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【アークナイツ世界観考察】アビサルハンターと「海の怪物」、その行き着く先とは?

【注意】
・この考察はあくまで非公式でネタバレや私見を多く含んでいます。
・この記事の内容は絶対的なものではなく、あくまで考察の一つのため、そんな考えもあるのかと参考程度に読んでいただけると幸いです。


多くの謎に包まれ、ストーリーが進む度に少しずつ謎が明らかにされ、同時にまた新しい謎が増えていくアビサルのストーリー。そこには、天災や鉱石病というテラの大地が内に抱える脅威とはまた違う、海という外界からの脅威が描写されていた。

人類が古くから築き上げた「文明」と種としてあらゆる状況に適応・進化する「海」、いずれどちらかが淘汰される日が来るのかもしれない。

「海」に生きる怪物は何を求めるのか?
何のために進化をしているのか?

本記事ではそこに少しだけ迫っていこうと思う。


海の怪物の生態

さて、海の怪物の目指す先。それについての考察を語る前に海の怪物とはどんな生き物なのかについて少し整理していこう。

あの生物達の各個体の変異は続いており、巧みに致死と劣化を避け続けているのです。驚きますか?中立説などヤツらにとってはただの冗談のようなものです。遺伝は個体の発展の為の礎の一部となり、親世代と子世代の元々持っていた伝達の意味が粉々に砕かれてしまいました……たとえ、栄養不足の環境においてはそのプロセスに長い時間がかかるのだとしても。

濁心スカジのプロファイル第三資料

「狂人号」を読まれた方はご存知だろうが、アルフォンソ船長の狩りから生き残った最弱のシーボーン、「ディヴィニティエンド」はアビサルハンターやアルフォンソ船長、審問官アイリーニという外敵がいる危険な状況下に適応し、アビサルハンターすら圧倒する膂力や機動力、そしてアビサルハンターですら容易く貫けないほどの硬度の外皮、更には捕食した生物の残骸に応じた形質を獲得している。

「ディヴィニティエンド」、大群の意思

これらはまさしくその環境への適応進化と言えるだろう。
この現象はこのシーボーンだけでなく、海の怪物という種全体の特徴として見られる。
その進化のスピードはあまりにも速く、栄華を誇るイベリアの黄金時代を見た聖徒カルメンにすら「奴らの進化は、どんな科学者の頭脳を以てしても追いつけないほどに速い」と言わしめるほどとなっている。


海の怪物の進化

アマイア
「人類の目から見れば恐魚は禍々しい異形だが、別の視点から見た場合にはどうだろうか。進化論の観点であれば、この完璧な生物をどう見るのだろう。」

SN-1 戦闘後

ここで、皆さんが一度は聞いたことがあるであろう「進化論」という視点からこの海の怪物という種族を見ていこう。

進化論とは、現代では生物の遺伝的形質が世代を経る中で変化していく現象とされており、チャールズ・ダーウィンの自然選択説、引用文1で言及されている中立進化説、など多くの学説がある。
しかし、海の怪物はその中でも「定向進化説」を基本とした進化のスタイルをとっているのではないかと考えられる。(参照:「ディヴィニティエンド」、大群の意思、掠海のフローター 概要欄)

定向進化説とは、生物に、一定方向に進化を続ける傾向があることを認め、それを進化の原因とみなす説のことである。系統発生説とも呼ばれる。

Wikipedia 定向進化説 URL:定向進化説 - Wikipedia 参照日:2023/5/4
掠海のフローター

この学説についてだが、確かに大局的に見た場合、オオツノジカの角が実用的と言えないほどに巨大化していったように、生物は特定の方向に進化していく傾向がみられる場合がある。
しかし、実際には多様化する場合もあり、一概に定向的に進化しているとは言えず、あくまで表面的に見たものでしかないもので、原因やメカニズムを説明したものでもない。


中立進化説とは?

