川崎戦~川崎劇場への引き立て役

2016/10/22 川崎フロンターレvsサンフレッチェ広島 等々力陸上競技場

 浩司の引退発表があった。森崎ツインズとしてカズと共にチームの顔となってきた選手である。左足から繰り広げられるプレースキックは類希なる精度を持ち、ルヴァンカップでも素晴らしいFKを決めたのは記憶に新しい。だが、正直なところそろそろかもしれないという予感はあったのは事実だった。

 その理由は何といっても稼働率の低さである。怪我や体調不良での欠場が多く、今一つその才能を発揮できなかったという印象が強い。勿論、2012年の初優勝には浩司も多大なる貢献をしたのだがそれでもまだ物足りない。いつかはA代表で日本を背負う選手になる、そんな夢をこの選手には感じていたのだった。

 だからこそ、予感はあったとしても実際にそれが事実となると一抹の寂しさを感じる。一つの時代が終わったと共にだからこそ次なる世代交代を怠ってはいけないという現実を突きつけられたかのようだった。

 そしてそんな次への段階を狙ったかのように大きくメンバーは変更された。ワントップの皆川、シャドーのアンデルソン・ロペス、ディフェンスに野上といったとこは明らかに来期を見据えての布陣だったろう。もはやタイトルもなくなってしまった終盤において2014年も似たようなことをやった。そしてあの時はまるで上手くいかなかった。なので不安の方が大きかったのだが、意外にもこれがハマるのだった。

 まずは最終ラインの真ん中に入ったカズが抜群のポジショニングでパス回しを助ける。そして後ろからつないだ攻撃は相手陣内へと驚異を与える。あとは決めるだけ。それはもう時間の問題のように思われた。

 が、入らない。クロスを上げるもスルーパスを通すも決めることができない。そしてゴール前に来たこぼれ球を皆川が空振りした時、もう今日はゴールはないような気がしてしまったのだった。

 そんな攻めてもゴールを割れない状況が相手に勢いを与えたか、後半に入って川崎の攻撃ばかりが目立つようになった。シュートを打たれ、その都度GK林のファインセーブで凌ぐ。そこからまた攻撃に移るも、段々と精度が落ちてきて肝心なとこでパスが通らないのだった。

 それでもそんな中でゴール真正面でロペスにボールが出る。

「シュート!」

 思わずそう叫んでしまうもトラップしてしまった。そしてシュートを打つもその一瞬の遅れが枠から外れてしまうのだった。

 そしてその後も交代で入った清水がダイレクトでクロスを送るべき場面でワントラップを入れてしまったが為にブロックされてしまった。その時確信した。これはもうチームに流れがないと。ゴールが割れないことで慎重になりそれがまた余計にゴールから遠ざけてると。塩谷の直接FKがゴールに入るもオフサイドにされてしまったが、これはもうツキも運もない。何をやっても上手くいかない、そんな周期に入っているようだ。

 再び川崎の猛攻が続く。連動し、局面では身体を張りシュートを阻止する。何とか耐えていた。耐えていたが、フェイントに引っかかった丸谷はマークを外され打たれてしまった。ただそれはゴールからはほど遠い場所。通常は打ってもGKに処理されてしまう。それが他の選手の死角となったのだろうか、それとも無回転の変化があったのだろうか、GK林の頭上越えてズドンと入ってしまったのだった。

 やられた。一体どうやったらあんなシュートが打てるんだろう。いつもそうだ。対戦チームには必ずスーパーゴールが出る。それなのにサンフレッチェには訪れない。塩谷が直接FKを決めてもオフサイドにされてしまう。呪われてる。これはもう呪いが掛かってるとしか言いようがないのだった。

 そんな邪気は自ら払ってやりたい。そんな想いで終了間際、GK林までCKに出て行ったものの決めることができずボールは弾かれてしまう。そしてそのセカンドボールを処理したものの清水がボールを奪われると一気にカウンター。全員上がってたサンフレッチェのゴールは無人である。

 一目散に帰る。ボールを奪うより何よりゴールまで走る。かろうじてゴールにたどり着いた林。だがその時にはすでに中村憲剛がドリブルで目の前に。そしてGKとの1対1を巧みなフェイントで決められてしまうのだった。

 地響きのような歓声をあげる等々力競技場。それはもはや敗者にとっては鞭を打たれるような仕打ちだった。だがそれをあえて受けなければいけない。なぜならそれが現実なのだから。

 2ー0での敗戦。内容はよかった。それなのに勝てない。最後の最後が決まらない。100万回チャンスがあっても決まらないのではないだろうか。

 決めたい、点を取りたい、そして勝ちたい。それなのに負けてしまう現状、一体このトンネルはどうやったら這い出ることができるのだろう。残り試合、せめてその回答だけでも観ることはできるのだろうか。

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