【ウテナ】樹璃と枝織と「彼」と瑠果

届かない想い、引き裂かれてく絆。
なにもなかったように、雲は流れていくさ。
灰色の水曜日よ。

さあ想い出して、輝いていた頃を。
夢に生きてた頃を、愛し合ってた頃を。

ARB/トリプルH「灰色の水曜日」

 なんだよなーーーーー樹璃周り…とつくづく感じてじんわりなんかこう、うん。そんなきもちになったので。

樹璃と枝織の間に起こったこと

を、時系列で並べると概ね以下になるかなと思われる。
実際に起ったと考えられる出来事を太字で、
その時の樹璃と枝織の思考・感情を通常の文字で
まとめてみたっていうか想像してみたっていうか。

樹璃・枝織・「彼」の3人でバランスがとれていた関係
互いに対等で信頼しあっており、関係に偏りがない
(もしかしたら樹璃と枝織の距離が近くて「彼」は少し離れ気味?程度?)
 ↓
「彼」が樹璃に思いを寄せた(と少なくとも枝織は認識した)
→枝織「樹璃は美人で才能があって優しいから当然」
→3人で楽しくやってきていたのに自分だけ外されるのは嫌だ
→自分だけ外されないためには「彼」の方に樹璃が振り向く前に自分がアタックして「ただの(同じくらい大事な)友だち」から「特別な一人」になるしかない
←「優しい樹璃」なら目くじらを立てて来ることはないだろうし、もし対抗してくるなら「美人で才能があって優しい樹璃」の化けの皮を剥がせる
 ↓
枝織が「彼」にアタックして恋人同士になる
→樹璃「あれ? もしかして私コレ追い出される?」
→今まで通り3人で仲良くしていたい
→自分は敵意を持っていない(今まで通りの関係を続けたいだけである)ことを枝織にわかってほしい
→「彼」に接近すると枝織が不快になって事態が悪化しそう
→枝織を安心させたい、好意があることを示したい
※この時「同性」の枝織に接近して「異性」である「彼」から離れることにより、樹璃は自分の肉体(女性性)への肯定感が薄くなって中性化した?
←「恋愛(異性愛)」によって壊された「心の平穏=友情」を取り戻すための中性化なので、自分と同じく「中性」を選んだように見えたウテナの動機が「異性(への恋慕)」であると知って裏切られた気持ちになった?
 ↓
樹璃、二人の交際に対して特に何も言わず、枝織には変わりなく親しく接そうとする。何ならかなり気を遣うし、譲れるところは全部譲る。
←枝織「そこまでして私を引き留めて、自分の引き立て役にしたいのか」
あくまで余裕の態度(に見える)の樹璃に対していよいよコンプレックスを刺激され、樹璃への敵対心を強め「傷つけ」という呪いになっていく

結論?:
 樹璃は「枝織のことを(恋愛として)好き」というわけではなくて、「枝織の気持ちを疑ったりつれない態度に寂しさを感じたりせず、不安もなく屈託もなく楽しく過ごせていたあの頃に戻りたい」のであって、枝織に対する好意というか執着というかは「あの頃」に戻る手段にすぎないのかもしれない。
 とすると樹璃の核にあるのは幹同様「かがやかしい過去への執着(現在の否定かつ未来への無関心)」である。

瑠果の献身

 瑠果は恐らく、もう治療ができない(完治やこれ以上の状態改善が見込める治療法が現代医学では存在せず、苦痛緩和などの対症療法程度しかもう効果を発揮しない)状態になったために「安静にして、残された時間を少しでも長く有意義にお過ごしなさい」と言われて退院となったケースと思われる。瑠果に残された時間は少なく、できることには限りがある。その時彼が一番に願ったのは恐らく「片思いの女の子が、少しでも幸せな未来に辿り着けますように」ということだったのではないだろうか。
 傍らにそっと寄り添って、時間をかけて彼女を「過去(の幸せ)」から解放し、未来の新しい「幸せ」の可能性に目を向けられるようになるのを待っている時間は瑠果にはない。樹璃が「過去」から解放される前に自分が途中退場してしまうのでは意味がない。それならばたとえ命がけのギャンブルになるとしても、枝織のことも樹璃のことも死ぬほど傷つけることになるとしても、それで瑠果の望んだ通りの「樹璃の解放」が果たされるかわからないとしても、今自分にできる全てを樹璃に捧げたい。
 たぶん、それはエゴイズムなんだけれど、残り少ない自分の命を好きに使うとするならば、それ以外の、それよりもずっと良いと思えるような使い方は、瑠果には他になかったということなのだろう。

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