引用文1において「中立説などヤツらにとってはただの冗談」とある。
まず、言及されている中立説とは何かをまとめよう。

中立説とは、分子レベルでの遺伝子の変化は大部分が自然淘汰に対して有利でも不利でもなく中立的、突然変異と遺伝的浮動が進化の主因であるとする説。

Wikipedia 中立進化説 URL:中立進化説 - Wikipedia 参照日:2023/5/8

私もこの分野に疎く、曖昧のため、正確な表現であるとは保証できないが、これは子世代や孫世代に受け継がれる遺伝子変化は、自然選択や定向進化というような表現型(主に目に見える形態)での進化とは、無関係で基本的に優性、劣性などがないランダムな変化であり、偶発的に起きる突然変異や、生物の生存に不利にも有利にも働かない遺伝的浮動による変化が主要因とされていると考える学説である。

この記事の中では、雑に遺伝の際に起こる分子レベルの変化は基本的にはランダムなものという考えを持ってもらえれば良い。

この進化には、種の繁殖の際に生存に有利になるか不利になるかはランダムであるが、種に多様性を持たせ、種を存続しやすくするなどといったメリットなどがある。

では、何故「中立説などヤツらにとってはただの冗談」なのだろうか?


海の怪物の身体的機能

我々の科学執政官は胚性細胞だけには完全な追跡を完成させていますが、アビサルハンターは恐魚とシーボーンにより近しいのですよ。我々の体細胞のほとんどに多能性が備わっています。

濁心スカジのプロファイル第三資料

海の怪物はほとんどの体細胞が多機能性(体の全ての組織の細胞に分化する能力)を有している。

これは、ざっくばらんに言ってしまえば、ほぼ全身が万能細胞で構成されているようなものだ。
海の怪物はその機能もあってか変異の速度も速く、通常の生物が数世代、あるいは数十世代かけて行う変異をたった一世代で完結させる。もちろん、これには環境への適応も含まれる。

聖徒カルメン
「これまでに裁判所が発見し、処理や捕獲を行ってきた恐魚は、ほとんど毎月のように変化を続けている。」
「一番変容が早かったケースは、三号海岸線で発生した。四、五日も経たないうちに、奴らの姿が全く違う形へ変貌したのだ。」

SN-3 戦闘後

また、上述している引用文で、海の怪物が閉じ込められた環境で四、五日も経たないうちに肉体を大きく変異させている状況が読み取れるように、周囲の環境を把握する能力と適応しようと判断する速度も高く、上述した身体機能の特徴もあり、異常なほどの環境適応能力を持ち合わせている。

さらに、後述する内容でも述べるが、海の怪物は溟痕などのように種の繁殖のために環境構築に適した変異をする個体も存在する。つまり、海の怪物は種の繁殖に有利になるような変異を意識的に選択できるのではないだろうか?

パスファインダー

事実、シーボーンにはパスファインダーという種類が存在し、大群のために進化の方向性を模索している。
その際、個々のパスファインダーが誤った道(種の繁殖に不利な進化の方向性)に進化したとしても、海の怪物という種全体としてはその誤った進化の方向性を避けるように進化の道筋を立てることができ、正しい道を確保できるという仕組みとなっている。
これは、パスファインダーの見つけ出した種の繁殖にとって不利になる進化を種全体で意識的に避けていると捉えることができる。

このように適応能力が高く、種の繁殖に有利になるように選択して変異できる生物は中立進化説の論理の埒外にいる存在であり、中立説などによって得られると考えられる遺伝的多様性のメリットも薄いのではないだろうか?


海の怪物にとっての捕食

次に、狂人号で幾度となく描写され、海の怪物にとって重要なことが示唆されている捕食だが、何故重要なのかを見ていこう。

殻海のランナー

まず、この捕食という行為は海の怪物にとって遺伝を意味している。それも、捕食した生物の遺伝情報にほとんど欠落がないまま遺伝することができる

この遺伝の手段と、上述した海の怪物の身体的機能より、海の怪物は捕食した生物の獲得していた形質により進化の方向が決定され、捕食した生物の形質を獲得するように一定方向の進化が行われると考えられる。
実際に、「ディヴィニティエンド、大群の意思」や「殻海のランナー」は、その概要欄より捕食した生物の有している形質を獲得するように進化していることが読み取れる。

