浦和戦~アウェイ席での談笑

2016/09/25 浦和レッズvsサンフレッチェ広島 埼玉スタジアム2002

 太陽を見たのは何日ぶりだろう。

 そんな大げさな表現が当てはまるくらい雨が続きすっかり夏の暑さを奪い去っていった感がある。それでいて眩しい日差しは小春日和の様相を呈していた。

 そんな中での浦和戦。生観戦は久々のような気さえするのは自分がお盆に開催された湘南戦に行けなかったせいだというのを思い出した。だがいずれにしても今シーズン残り4試合ということを考えるとこれが関東で観戦できる今年最後のリーグ戦であるのだった。

 優勝の可能性となるともうかなり厳しくなってしまった現在、それでもわずかな望みを信じて応援するのか、諦観した視点で観戦するのか微妙な立ち位置ではあった。もしくはサンフレッチェから移籍した選手、柏木、槙野、森脇、李、石原、西川、そしてペトロビッチ監督へとライバル心を煽るか。だがそれも時間と共に風化した感は否めず、モチベーションとしては難しい試合であるのは間違いなかった。優勝に手が掛かってる浦和、チャンピオンシップ出場には他力本願な広島、両者には最初からそんな違いがあるのだった。

 北越谷駅発のシャトルバスに乗ると、当然のことながら赤い人ばかりだった。それでもあまりにも静かな車内に病院の待合室を思い浮かべてしまった。空いてる席に座ったぼくに、赤いおじさんは最初こそその紫のユニフォームに視線を向けながらもすぐに手元のスマホに戻った。気づくと車内のほとんどの人はスマホをいじってるかヘッドホンで音楽を聴いて過ごしているのだった。

 バスがエンジンを入れるとホッとした。その静粛を打ち破ってくれるのに適度な音だった。世の中、ある程度の雑音も必要なのだなとこの時初めて気づくのだった。

 スタジアムに着きスタンドまで出るとまだ席は埋まってないものの満席が予想されるので詰め合って座ってくださいというアナウンスがある。その為、仲間の分も席を確保しておくと一人、また一人と仲間は姿を現してきた。お互い挨拶を交わすとドクトルは言った。

「それにしても、もう優勝も望めないから楽な気分で観れるなあ」

 その通りであるだけに笑って応える。これが4年で3回優勝したという余裕であるのだろう。どんどんと席の空きがなくなっていくアウェイゴール裏でぼくらはそんな談笑をしながら試合を待つのだった。

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