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あたらしい音楽と出会う場所

あたらしい音楽とかバンドとか、どうやって出会ってきただろう。同じ趣味の友達なんてひとりもいなかった10代の頃の情報源はラジオだった。音楽の趣味の近い知人友人ができた20代からは、人から教えてもらうことがぐんと増えた。

T.V.NOT JANUARYはそんなバンドのうちのひとつで、初めて聴いた時は衝撃だった。メンバー全員横並びで、全員アコースティックギターを弾いて、全員歌う。歌うというか、合唱というか。そんなバンド見たことない。日々うじうじしながら生きて、あっけなく死んで、日常の延長線にある生と死を、トボけた顔してらーららーと歌う。

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そんなバンドに、「音楽と演劇の年賀状展」で演奏してもらったのが2012年のこと。自分が企画した展覧会の、初めての巡回展。右も左も分からないアウェイの場で見た彼らの全力で歌う姿に、一寸先さえもどうなるかわからない自分でも、知らない世界に一歩踏み出せばこんな歌みたいに頼りなくもあたたかい、昔からの友達みたいな場所や人に出会えるんだなあと思ったのをおぼえている。僕の20代後半はこうして始まった。

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年賀状展を始めてよかったことのひとつに、いろんな音楽を知られるというのがある。全国各地の音楽好きな人が、こんな歌があるよと教えてくれる。yojikとwanda(よーじくとわんだ、と読む)もそのひとつ。埼玉に巡回している時に泊まらせてもらった友達に連れられて入った小さな居酒屋で、yojikとwandaが演奏していた。

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わんだの作るめちゃくちゃにポップなメロディとぽろぽろ爪弾くギター(めっちゃうまい)に、透きとおるyojikさんの歌声がのる。それだけでいいんだけど、歌詞が変だ。社会の片隅でひとりぼっち、自分を取り巻く世界との相入れなさを憂いたかと思いきや、妄想ガールフレンドとチュッチュする歌がある。意味があるのかないのかわかんない、でも不思議と胸はおどり切なくなる。

「フィロカリア」「フィシカトゥトゥ」という歌が好きだ。何が好きって、どこにも意味がない。意味はわからないけど楽しいね、君の生きることにイエスと言おう、と無責任なほどに全肯定する。胸が高鳴り、身体が勝手に踊りだす。意味のあることばかり求められる今、その意味のなさに安心し、勇気が出る思いだ。

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T.V.NOT JANUARYは2012年に。yojikとwandaは2016年に、年賀状展の埼玉会場であるsenkiyaで演奏してもらった。あれから8年、4年経って、今度は大阪で演奏してもらえる日が来るなんてとても嬉しい。あー楽しみだ。今週土曜が本番なのに予約状況がさっぱりでドキドキなんだ(ここ本音)。まいにち懸命に生活してるみんなに見てもらえたら嬉しいし、あたらしい音楽との出会いの場になればもっと嬉しい。

音楽と演劇の年賀状展
主催者・山口良太が「この人の年賀状を見てみたい!」と声をかけた音楽家や役者さん、音楽や演劇の現場にたずさわる方々から届いた年賀状を展示する展覧会。2011年から毎年お正月に開催し、今回で10回目の開催になります。
http://nengajoten.net/
音楽と演劇の年賀状展10|大阪会場
『オープニング新年会』
【出演】T.V.NOT JANUARY/yojikとwanda
【日時】2020年1月11日(土)18:00オープン 18:30スタート
【会場】大阪・北浜 FOLK old book store
〒541-0046 大阪市中央区平野町1-2-1 1F+B1F
【料金】予約3000円/当日3500円(お年玉くじ付き)
※別途1ドリンク500円 ※15歳以下無料
【ご予約】予約フォームに必要事項を入力の上、送信してください。
【主催・お問い合わせ】nengajoten@gmail.com(音楽と演劇の年賀状展)

写真:金田幸三

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