つまり海の怪物は、種として、環境に適応し進化してある形質を獲得した海の怪物あるいは別の生物を捕食することで、その形質をそのまま遺伝、獲得し、進化させることが可能ということが推測できる。

これらの特徴は定向進化の特徴に合致しているように感じられる。

このように、そもそもの遺伝の手段が通常の生物と異なっており、捕食元の遺伝情報をそのまま獲得し、それを基に遺伝子変化を引き起こすため、中立説のような従来の生物に当てはまる遺伝の際の遺伝子変化が起きにくいと考えられる。


SN-7 戦闘後

また、海の怪物にとって捕食は遺伝、進化のため以外にも種の存続に大きな意味を持つ。
しかし、この場合は「捕食される側」としての意味ではあるが。

深海教会に所属する人物の行動、狂人号の船員、ディヴィニティエンドからの発言などから分かるが、おそらく海の怪物を捕食、体内に埋め込む、などといった手段で体内に摂取した生物も海の怪物になる。いわゆる同化していくことが分かる。


海の怪物による環境構築

SN-ST-9

「溟痕」やディヴィニティエンドの発言から、おそらく海の怪物はその種族のみで循環する環境を構築できる。
たとえ、それが自らの生存領域から外れた、いわゆる栄養不足の環境であったとしても、自らを退化させることによって自らの栄養価値を保存し、その地域に適応している生物へ(捕食されることで)同化し、学習させ
次の同胞がより生存しやすくするために栄養不足の環境の改善を行う。(参照:濁心スカジのプロファイル第三資料)

このように海の怪物は種の繁殖に有利な変異を意識的に個々が自身で選択し、種の繁殖のための環境構築を行うことができると考えられる。

これにより、時間さえあれば海の怪物はあらゆる環境を自分の生存領域に変えることができるだろう。

SN-3 戦闘後

どれほど栄養の無い環境であっても自身の生存領域へと変えることができ、そのためには個の活動停止や退化も厭わない。種のために必要であれば、自らを食料として同胞に明け渡す。さらに、捕食すればその生物の形質を獲得でき、その進化の速度は優れた技術者の想定すらはるかに上回る。

これほど「種の存続」に優れており、そのために個を投げ捨てることのできる生物はこのテラの大地にも存在しないのかもしれない。


海の怪物の繁殖手段

聖徒カルメン
「奴らは溟痕から生まれ、そして溟痕によって勢力を広げているようだ。」

SN-ST-4

繁殖手段についてだが、「狂人号」では「溟痕」という海の怪物の一形態によって巣を形成し、そこで命を育むと書かれているのみで、繁殖手段については描写されていない。(参照:SN-4)

よって、著者の妄想が多分に含まれる考察となるが、おそらく単為生殖、あるいは分裂による増殖だと考えられる。
ほぼ全身の体細胞がいわゆる万能細胞である海の怪物にとって、受精卵は自らの体から作り出せるものの一つであり、種を存続させるための雌雄という個体差は必要ないものだと思われる。
さらに、単為生殖、あるいは分裂による増殖のデメリットである遺伝的多様性が失われるという点も、上述している身体的機能ゆえに、あらゆる環境に適応しやすい海の怪物にとってはほとんど関係ない。


シーボーンとは?

私たちが知る限り生理的構造が最も高等な存在は、「シーボーン」と呼ばれます。そしてシーボーンはあの生物の個体を守るのです。

濁心スカジのプロファイル第三資料

海の怪物の進化についてみていくと、高度な生理構造を有するシーボーンとは何なのか。その一端が見える。

SN-ST-11

また、海の怪物が高度な生理的構造を獲得しようとする理由についてだが、その一つに同族と意思を伝達する手段を確保するという目的があるということも、このセリフから読み取れる。

そこからシーボーンとは海の怪物の中でもどういう個体なのか?という可能性を並べていこう。

・同胞などを幾度も捕食することで形質と栄養を蓄積した個体。

・もともと高度な生理構造を有しているシーボーンから分裂、あるいは単為生殖によって増殖した個体。

・人間など高度な知能を有する生物を摂食、あるいは同化することによって生理構造の形質を獲得、あるいは形成した個体。

これらの可能性のいずれか、あるいは全部だろう。
そして、シーボーンの個体数が少ない理由だが、おそらく高度な生理構造を獲得するまで変異すること、もしくは、その獲得した生理構造を維持するのには必要な栄養がかなり多いのではないだろうか?

