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FULLTONEについて言いたいことを少しだけ

 マイケル・フラーのエフェクトペダルブランド、フルトーン(FULLTONE)が廃業とのニュースが伝えられてから数か月経つ。
 フルトーンというブランドがどうなるのか、フラーが生み出した優秀なペダルを引き継ぐ者が居るのか、不明なことも多いようだが今回は元楽器屋店員の私なりにフルトーンについて書いてみたいと思う。
 今後のことが今なおはっきりしない以上あまりクドクドと述べるのも気がひけるので、今回はなるべく短くまとめたい。




 私がフルトーンの名を知ったのは2000年頃、専門学校の先輩が所有しているのを見かけたのがきっかけだった。
 当時のフルトーン製品といえば

後に3が登場したフルドライヴシリーズの2号機であり、クリッピングダイオードにMOSFETを採用したヴァージョンだった。
 現在46歳の私より若いギタリストの皆さんになじみが深いであろう

OCDが発売されたのは2005年頃であり、それまでのフルトーンといえば先のフルドライヴや


後に筐体を変更して生産が続けられたファズだった。





 あまり知られていないが、フルトーンは歪み系ペダルの他にも様々なエフェクトを生産していた。
 その中には

本式の真空管回路を内蔵したテープエコーまであった。
 とてつもなく高額だが、アンプの製造業者ではなくペダルビルダーが製造販売していたのだから、よくよく考えれば凄いことである。





 あまり指摘されないようだが、フルトーン製品は丈夫でトラブルが少ない。
 フルドライヴではコストのかかるオリジナルデザインの、薄くてペコペコのアルミではなく厚みと重みのある鉄を筐体を用い、粉体塗装だろうか、剝がれにくく発色の良い塗装を施していた。
 回路パーツにしても、トゥルーバイパス接続との相性の良さと高い耐久性から後に多くのペダルビルダーが採用するようになった

クリフ(CLIFF)のスイッチを採り入れていた。
 同じクリフの、変形による内部断線が起きにくい

このバッテリースナップもフルトーンは純正採用していた。





 エフェクトペダル、特に歪み系は流行りすたりが大きいが、数あるエフェクトブランドのなかでもフルトーンは生産台数こそ少なく高価ではあったものの、高品質な製品を安定して生産し続けてきたほうではないか。
 先の部材の質の良さや耐久性の高さもあり、私などはアメリカンプロダクトの最良質を体現していた、とさえ思うぐらいだ。


 フルトーン廃業が知れ渡るや、この日本でも市場の製品、特にOCDの買い占めが起きたことで流通量が一気に減り、中古市場が大きく変動したときく。

 私としては、しかし、そのような風潮に苦い顔をせずにいられない。


 この数年、多くのギタリストがオリジナリティの欠片もない、既発製品の露骨なクローンという正体が判明している安価なアジア工場製ペダルをやたらと称揚してきたではないか。
 それが、ブランド終了を聞くやいなや大慌てでフルトーン製品を買い求める。市場の急激な変動はこのような無節操なギタリストが一人や二人ではないことを証明している。





 フルトーン製品のオーナーの皆さんは、これからも大切に使い続けてほしい。今後の状況がどう変化しようと、マイケル・フラーの残した大切な遺産であることに変わりはないのだから。

 それと、現在フルトーン製品を必死に探し回っている最中の皆さんには、なるべく無理をしないよう、現実的な判断をお願いしたい。
 たしかにフルトーン製ペダルは素晴らしいが、かといって全てを捧げて手に入れるべき聖遺物ではない。
 少し視野を広げ、視点を変えれば他に選択肢はいくらでもあることを知っておいてほしい。




 最後に、マイケル・フラー、フルトーン製品およびそのオーナー、ファンの皆さまの名誉を毀損する意志は無いことを記しておく。

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