アダムとイブと雑菌運搬装置
僕達は認知の生物だ。
凝視すれば幽霊は枯れ尾花だし、水から出せば花粉は動かないし、そこらにある溝は上から見れば地上絵だ。
僕達は、自らの手や吐く息に菌やらウイルスやらが含まれていることを顕微鏡で見せられ、思ったより自分や世界が綺麗ではないことに気づいた。
ここ数年、家に帰った時だけではなく店から店、駅から会社の間でも消毒に気を配るようになった。
綺麗にする方法を知り、この世が汚いことを知ってしまった。
でも、悪いことばかりではない。
家族や友達が健康でいることの尊さや、リアルでのコミュニケーションの貴重さを認識することができた。
ひしゃげたパンをおまけしてくれたおばさんの顔を、今日ははっきり思い出せる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？