私の推測ではあるが、作中の海の怪物の中でもシーボーンのみがより遠方の同族への思考の伝達をするために言語を獲得していることや、より種として繁栄できる環境を構築するための判断を下していることから、高度な生理構造というのはおそらく人間のような高度な思考力を備えた脳の事を指していると考えられる。


目指す先

目指す先

現状の海の怪物全体としての目的は「種の生存」となっている。推測ではあるが、これは最終的な目的ではないだろう。

では、最終的な目標とは何か?

ファーストボーン
「『Ishar-mla』、私はお前に会いに来たのだ。」

SV-ST-1

アビサルストーリー内でスカジは「Ishar-mla」とも呼ばれている。この呼び名は主にシーボーンから呼ばれているため、おそらくこれはスカジの本名ではなくスカジの中にある海の怪物の事を指していると考えられる。

この「Ishar-mla」という存在は、スカジの昇進資料やグレイディーアの資料から読み取れる全ての海の怪物が「Ishar-mla」、つまりスカジの姿に転化していくことを示唆する描写や、他のシーボーンが「Ishar-mla」に優先して給餌をしていく描写などから、海の怪物の中で際立って重要な存在であることが読み取れる。

これは、スカジが海の怪物の起源たる海神「ファーストボーン」を受け継いだからだ。

SN-ST-12

では、スカジが殺したはずの「ファーストボーン」は何故スカジの体に宿ったのか?

SN-ST-8

ここまでの考察を読んでいただいた皆様は、もうすでに勘づいているだろう。

上述しているように、海の怪物を体内に取り込むんだ生物は同化され、海の怪物となる。そして、海の怪物は同胞を捕食することでその個体が持つ遺伝情報を遺伝することができる。
そして、海の怪物の血を持つスカジが(たとえ海の怪物の起源であるとしても)海の怪物である「Ishar-mla」体の一部を何らかの形で吸収したのであれば、もちろんスカジは「Ishar-mla」を遺伝、あるいは継承することとなる。

よって「Ishar-mla」を継承したスカジの生存と、種の存続を至上命題にしていると考えられる。

しかし、これは唯一の目標であり、終点ではない。
そのために海の怪物は遺伝を繰り返し、様々な生物の形質を取り込み、進化を続けている。

では、その存続の目指す先とは?

SN-10 戦闘後

それは、生命の究極の答えにたどり着くことである。


答えに辿り着いた者達

さて、生命の究極の答えは何か、と問われると非常に難しいものがある。その上、その答えは一つではない。つまり答えのない謎である。
しかし、その答えに辿り着いたシーボーンが新たな海の怪物の起源と呼ばれるものになるのであれば、私たちはミヅキのローグライクにて、その答えにたどり着いたと思われるシーボーンたちを知っている。

腐化の心、蔓延の枝条、不融の冰山

ミヅキのローグライクにおいて争いあった3体のシーボーンであるスカジミヅキ、不融の冰山に関しては確証が持てないが、筆者は最後の騎士だと推測している。

答えが一つでないのであれば、もちろん複数の答えが生まれる。では、どのようにして決めるのか?
現在の海の怪物の唯一の目的は「生存」。となれば、最後まで生き残った個体の答えが最も優れたものと判断されるだろう。

前提としての「生存」をできなかった個体の答えは、「答え」足りえない。
もし誰も残らなければ、「生存」という唯一の目的こそが「答え」となる。


筆者の妄想(イベントストーリー時系列まとめ)

