

3.アイデンティティを探す蒼井享介

すれ違いが解消し、また悠介の成長を前向きに受け容れるようになった享介は、変化を見せます。

「2人の世界」から、世界が広がった享介
【SP@RKLING TIME】蒼井享介+

これまで通りWとして活動しながら、ソロの仕事も頑張る方針で活動の幅を広げたり、越境で他ユニットとの絡みも増えるようになりました。

玄武、漣、直央、雨彦と共に越境ユニットで香川のイベントをこなす享介。
怖がる直央の様子に気付いたり漣の対応をしたり
メンバーのパーソナルを把握して動いている。
(ORIGIN@L PIECES in 香川 イベントストーリーより)

この時期享介はアイドルの仕事で特に問題を抱える様子はありませんでしたし、悠介との関係も良好です。
順調にキャリアを積んでいくいっぽうで、特に大きな変化はあまり無い時期でした。

対・Pへの距離の近さを除いては。

すっかり元気になった享介はPにどんどん心を開き……

【君にお届け】蒼井享介
【W-ATTACKER】蒼井享介 信頼度MAX台詞
(ホワイトデー感謝祭2018より)

開き過ぎじゃね??????

アイドルとしての蒼井悠介は、最初期からずっとブレません。
自分を高めること、そして享介と一緒に最高の双子アイドルをやること。

弟が何よりも大事な悠介。
弟想いを出せば出すほど、不思議と悠介は自立した印象を受けます。

享介は……尽くす(?)相手にPが増えただけで、結局アイデンティティは他者依存のまま変わっていないのでは?と思っていました。そんな私の思いはよそに距離感が近づくいっぽうの享介。

知らん間に靴を贈っていたP。

このときは、どうしてこんなに懐いてくるのかよく分かりませんでした。

享介は315プロの皆と打ち解けてきて、越境ユニットでのお仕事も問題なくこなすようになったとは言っても、ゲーム組や19歳組、甘党会のようにユニット越境で休日に遊ぶような仲良しのアイドルの存在は思い当たりません。

悠介が自立した寂しさをPで埋めている……?
それともPラブ要素を付ければ需要が出るのでそういう扱いにしている……?
もうモバエム運営も蒼井享介というキャラクターを扱いあぐねているのでは……??
と、戸惑いつつもPに懐く享介をそういうものとして受け容れていました。

4.蒼井享介、「蒼井享介」に辿り着く

そうして迎えた今回のレモンライブ。

蒼井享介はPR対象のレモネードを飲み、レモンカフェ店長のレモンに対する想いを聞いて、ライブの演出担当を申し出ます。

(はじける魅力!レモンライブ イベントストーリー02より)


アイドル持ち込みのアイデアがライブに盛り込まれる場面はこれまでも数え切れないほどありました。
が、今回はそうではなく、ライブのコンセプトから小道具、衣装デザイン、セットリストや振り付けまでの全てを享介がひとりでプロデュースすることを本人が申し出たのです。

ライブの衣装デザインを決める享介
(イベントストーリー03より)
涼にライブコンセプトの確認を取る享介。
Pより有能かもしれない
(イベントストーリー03より)

これは、享介にとって明確な転機です。
享介は別にレモン大好きアイドルじゃないし、オファー側が享介を指名したわけでもありません。
享介の中で前から温めていたことだったのでしょう。やりたいことが明確に固まったタイミングだったので、悠介にも相談せすに自ら申し出たのです。

詳しくは聞いていない悠介。それでも享介のことを全面的に信じてる。
(ストーリー04より)

これは私にとって、noteのアカウントをわざわざ取ってこんな記事を書きだすぐらいには衝撃でした。

レモンライブのストーリーを経てから改めて思い返してみればプロデュース的なことをやりたがる兆候はあったんですよね。

劇団あおいを立ち上げ、キリオ、直央、薫にオファーする享介
(ホワイトデー感謝祭2018より)

「享」の字には「神に供物を捧げる」という源義があるそうです。
蒼井享介は蒼井悠介の双子の片割れとして産まれたが故に、「なにかの片割れである」命運を背負っているアイドルでした。

