ルヴァンカップ名古屋戦~渡初ゴール

2018/03/14 ルヴァンカップ予選リーグC組 サンフレッチェ広島vs名古屋グランパス エディオンスタジアム広島

 寿人がエディスタにやってきた。
 しかしそれは赤いユニフォームの敵として。
 それでもどこか嬉しさが込み上げてくる。絶対的エースとして初優勝の時は得点王の活躍。間違いなく優勝に導いてくれた選手の内の一人なのだった。敵として観るにはやはり違和感があるのだった。
 そんな寿人の築いたエースとしての地位に上り詰めようともがくのが渡だった。J2から移籍してきてJ1での得点がまだない。チーム内のライバルはみんなゴールを決めてるだけにどうしても結果を出したいだろう。前線からの果敢なプレスにはその気概が感じられた。
 ところがチームとして今一つパッとしない。名古屋の方が攻めている。寿人にはいきなりミドルシュートを打たれてしまった。そういう中で渡にはなかなかチャンスがないのだった。
 それでも活路を見出そうと守備陣へプレスを続けゴール前でかっさらう。ヒールパスで工藤へ。
シュート。
が、GKに弾かれてしまった。
 その後に渡は柴崎のスルーパスに抜け出しシュート。ゴールには入ったもののこれはオフサイド。惜しい。そして歯がゆい。あと少し、あと少しのとこでゴールにならないのだった。
 後半に入り攻守のバランスが冴えわたる。名古屋のパスに対して的確なポジショニングでカットする。前線で柴崎にボールが入る。大きくオーバーラップした馬渡に出る。そしてクロス。低く速い弾道のポール。渡のヘディングがガツンと入るとゴールに叩き込まれたのだった。
 決まった。渡のJ1公式戦初ゴール。そしてアシストしたのが馬渡と徳島から移籍したコンビがそのままホットラインを使ったというのがよかった。渡にとってもやっとスタートラインに立ったという気がしただろう。
 その得点からというもの一気にたたみかけるように攻め挙げる。もはや負ける気はしない。左サイドフェリペの突破からクロスを上げると見せかけ切り返し。グラウンダーのラストパスに反応したのはティーラシン。ゴール真正面に突き刺したのだった。
 追加点。もう何点取れるかわからない。ベンチでもそういう意図だったんだろう、ドリブラーの柏が準備をするのだった。
 ところがそんなお祭り気分の隙を突くかのようにDFの隙間にスルーパスを出されるとするするッと抜け出されてフリーでシュートを打たれるとゴールを決められてしまった。一体何が起こったのか。失点した瞬間しばらく呆然としてしまった。その喪失感はそのまま名古屋にペースを与えてしまって逆に攻められるようになってしまった。
 そこに危機感を覚えた城福監督は交代選手をDFの野上へ変更して渡と交代する。渡にしてみればアピールの機会を潰された。本来なら攻撃の選手にとってもアピールの場となるはずだった。が、もはや逆流した流れは止めることができず防戦一方となってしまった。
 もはや勝てばいい。どんな形だろうとこの試合は勝たないと。GK中林もバックパスはセーフティーにクリアしてラインに出している。もはやそこに華麗さや優雅さなどない。どんな形でもいいので失点を防ぎやり過ごせばいいのだった。
 そしてタイムアップ。勝った喜びより安堵感の方が大きかった。快勝ではない。選手の喜びが小さいことがそれを物語っていた。
それでも勝ったことの意味は大きかった。勝たなきゃ意味がない。その意味を昨シーズン痛い程思い知らされた。だけどそれをメンバー総入れ替えでやったことが大きかった。そして毎回違う選手がゴールを決める。そういえば調子のいい時のサンフレッチェって色んな選手がゴールを決めてた。最後は苦しみながらもそんなことを思い出させてくれたのだった。

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