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一枚の演劇

「演劇のチラシのデザインって特殊やから自分ではようできへんわ〜」とデザイナーの友人に言われたことがあって、それは例えば、まだ完成していない商品(公演)のビジュアルをつくる難しさだそうで、なるほど、確かにそうかもしれない(あとやたらタイトルのタイポグラフィにこだわるデザインが多いのも)。

乱暴なたとえだけど、スーパーのチラシは商品写真を載せれば伝わるし、映画のチラシは映画の中の1シーンを抜き出せばこんな映画ですよーと伝えることができる(あくまで乱暴なたとえです)。

演劇のチラシはそうはいかなくて、さあチラシをつくるぞーとなった時点で本番は数ヶ月先である。役者が衣装をビシッと着て本番さながらセットが組まれた舞台をバシャッと撮ってチラシに載せていっちょあがり!とはなかなかいかないわけで(できる場合もあるけど)。でもでも!お客さんに来てもらうには宣伝しないと!こまった!と、デザイナーはあたまをひねるわけです。

ありもしないもののビジュアルをつくる。それはとても想像力の必要な作業で、そんな作業を経たチラシを見たお客さんは、ビジュアルやタイトル、キャッチコピーなど、チラシの情報から「こんな舞台かな?」と想像をめぐらせて、劇場に足を運ぶ。作り手と受け手の想像力があって初めて成立する広告だから、演劇のチラシはちょっと特殊と言えるのだろう。そんな想像力でできた公演本番までのゆたかな時間も、演劇的と言えるのかもしれない(と、いま書きながら思いついた!)

「演劇はチラシを受け取ったところから始まっている」と、ある劇作家の方に言われたことがある。お客さんが受け取った一枚の演劇が、想像力を刺激する名作であるように、これからもがんばらねば、と背筋がしゃんとする13日間だった。ありがとうございました。またやります!(たぶん!)

2014年5月11日
エーヨンオアビーゴ 演劇チラシ展 終わりによせて(抜粋)

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