ここからは筆者の妄想が多分に含まれるため、考察と言うには根拠が乏しいため、参考程度に聞き流してほしい。

では、このイベントストーリーの時系列をまとめていこう。


SN-10 戦闘後

古い世代であった海の怪物の起源、「Ishar-mla」にとって生命の究極の答え(以下では「答え」と表記する)は辿り着くことができないものであった。それが故に、「Ishar-mla」は答えに辿り着くまで種を存続させる必要があったため、「種の存続」を種の目的とした。
こうして「Ishar-mla」は辿り着かなければならいないため、「生存」し続け、辿り着くことのできない答えを「永遠の苦難」として抱え込むこととなってしまった。

海の怪物とエーギルとの戦争

海の怪物の特徴を見ていると、学習と進化の速度は速いが、その性質上外的な要因が無ければ、進化の速度も比較的緩やか(他の生物と比較すればそれでも早いだろうが)で、大きな行動を起こす生物ではないように見られる。ましてや、目的が「種の存続」なのであれば、循環する環境をつくることのできる海の怪物からすれば、積極的に他の種族を攻撃する必要性もない。
しかし、「種の存続」を脅かす外敵が存在するのであれば別であるが。

SN-10戦闘前

ウルピアヌスの言によると、海の怪物によるエーギルの襲撃は堕落したエーギルが糸を引いているとされている。
この堕落したエーギルがどのような存在であるかは分からないが、陸に海の怪物を引き込もうとしている深海教会と似た部分があり、ともすれば深海教会のルーツなのかもしれない。

合理的で完成された生物である海の怪物となりたかったのかもしれないし、完成された生物である海の怪物を取り込むことで人類を進化させたかったのかもしれない。なぜ、彼らが海の怪物を引き込んだのかは今は知る由もないが、彼らによってエーギルと海の怪物の戦争は始まった。

この戦闘の際に、エーギルに住むことができなくなった一部のエーギルは陸へと上がることとなり、エーギルの優れた技術が流入したイベリアは急激に技術が発展し、イベリアの黄金時代に突入する。

最後の戦闘

アビサルハンターは残る全戦力を率いて、海の怪物の巣へと襲撃、その激しい戦闘の中、スカジのみがシーボーンの上位個体「Ishar-mla」の場所へたどり着く。

軍事行動で、百人隊長がたった一人の平兵士を守ることはありません。その兵士がよほどの重要性を持つ場合以外には。
ですが、あの生物たちは違います。全ての個体が群れの中で平等なのです。いずれの個体も、他のすべての個体にとって「等しく重要」なのです。

濁心スカジのプロファイル第三資料

しかし、「Ishar-mla」にとって海の怪物の全ての個体は等しく重要であるため、「Ishar-mla」は同胞スカジの襲撃に抵抗することなく給餌を行い、そのまま沈むことになる。そして、「Ishar-mla」はスカジに継承された。
その後、スカジは陸に打ち上げられることとなる。


大いなる静謐

大きな災害がただいま発生した。
現時点その方角で判断すると、発生地点はイベリアにほかならない。全ての通信が途切れ、電流さえ私の持つ個人チャンネルから消えた。
雲が著しく変わった。海流?ただの海流や嵐がこのような結末を招くことなど有り得ない。
イベリアなのだ。
イベリア人にこのような災難を引き起こす力量はない。そしてエーギルは……エーギルの沈黙はただの傲慢に過ぎない。彼らの仕業でもないはずだ。
私の推測はこうだ。我々が前に目撃した生き物はエーギルの実験などではなかった。あれこそが海の現状だったのかもしれない。

ケルシーのプロファイル第二資料

「大いなる静謐」とはイベリアを襲った大災害であり、初めて陸で観測された海の怪物による大災害である。
現状、これが何をきっかけに起きたかは根拠のない推測でしか語ることができないが、今まで陸で海の怪物による被害を観測できなかったことから、この「大いなる静謐」で初めて海の怪物は陸への関心を向けたのではないかと考えられる。

個の変異がどのようにして群れ全体に影響するのでしょうか?……もしその問いに対する答えを我々が持っていたのならば、アビサルハンターは陸に現れることはなかったはずです。

