深爪でかいた

綺麗な隙間しかない女の子になりたくて

マニキュアを塗ることにした

　海を作りたいな　そう思った

丸くてちいさくてガタガタの爪に

白と青を　ざらざらとざらざらと　潮汐みたいに重ねた

砂を引きずる音が流れる流れる

わたしにはそれが海に見えたし

人にはそれが剥がれかけの残骸に見えた

海は一夜で蒸発した　音は止まった

わたしには隙間がありすぎる　ガタガタのギザギザで

本当は爪に　マニキュアの残した膿がある

　　　　　　噛み損ないの肉が見えている

隙間風が、わたしを通って抜けてゆく

一息で語る言葉は聡明だと

水面の油は美しいと

たくさんの人を連れて行くものがある

風はどこかに閉じこめられている

どこを吹くべきだろうかと　健気にまわり続けている

ここには隙間風が吹いている

溜まった埃が宙を舞って、ちいさく笑った