VRCでお人形をレンタルした話

最初に断っておくと、お人形をレンタルして何をしたかについては詳しくは書きません。
また、イベントが撮影禁止だったため、写真も一枚もありません。
記事について問題があれば即刻削除・修正しますので、何かあればTwitter(@mei_the_sleep)までリプやDMで連絡ください。

この記事はとあるイベントに参加した感想です。

イベントについて

告知から参加まで

今回のイベントを見て一番最初に思い出したのは、「Rhythm 0」というパフォーマンスについてでした。これについて詳しく調べたり、知っているわけではなかったのですが、それを軽く紹介している記事の印象が強かったため、一番最初に思い出したのです。

「返事をしない」「抵抗しない」「逆らわない」人形になったキャストに対して、イベント参加者は何をするのか。非常に興味がわきました。

そこで、ツイッター上でいくつかのやってみたいことを挙げながら、当日の日中は考えつく限りの非人道的な行為や、倫理的に問題になりかねない行為についてアイディアを出したり、妄想する時間を持ちました。

ただ、主催の方がサキュバス酒場の主催の方とはいえ、参加しているキャストさんが誰しも本当に「お人形」のように尊厳の失われた30分を過ごしたいわけでもないだろうという考えに至り、最終的には「参加するならキャストさんも楽しめるギリギリのところで止めよう」ということにしました。

イベント開始前

いつもVRChatをプレイする時間よりも1時間ほど早い開催だったため、家事と育児と準備をやっと終わらせた後にイベント5分前ほどにログインし、フレンドのいるワールドでリクイン合戦に望みました。21時ピッタリにリクインを送りましたが、返事は来ず。人気イベントだったので仕方ないとがっかりしていたところ、JOINしてきたフレンドから急遽30分の延長を教えてもらってホッとしました。それから、人形をレンタルしたら一緒に遊ぶためにInviteするよと事前に連絡しておいたフレンドがJOINしてきて、その場にいた人も合わせて3人で21時半に再度リクイン。すると次々とやったーと言う声とともに消えるフレンド。二人が消えたあと、少しドキドキしたあと私にもインバイトが飛んできたため、無事にイベントに参加することができました。

イベント開始待ち

インバイトされたのは「不思議な自販機があるらしい」のような名前のワールドで、入ると薄暗い路地裏でした。既にいた何人かが参加できる喜びの声を上げているところでした。すぐ目の前には大きな注意書きが浮かんでおり、それを丁重に読んで「同意する」ボタンを押すと先に進めるようになり、その先では「イベント開始まで並んでお待ち下さい」のような表示が柵のように配置されていました。私の前にはフレンド2人と知らない人、私は6番目ぐらいに並びました。

後ろからは、JOINできた人がぞくぞくと入ってきました。
声に特徴があり、ちょっとした有名人である、何処かでフレンドになったことがある知り合いが特にテンション高く喜んでいるのを聞いて微笑ましくなったり、一つ後ろの人が「まさかJOINできると思ってなかったから、どうしようか全然考えていなかった、どうしよう、譲れるなら友人に譲りたいぐらいだ、あーもうどうしよう」とずっと独り言を言いながら悩んでいるのも非常に面白い空気感でした。

一列に20人ほどが並んでいたため、全員で同じ話題を共有することはできなかったのですが、ことテンション高い知り合いが真ん中の方で色々話をしていたので割とその場はその人が基調で話が進んでいたと思います。

まず話題になったのが「ガチャ方式なのか、選べるのか」です。自動販売機なのだから当然選べるだろうと思っていましたし、事前にフレンドの中にいたキャストと話したときは「参加者が選べる」前提の話し方だったので、あまり気にしていなかったのですが、一方で「ガチャ方式だと思っていた」と確信に似た思い込みを覆された人が突然選ばなければいけないという現実に直面して焦り始めるという場面もありました。
また、ワールドにスタッフなどがおらず、ただ無機質な自動販売機だけがおいてあるのが、非常に雰囲気がいいと言う意見が参加者の中で上がりました。