濁心スカジのプロファイル第三資料

もし、海の怪物の内、陸に適応した個体が群れ全体に影響したのであれば、海の怪物が陸に関心を向けるのもおかしな話ではないのではないだろうか?
そして、海の怪物の同胞で陸に適応した肉体を持ち、陸へ上がった個体。なおかつ、海の怪物すべてに影響を与えかねない存在。それらの条件をまとめて考えると、この「大いなる静謐」が陸に被害を与えたのは、スカジが陸に上がってしまったからなのかもしれない。


イベント「潮汐の下」から「狂人号」まで

SN-10 戦闘前

海の怪物は望めば、望む個体の姿に至ることができる。つまり、言葉を持つ同胞がいることによってシーボーンは言葉を覚えることができる。
よって、シーボーンが言葉を覚えたのはおそらく「大いなる静謐」以降(これは潮汐の下に登場したシーボーンの名前が「ファーストトーカー」という事からも推測できる)。海の怪物は「Ishar-mla」の答えを望んだ。

イベント「潮汐の下」に登場したシーボーン「ファーストトーカー」は「Ishar-mla」に答えを聞くための存在である。

イベント「狂人号」にて登場したシーボーン「ディヴィニティエンド」、大群の意思 もまた、英名:The Endspeaker(終わりの話者)であり、「Ishar-mla」に答えを聞く存在である。

SN-10 戦闘後

しかし、終わりの話者という名前が示すように、「Ishar-mla」の答えが無くとも、誰かが答えに辿り着けばよいという大群の意思を示す者
つまり、「Ishar-mla」とのこれ以上対話を必要としないという、「Ishar-mla」が導き出す答えへの依存からの決別を示す存在でもある。

つまり、海の怪物達は答えを出さない「Ishar-mla」の手を離れ、自らの手で答えに辿り着くことを選んだ。

SN-3 戦闘後

アビサルハンターがその身を賭して勝ち取った時間は、海の怪物たちが海の怪物の起源である「Ishar-mla」の出す答えに頼ることなく、大群の意思によって答えを見つけ出すまでの時間。もしくは、「Ishar-mla」が海に回帰し、海の怪物たちへ答えを示すまでの時間である。
つまり、最後の話者「ディヴィニティエンド」が現れたということは、海の怪物相手に勝ち得た時間は残りわずかだという事だ


これからの展望

では、アビサルハンター達の勝ち得た時間には何の意味もなかったのであろうか?
きっと、そうではないだろう。

イベリアは自らの窮状を認め、海の怪物という脅威を再認識し、自らの傲慢を認めた。
そして、アビサルハンターは陸を知り、陸に住む人々の愚かさを認識しながらも、陸に住む海の危険性を認識する者たちと交流する意思を示した。

勝ち得た時間は間違いなく変化をもたらしたのだ。

ここまで読んでいただいているドクターの皆様方は、既に何度もミヅキのローグライクを攻略していることだろう。
その方々ならお気づきだろう。イベントストーリーはローグライクで起きている道筋とはまた別の道筋を歩んでいる。この先にローグライクで起きたような悲劇が訪れるかもしれない。

それでも、その先にきっと希望があることを信じて



参考文献

・Wikipedia 進化論 参照日:2023/5/4

・Wikipedia 定向進化説 参照日:2023/5/4

・Wikipedia 中立進化説 参照日:2023/5/8

・遺伝学電子博物館 分子進化の中立説:参照日2023/6/6

・著者:シキネ 「【狂人号考察】イベリアの勃興と凋落、海がもたらす脅威の行く末(アークナイツ)」 参照日:2023/5/4

・著者:maru 「【明日方舟】水月与深蓝之树 追忆映射:ミヅキ『童年的终结』翻訳」 参照日2023/6/14

・著者:宮田 隆「分子からみた生物進化」2014年 講談社出版


記事内で使用した「アークナイツ」の画像はYostar様及びHypergryph様の著作物です。
©2018 Yostar, Inc ©2017 Hypergryph Co, Inc

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