私は当初は、これは作品内で問題視されて矯正されると思っていました。
実際初期の享介は悠介に依存していてすごく不安定でしたし、それは大運動会で一旦脱出して良かったと思っています。

でも、やっぱり悠介の片割れとしてこれまでサポートして培ってきた能力自体は享介にとって大切な素養だったんです。
アイドルマスターSideMは、8年という時間をかけてじっくりと形を変えながら、これを享介の唯一無二のアイデンティティとして仕立て上げたのです。

Pにもただベタベタしていたわけではなくて、プロデューサーの在り方や仕事ぶりにしっかり興味を持って見ていたんですね。
享介自身のアイデンティティの目指す先に居た存在が、Pだったってこと。

監督は俺の理想だよ!←文字通りの意味だった。
(蒼井享介のリーダー台詞)

大運動会以降の享介は「蒼井悠介の双子の弟」から、「蒼井享介」になる過程で、Pはそのピースの1つだったのです。

レモンライブのストーリー06のやり取りで、享介の口から今回のライブ演出を申し出た経緯が語られます。

享介
「…俺さ、サッカーしてる時は意識してなかったんだけど、」
「アイドルになってから、悠介と自分の違いについて考えるようになったんだ。」
悠介
「えっ?」
享介
「俺たちは双子ってことを活かしたパフォーマンスが得意だけど、」
「例えばその時の気分でレモネードのトッピングを変えるみたいに、」
「たまには俺と悠介、それぞれ違う魅せ方があってもいいんじゃないかな。」
「…この前、和紙工房をPRしたとき、自分の魅せ方に悩む悠介を見て、」
「俺の強みはなんだろうって思ったんだ。」
悠介
「おまえ、もしかしてそれで今回のライブの演出したいって…」
享介
「うん。今までも悠介のことは一番近くにいるライバルだと思ってきたけど、」
「俺だって『主役』を目指すから!」
悠介
「…あったりまえだろ!オレたちは2人とも主役だ!」

はじける魅力!レモンライブイベントストーリー06より

Mobage版アイドルマスターSideM ~完~
のエンディングロール流れるかと思った。

享介の「俺だって『主役』を目指すから!」
に対する悠介の「…あったりまえだろ!オレたちは2人とも主役だ!」

二人のこれまでとこれからが詰まっていて何度でも噛み締めたいやり取りです。

享介は主役を目指すし、その上で活かす自分の強みがこれまで片割れであることで培ってきたサポート力なの、まさにアイドルマスターSideMの強みであるところのアイドル描写力だなと思いました。

そしてライブは無事成功します。

ストーリー08より

ふつうに嬉し過ぎて感情グッチャグチャになった。


5.総括

アイドルマスターSideMのおたく、8年やってて良かった。
8年……いや……8年!?!?!?!?て本当にびっくりしますけど、これは8年経ないと出来ないAHA体験だったと思います。
このバチバチバチッとバラバラに見えていた全てが繋がる瞬間。
一体いつから決まっていたんでしょうかね。享介がこうなること。
結局私はアイドルマスターSideMの敷いたレールの上を歩かされていたのかもしれない……

まあ……ただ事実を言えば享介がレモンライブのプロデュースをやることになった!というただそれだけのことなのですが
私にとってはまさしく担当アイドルの在り方についての解答が与えられた瞬間だったわけで、たいへんな衝撃だったんだよということをめちゃくちゃ言いたくて、こんな記事を書いてしまいました。

享介はレモンライブにて一度演出を担当しましたが、今回きりなのか、後継続するかは分かりません。アイドルと二足の草鞋としてやるにはかなり大変ですしね。
しかし一度演出側を経験したことで今後アイドルをやるにあたっても確実に視点は変わりますし、何より自らの強みをモノにした享介は確実にアイドルとしても成長すると思っています。
アイドルマスターSideMというコンテンツで動いている以上は享介がアイドルを辞めることはないですが、作中がサザエさん時空の外に出たとき……数年後にはもしかして……。いろいろ考えちゃうな。
私自身も完全に享介を見る目が変わりました。
過去のセリフとかも、いま見返すとああ~って感じ。

というわけで小さな世界が1つ変わったというおはなしでした。


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