次の話題は「アバターと中身は同じなのか」です。私もフレンドがキャストにいましたし、サキュバス酒場の常連には馴染みのある姿ばかりだったようで、中の人を知っている(「現実の姿」という言う意味ではなく、お人形ではない状態を知っている人の)お人形が出てくるのか、そうでないかというのはワクワクするポイントでした。「フレンドと姿は同じなのに、フレンドと違う人が操作している、喋らないプレイヤー」というのは考えてみれば不気味なものでしたが、こちらも無いだろうなぁという話にすぐ収束しました。

話が盛り上がっている最中、とあるプレイヤーが「待って、SOCIAL見れば誰がいるかわかるんじゃないか?!」といい始めました。こういうキャストがいるイベントでは「ネームプレートの表示をオフにする」ルールがあるお店もあり、自販機があるのにSOCIALで誰がいるのか見てしまうことについて、みな謎の罪悪感のようなものを感じているようでした。見ないほうがいいのではという声が上がる中「普通に見ちゃった」や「あ、やっぱり写真で見た人がいる」という発言がされ始めると、段々とみんな抵抗がなくなってきて、SOCIALを確認するようになりました。
事前に自分の推しが出ていることを告知ツイートの荒い画像から革新していた熱烈な参加者もいたようで、全員に聞こえるような悲痛な大声で「頼むー!!下から〇番目、左から○番目は取っておいてくれー!」と数回叫んでいたのが印象的でした。

誰を選ぶか、の次は何処へ行って何をするか、というのが話題に登りました。実はワールド内の注意書きからは「NSFW」に関する注意書きが消えていたのです。これはVRChat内にNSFWに関する記載をすることを避けたのか、事前の告知からルールを変えたのか、見解が分かれたのですが、「知ってますか、VRChatはそもそもNSFWとかエッチなことは禁止されてるんですよ」という誰もが分かっていつつも誰もがなにかの理由をつけて考えないようにしてきた大前提を高らかに叫んだ人がおり、それ以降NSFWに関する話はほとんどされなくなりました。(これは少なからずその後のイベント参加者の行動に影響を与えた気がします)
その場ではいくつかのアイディアが出ました。よくあるPetHouseでペットの真似事をさせようと言う話や、Publicに連れていくと写真撮影されてしまうからルールに引っかかるのではという話、何処につれていくかはポータルを出すからバレるね(これは盛り上がって良いよね、という文脈で)という話などが出ました。また、お人形同士で戦わせる遊びができるのでは、のような話もあがりました。(誰かが「ガッシュベルごっこ」と言っていたような言っていなかったような)

イベント開始

そんな話で盛り上がっている中、先頭の参加者の前にあった刑事事件で見るような「KEEP OUT」のような模様の柵が突如消え、参加者が一斉に沸き立ちました。
最初の参加者が早速自動販売機の前に立ちます。まだ「ガチャ方式」だと信じていた参加者がいたようで、しきりに選べるのかどうかを気にする発言を後ろの方から飛ばしていたように記憶しています。
最初の参加者は、自動販売機にUSE判定があり、どのお人形にするか選べることを確認するとそれを皆に伝え、「下から○番目、左から○番目」のボタンを押しました。そしてその瞬間に、多くの笑いと、一人分の悲痛な悲鳴がその場を包みました。

鳴き声が聞こえる中、自動販売機の横にあるテレポートエフェクトから、お人形(に扮したキャスト)が出てきました。そして、自分を呼び出した参加者に向かって無言で一礼をしました。

特に列の後ろの参加者には見えていなかった人も多かったのですが、実は自販機は路地の途中にあり、その先に続く路地の床には白い矢印が置くまで続き、路地とともに左に曲がっていました。出てきたキャストは、最初の参加者に手招きをしながら、路地の奥を進み、奥の角を曲がって消えました。
つまり、ポータルで何処へ行ったかは、他の参加者にはわからない、ということが最初の参加者の時点でやっと分かった参加者がほとんどでした。

一通りの流れがわかったところで、次々と参加者が自動販売機のボタンを押し、お人形をレンタルし始めました。

さて、何番目かの参加者が、とあるキャストのボタンを押すと、自販機からそのキャストではない別のキャストが現れていいました。「申し訳ありません、実は選ばれたキャストさんが落ちてしまいまして、別の方を選んでいただけますか」ということでした。そして、そのキャストさんは列の最後尾まで行くと「大変申し訳ございませんが、キャストが一人落ちてしまったため、ご参加いただくことができなくなってしまいました。」と、最後の参加者に告げていました。
私は横目で、後ろにいた「友人に譲りたいぐらいだ」と言っていた参加者を見ましたが、その人は既に、目の前で実際に起きた「お人形をレンタルするワクワク」に飲み込まれていたようで、最後尾の人に譲るような英雄的な行動には出ませんでした。
一度選んでしまった参加者は、Localの処理でもうボタンが押せなくなったようで、代わりの人を選ぶことができなくなり、仕方なく現れた別のキャストさんに代わりにボタンを押してもらって、それまでと同じようにお人形と一緒に路地裏に消えました。

いよいよレンタル開始

私はフレンドと、いつもと違う空気感を楽しもうと思っていたのですが、フレンドは皆自分の番の前に誰かにレンタルされてしまい、知らない人と路地裏に消えていってしまったので、寂しさと、ちょっとしたNTRラレ要素に興奮しつつ、突然訪れた「誰を選べばいいのか」という問題に悩み始めたところで自分の番が来ました。後ろに人が待っていると思うとなるべく早く自分の番を終わらせなければいけないと思ってしまう質なので、自分がこの前惚れた人と同じアバターで、この前自分が可愛いと思って買ったのと同じ服を身に着けた人を選ぶことにしました。

自動販売機から現れたのは、人形ながらとても愛嬌があり、表情豊かでよく動くキャストさんでした。人形というよりは、従順な無言勢の人という感じで、急に「世話をしてあげないといけない」という使命感に駆られ、自分からお人形さんに手招きをして、路地裏へと誘い、先導をしました。

路地の角を曲がると、私が選ぶのが早すぎたのか、前の人が散々ワールド選びで悩んだのか、Inviteのポータルがまだそこに出たままでした。割と普通のワールドに連れ込んだのだなぁと思いながら、私は素早く用意していたワールドへのポータルを出し、自分から先にポータルに飛び込みました。

ワールドに移動して改めてお人形さんを見ると、首には「レンタル中」と書かれたSFチックな首輪をしていました。写真に写り込んだときには、知らない人にはわからないレベルの存在感でしたが、目の前のお人形についていれば嫌でも気付く、少し異質な首輪でした。

レンタル中のことについては詳しくは書きません

冒頭でも説明したとおり、それからお人形さんとどんなことをしたかについては詳しくは書きません。方向性としては、自身が二児の母であり子育ての折によく人形遊びに付き合ったことを最初に説明してから、人形遊びとして授乳・入浴・寝かしつけをする、という感じでした。NSFWには抵触しない範囲で、キャストさんも愛されるお人形として世話されることを楽しみながらドキドキするような30分を過ごせるよう、甲斐甲斐しく話しかけたり世話をしたつもりでしたが、途中イベント参加者的な話しかけ方もしてしまったので、なかなか定めたロールプレイに徹するのは難しいものだなぁと思いました。お人形さんは終始笑顔で、必要な質問には首を振って答えてくれました。動きが人間らしかったため、人形というより、やはり無言勢に近いなと思いました。

イベント終了後の反省会

30分が経った辺りでこちらから声をかけ、手を振りながらワールド移動でお別れをしました。他の参加者がどんなことをしたのか、かなり気になったため、一度フレンドのフレプラをブラブラしたあと、自分よりも後ろにいたあの賑やかな知り合いフレンドの立てたフレプラを見つけてすかさずJOINしました。

そこには、数人の参加者がおり、今まさに話しを始めようとしていたところで、自分のあとからも続々と参加者がJOINしてきて、結局10人くらいは参加者が集まり、各々のレンタル内容について語りました。

こちらも詳しくはいいませんが、後続の友人と待ち合わせをして同じゲームワールドへ行ってゲームで遊んだり、自作のホームワールドのデバッグを手伝ってもらったり、ペットワールドに行って動物役をしてもらったり、普通にワールド巡りをしたり、というかなりノーマルな30分を過ごした人ばかりでした。正直NSFW行為まっしぐらだろうと思っていたフレンドも、一緒にワールド巡りをしただけだったようです(ただ、本人曰く「何でもいう事聞いてくれる無言勢と同じでつまらなかった」とのこと)

一人だけ、詳細を話したがらない人がいたのですが、問いただしたところ、相手のお人形さんもノリノリで、決して強要したわけではないという感じでした。

私は気付かなかったのですが、実は自動販売機にはキャストの名前や「🔞NG」「フルトラ」「三点」などの表示があったそうです。「🔞NG」をわざわざつけなかったキャストがいる、ということは、逆に期待されていたのかもしれないな、という方向で、次回があったらもう少しキャストさんがハプニングを楽しめるような30分を演出した方がいいかもしれないな、と思いました。

総括

ここからは、個人的な意見・感想です。
今回のイベントは、VRChat内のイベントとしては大変尖ったものだったと思います。
「SNS上では秘匿し、互いの同意があれば、ある程度過激なコミュニケーションは許される」という暗黙の了解のようなものに守らているおかげで、SNSへのおかしな情報の流出は防げつつ、濃厚なコミュニケーションも取れるようになっているこのプラットフォームにおいて、ある程度の強要が許可された関係性をキャストと持つことができるイベント、というのはある意味危険(この記事ですら、大丈夫だろうか、そのうち削除依頼くるかも、と思いながら書いている)で、「本当にお人形として好き勝手するというよりは、そういう設定のもとでロールプレイを楽しむイベント」という文脈をちゃんと汲み取れる参加者がうまく集まって、今回無事に(裏の事情は知らないけれども)開催されたのかな、と思いました。
キャストと参加者が言葉でのコミュニケーションを取れないというのは、イベントの趣旨を正しく理解して正しくロール・プレイすることに対してかなり障害になるのだということを感じたのと同時に、「わからない場合は相手を思いやり、過激なことはしない」というまだまだ民度の高いVRChaterの人の良さみたいなのが浮き彫りになったなぁと感じました。(一部の参加者との反省会の感想なので、ヤバい参加者がいたかもしれないということは忘れてはいけないと思いますが)

順番待ちのときの雰囲気が非常に刺激的で、実のところ「レンタル前」と「レンタル後」のほうが面白かった、というのも正直な感想です。それだけ、参加者の質は良かったし(参加者が言うのもなんですが)、一回しか開催されないかもしれないこの撮影も録画も禁止のイベントを精一杯自分たちで演出しつつ楽しまなければという使命感に満ち溢れている感じがしました。
一方で、VRChatでできること、していいことというのと、キャストが暗に期待していることに、もしかしたら差があって、そこを埋めるリスクが参加者に有り、結果参加者がそこを越えないケースが多かったのかな、と思うところはありました。もちろんイベント自体が過激になる必要はないし、この部分はむしろいい塩梅だったのかなぁとも思うところでした。健全なのはいいこと。

心配していたような「Rhythm 0」のような悲惨な体験をしたキャストさんがいたのかどうかは、一参加者からわからないことで、しても意味のない心配をしているのですが、今回のイベントで傷ついた人がおらず、また次回も開催されたらいいのになぁと、祈っています。

まとまりがないですが、なんとなく汲み取ってください‥‥

悲痛な叫び声を上げた人の顛末

ところで面白い話を耳にしました。
「左から○番目、下から○番目」の熱烈なファンだった参加者ですが、どうやらキャストが落ちてしまって参加できなくなった最後尾の参加者のために、参加を辞退されたそうです。
そんな心優しく慈悲深い人だったのに、一方選ぼうと思っていた推しがウキウキで路地の奥に消えた最初の参加者とあんなことやこんなことをする30分をもし過ごしていたのだとしたら、と思うと、NTR性癖が開花したばかりの私には、堪らない最高のリアリティだなぁと思いました。

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